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田口卯吉の夢

田口卯吉の夢

四六判 352ページ 上製
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-7664-2040-1 C3010
奥付の初版発行年月:2013年04月 / 発売日:2013年04月中旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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在庫あり

内容紹介

ネオ・リベラルな秩序構想

▼自己利益のみを追う人々が共存する、世界大に広がる秩序。これこそ、田口卯吉(1855-1905)の夢見たネオ・リベラルな商業共和国である。人々の情念が惹き起こした明治革命をかろうじてくぐり抜けた彼が、この世界像を手放さなかったのは、いったいなぜなのか。はたして、そのような秩序は可能なのだろうか――。妥協なき彼の思想を、『日本開化小史』をはじめとする彼自身のテクストと、同時代のコンテクストとを綿密にたどり、縒り合わせ、解き明かしてゆく。寄る辺なく、すべてがあわただしい時代の真摯な思考が、〈今〉を刺戟する。

▼装丁:服部一成

著者プロフィール

河野 有理(コウノ ユウリ)

1979年生まれ。2008年、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。日本政治思想史専攻。現在、首都大学東京都市教養学部法学系准教授。
『明六雑誌の政治思想――阪谷素と道理の挑戦』東京大学出版会、2011年。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 さまざまなる田口卯吉
 第一節
  はじめに
 第二節
  百科全書派?
  帝国主義者?
 第三節
  向上的ブルジョア?
  政治

第一章 「理」とロビンソン
 第一節
  南洋
  遠洋の一孤島
 第二節
  孤島の漂民
  『漂荒紀事』
 第三節
  『西国立志編』
  「理」

第二章 『日本開化小史』のhistoriography
 第一節
  『日本開化小史』をめぐって
 第二節
  文明史? 啓蒙史?
  ギゾーと幕臣
 第三節
  開化史≠文明史
  文明史の呪縛をこえて

第三章 『日本開化小史』の筆法
 第一節
  中根淑――地誌と「郡県」
 第二節
  『日本開化小史』の文法
  『日本開化小史』の戦略
 第三節
  鎌倉政府――「廉なる政府」と大隈財政
  徳川政府の崩壊過程――忠誠と反逆
  『時勢論』――「郡県」の陥穽
 第四節
  『支那開化小史』――歴史の終わりと立憲政体
  開化史の終焉

第四章 「郡県」の政治経済学
 第一節
  「封建」 「郡県」論の時代――「郡県」の〈今〉
  『日本開化小史』と『自由交易 日本経済論』
 第二節
  明治の新「封建」論――「人心」・「自主」・「気力」
  分権と「プロテクチーウシステム」
  「封建」の政治学――保護と分権 
 第三節
  「郡県」の政治経済学――「東京論」
  「宇宙経済」主義

第五章 「自愛」の秩序
 第一節
  「郡県政治」と「利己主義」
 第二節
  慈善と仁政
  「自愛」の秩序――独立独行と分業
 第三節
  「他愛」への衝動――利己と道義
  「進化」の夢――小泉八雲と加藤弘之
 第四節
  「社会」をめぐって

第六章 「地租増徴」の政治構想
 第一節
  鉄道国有と地租増徴――星亨の影
 第二節
  神田孝平「農商弁」――「商国」構想
  徳富蘇峰――新たな政治主体の構想と「田舎紳士」論
  谷干城、陸羯南――「農」の復権と「地方自治」
 第三節
  地租増徴論争――「封建」 「郡県」の残響

終章 田口卯吉の夢
 第一節
  商業共和国
 第二節
  田口卯吉の長い影
 第三節
  おわりに

付録 田口家蔵書目録
参考文献一覧
あとがき
索引


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