慶應義塾大学東アジア研究所叢書
日本帝国勢力圏の東アジア都市経済
価格:6,050円 (消費税:550円)
ISBN978-4-7664-2062-3 C3033
奥付の初版発行年月:2013年10月 / 発売日:2013年10月下旬
▼占領下における都市の発展と変容を描き出す
日本帝国の占領および日中戦争のなか、東アジアの諸都市はいかに発展を遂げたのか。日本資本の投下、工業化の目覚ましい発展、日本人と現地人の関係などを一次資料をもとに詳細に分析した意欲作。
(執筆順)
【編著者】
柳沢遊(やなぎさわ あそぶ)〔はしがき、序章、第5章〕
慶應義塾大学経済学部教授
木村健二(きむら けんじ)〔序章、第6章〕
下関市立大学経済学部教授
浅田進史(あさだ しんじ)〔序章、第9章〕
駒澤大学経済学部准教授
【執筆者】
金明洙(きむ みょんす)〔第1章、第3章訳〕
啓明大学校国際学大学日本学科助教授
1996年延世大学校経済学科卒業、2000年同大学校大学院経済学科碩士課程卒業、2010年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。2007年慶應義塾大学経済学部助教。2012年啓明大学校国際学大学日本学科専任講師を経て、同年9月より現職。専門は近代経済史。
業績:「日帝下朝鮮信託株式会社の設立と信託統制の完成」『韓国経済学報』第13巻1号(2006年、韓国語)、「植民地期における在朝日本人の企業経営――朝鮮勧農株式会社の経営変動と賀田家を中心に」『経営史学』第44巻3号(2009年、日本語)、「韓末日帝下日本人土木請負業者荒井初太郎の韓国進出と企業活動」『経営史学』第26巻3号(2011年、韓国語)、「1920年代漢城銀行の整理と朝鮮人CEO韓相龍の没落」『歴史問題研究』第27号(2012年、韓国語)、「大韓帝国期日本の金融掌握企図と日本第一銀行――1903年公立漢城銀行の成立と関連して」『日本文化研究』第47輯(2013年、韓国語)ほか。
平野隆(ひらの たかし)〔第2章〕
慶應義塾大学商学部教授
1986年慶應義塾大学商学部卒業、1988年同大学大学院商学研究科修士課程修了、1992年同大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。1992年慶應義塾大学商学部助手、1996年同助教授を経て、2005年より現職。専門は産業史、経営史。
業績:『百貨店の文化史』(共著、世界思想社、1999年)、「戦前期における日本百貨店の植民地進出――京城(現ソウル)の事例を中心に」『法学研究』77巻1号(2004年)、「日本におけるチェーンストアの初期的発展と限界」『三田商学研究』50巻6号(2008年)、『慶應義塾史事典』(共編、慶應義塾大学出版会、2008年)、『近代日本と福澤諭吉』(共著、慶應義塾大学出版会、2013年)ほか。
梁晶弼(やん じょんぴる)〔第3章〕
済州大学校人文大学史学科助教授
1995年延世大学校経済学科卒業、2001年同大学校大学院史学科碩士課程卒業、2012年同大学校大学院史学科博士課程卒業。文学博士。2005年国史編纂委員会編史研究士を経て、2013年より現職。専門は韓国近代経済史。
業績:「近現代開城商人の経済組織試論――3大商業制度と3大事業部門を中心に」『歴史問題研究』20号(2008年)、「1910-20年代開城商人の白蔘商品化と販売拡大活動」『醫史學』20巻1号(2011年)、「朝鮮前期開城商人の起源と発展」『學林』33号(2012年)ほか。
山本裕(やまもと ゆう)〔第4章〕
香川大学経済学部准教授
1997年慶應義塾大学経済学部卒業、1999年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、2005年同大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学。2003年慶應義塾大学経済学研究科・商学研究科連携21世紀COEプログラム研究員、2007年大連理工大学外国語学院外籍文教専家、2008年九州国際大学社会文化研究所客員研究員、2009年香川大学経済学部講師を経て、2010年より現職。専門は近現代日本経済史、日本植民地研究、満鉄史。
業績:「「満州」日系企業研究史」田中明編著『近代日中関係史再考』(日本経済評論社、2002年)、「「満州国」における鉱産物流通組織の再編過程――日満商事の設立経緯1932-1936年」『歴史と経済』第178号(2003年)、「「満州」の石炭業」原朗・山崎志郎編著『戦時日本の経済再編成』(日本経済評論社、2006年)、「満州」日本植民地研究会編『日本植民地研究の現状と課題』(アテネ社、2008年)、「事業化された調査――資源・鉱産物調査とオイルシェール事業」松村高夫・柳沢遊・江田憲治編著『満鉄の調査と研究――その「神話」と実像』(青木書店、2008年)ほか。
張暁紅(ちょう ぎょうこう)〔第7章〕
大連理工大学管理経済学部専任講師
2000年中国大連外国語学院日本語学部卒業、2004年九州大学大学院経済学府修士課程修了、2007年同大学大学院博士課程修了。経済学博士。2007年九州大学経済学研究院助教を経て2008年より現職。専門は中国近代経済史、中国経済論。
業績:「1920年代の奉天市における中国人綿織物業」『歴史と経済』194号(2007年)、「「満州国」第一期経済建設期の関税政策と綿業」『日本植民地研究』19号(2007年)、『次貨危機与中国能源』(金融危機と中国エネルギー)知識産権出版社(中国北京)(2010年、中国語)、「両大戦間期奉天における綿糸布商とその活動」『経済学研究』第77巻第4号(2010年)、『中国近代東北地区綿紡績業与市場形態研究』吉林大学出版会(中国長春)(2013年、中国語)ほか。
張楓(ちょう ふう)〔第8章〕
広島大学大学院社会科学研究科特任講師
2005年広島大学大学院社会科学研究科博士課程修了。経済学博士。2007年広島大学地域経済システム研究センター研究員、2009年日本学術振興会外国人特別研究員(東京大学経済学研究科)、2011年慶應義塾大学経済学部準訪問研究員を経て、2012年より現職。専門は日本経済史、アジア経済史。
業績:「太平洋戦争期における経済統制と木履工業の展開――産地の自発的生産活動を中心に」『社会経済史学』72巻1号(2006年)、『近代東アジア社会における外来と在来』(共著、清文堂、2011年)、『新聞産業の経営史的研究』(共著、東京大学社会科学研究所、2011年)、「高度成長期家具産業における熟練労働者の調達と養成――備後府中産地を事例に」『歴史と経済』214号(2011年)、「戦後高度成長期における家具産業の成長――備後府中高級婚礼家具産地に着目して」『経営史学』46巻4号)(2012年、2012年度経営史学会賞)ほか。
目次
はしがき
序章 本書の目的と東アジア都市史研究の動向 柳沢遊・木村健二・浅田進史
第1節 日本植民地都市史研究と東アジア都市史研究の交差
第2節 「日本帝国勢力圏」都市史の視角
第3節 比較軸と本書の構成
第Ⅰ部 戦間期の都市経済の諸相
第1章 永登浦工場地帯の形成と日系企業の集積 金明洙
はじめに
第1節 朝鮮工業化以前の永登浦工業と立地条件
1 1910年代の永登浦工業
2 1920年代の永登浦工業
3 永登浦の工場立地条件
第2節 1930年代における大工場の林立と永登浦工場地帯の形成
1 永登浦工場地帯形成の背景
2 永登浦工場地帯形成の開始
――朝鮮・昭和麒麟麦酒工場の建設
3 永登浦工場地帯形成の本格化
――日本3大紡績会社の工場設立
おわりに
――1930年代における朝鮮工業化と永登浦工場地帯の形成
第2章 植民地下の京城における「中小商業問題」の展開 平野隆
はじめに
第1節 戦間期の京城における小売業の概観
1 京城の人口と就業構造
2 商業者の団体
3 京城の商店街
4 近代的小売業態の登場
第2節 「中小商業問題」の推移
1 中小小売商と近代小売業態の摩擦の顕在化
――1926~29年
2 商業(商工)会議所による中小商店経営改善政策
――1930~32年
3 「中小商業問題」の小さなピーク――1932~34年
4 百貨店委員会の設置――1935~38年
おわりに
第3章 植民地期開城における韓国人商権とその特徴 梁晶弼(金明洙訳)
はじめに
第1節 朝鮮時代の開城と開城商人
第2節 開城商人の商権維持と日本商人の不振
第3節 開城の経済力とその特徴
おわりに
第4章 長春から新京へ――「満洲国国都」の膨張と工業化 山本裕
はじめに
第1節 新京前史――1920年代の長春
1 長春の地理的特性
2 1920年代の長春における工業化方策の推移
第2節 「国都」新京の形成と「工業化」――1932~36年
1 満洲国創出後における都市環境の変化
――新京を中心に
2 新京における「国都」建設ブームの実態
3 当該期新京における工業化の展開
第3節 「国都」形成ブームの終焉と「工業化」――1937~41年
1 新京における当該期工業化の展開
2 新京における各種産業の動向と「工業化」を阻む諸要因
おわりに
第Ⅱ部 日中戦争下の都市経済の変容
第5章 工業都市大連の形成過程 柳沢遊
はじめに
第1節 大連市企業の位置
第2節 日中戦争期までの大連工業の概観
1 満洲事変までの大連工業
2 「満洲国」建国期の大連商工業
第3節 日中戦争前期の関東州工業――1937~39年
第4節 工業用地造成と関東州工業への期待
第5節 1940年代前半の関東州工業の発展――1940~43年
おわりに――関東州工業の到達点とその矛盾
第6章 戦時下蔚山工業都市計画と油蔚航路 木村健二
はじめに
第1節 背景
1 戦時体制の進行と釜山港の拡充
2 朝鮮半島南岸の開発計画
3 蔚山側の背景
第2節 蔚山都市創設推進機関と推進主体
1 推進機関
2 推進者・池田佐忠の事業
第3節 蔚山工業都市計画と油蔚航路計画
1 池田の工業都市創設構想と具体的内容
2 油蔚航路と油谷湾開発計画
おわりに
第7章 「満洲国」期における奉天の工業化と中国資本
――機械器具工業の分析を中心として 張暁紅
はじめに
第1節 奉天の工業化と機械器具工業
1 奉天の発展
2 重化学工業化と機械器具工業の発展
3 奉天における機械器具工業の生産状況
第2節 中国資本の特徴およびその変容
1 中国資本の特徴
2 下請工場としての中国資本
3 統制の破綻と中国資本
おわりに
第8章 日本占領下の済南経済――日本資本と中国資本に着目して 張楓
はじめに
第1節 占領下済南における日本資本の進出と中国資本の実態
1 日本資本の進出
2 中国資本の実態
第2節 日本占領下済南における工業構造の再編
1 占領以前の工業構造
2 占領下の工業構造
第3節 占領下中国資本工場の自発的な生産活動
1 織布業
2 染織業
おわりに
第9章 日中戦争期の青島経済――日本占領の経済的衝撃 浅田進史
はじめに
第1節 日本の第二次青島占領
1 占領以前の青島経済
2 日本の青島再占領
3 都市の膨張
第2節 戦時下の青島港の物資流通の変容とその衝撃
1 青島港の物資流通の「拡大」
2 世界経済から「日満支ブロック」・「大東亜共栄圏」へ
第3節 青島日本商工会議所の時局診断
1 占領直後から第二次世界大戦へ
2 対米開戦と対華中貿易への回帰
おわりに
索 引
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