入門 科学哲学 論文とディスカッション
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-7664-2102-6 C3010
奥付の初版発行年月:2013年11月 / 発売日:2013年11月下旬
「哲学再発見」
哲学の古典や日常の経験を超えて真理を探しに行こう
「哲学」を学ぶ学生が、「哲学」と「科学哲学」を別物と考え、「科学哲学」を敬遠するのは哲学にとって実に不幸なことである。
ギリシャ以来の哲学史をすなおに振り返ってみよう。幾何学が大好きだったプラトン、数学を言葉として使って運動を分析したガリレオ。デカルトは解析幾何学を生み出し、幾何学の代数化を目論んだ。ニュートンの『プリンキピア』の邦題は『自然哲学の数学的原理』である。
古来、哲学は、数学や物理学と結びつき、それらを研究し使用する学問だった。現代の哲学はこれを忘れてしまったのだろうか。
17世紀に科学革命が起こり、実証的な科学が哲学から独立した。
そして21世紀に入り科学の役割はますます増大するばかりである。哲学と訣別したかにみえた科学に対して、科学だけでは解けない原理的な問題(例えば量子力学、生命や遺伝など)が意識され、それを解決するという使命が、科学哲学に与えられた。
再生される哲学がとるべき選択の一つが科学哲学なのである。
本書の特徴―論文とディスカッション
論文:
①文系の学生でも理系の主題について「哲学する」ことを、論文の読解を通して学ぶことができる。
②本書に掲載されている論文は、いずれも、科学哲学において今日、議論されることの多いテーマを扱っている。読者は科学哲学の代表的な問題のいくつかに触れることができる。
ディスカッション:
③各論文のおわりには、論文についての質問、著者による解答、論文をめぐる議論を「ディスカッション」として掲載してある。科学哲学のディスカッションを通して、読者は論文への理解を深め、哲学する姿勢を実践的に知ることができる。
西脇 与作(ニシワキ ヨサク)
慶應義塾大学名誉教授。
専門:科学哲学
『現代哲学入門』(単著)慶應義塾大学出版会、2002年。『科学の哲学』(単著)慶應義塾大学出版会、2004年。「モデルが訴えるもの」、三田哲学会編『自省する知』、慶應義塾大学出版会、2011年。
源河 亨(ゲンガ トオル)
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍、慶應義塾大学大学院文学研究科非常勤助教(有期・研究奨励)。
専門:知覚の哲学、心の哲学
『進化の弟子-ヒトが人間になるまで』(共訳)勁草書房、2013年。「知覚はどれだけのものを捉えられるか」、『哲学』130集、慶應義塾大学三田哲学会、2013年。「音の不在の知覚」、『科学基礎論研究』、科学基礎論学会(印刷中)。
古賀 聖人(コガ マサト)
慶應義塾大学文学部非常勤講師。
専門:心の哲学、知識の哲学
「色の自然主義的理解」、『哲学』第113集、慶應義塾大学三田哲学会、2005年。「“少数の法則”を補足する説明の妥当性の検討-生成過程の違いによる説明と結果予測の成否による説明」、『人間と社会の探求-慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要』66号、2008年(共著論文)。「合理的非合理性と経験的知識」科学基礎論学会、2013年(学会発表)。
田中 泉吏(タナカ センジ)
慶應義塾大学訪問研究員、慶應義塾大学文学部非常勤講師、立教大学兼任講師。
博士(哲学)。
専門:科学哲学
『ダーウィンと進化論の哲学』(共著)勁草書房、2011年。「微生物と本質主義-種カテゴリーに関する恒常的性質クラスター説の批判的検討-」、『科学基礎論研究』40巻1号、2012年。『進化の弟子-ヒトが人間になるまで』(共訳)勁草書房、2013年。
石田 知子(イシダ トモコ)
慶應義塾大学通信教育部非常勤講師。
専門:科学哲学
「研究公正局」、「純粋科学と応用科学」、『科学・技術・倫理百科事典』(共訳)丸善出版、2012年。「基礎的物理学は生物学を消去するか-分子生物学的説明についての考察から」、『哲学』131集、慶應義塾大学三田哲学会、2013年。“Genetic Information as a Conceptual Metaphor” International Society for the History, Philosophy, and Social Studies of Biology, 2013(学会発表)。
森元 良太(モリモト リョウタ)
慶應義塾大学文学部非常勤講師ほか。
専門:科学哲学、生物学の哲学、確率論の哲学
『進化論の射程』(共訳)春秋社、2009年。『進化論はなぜ哲学の問題になるのか』(共著)勁草書房、2010年。『ダーウィンと進化論の哲学』(共著)勁草書房、2011年。
杉尾 一(スギオ ハジメ)
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍、日本学術振興会特別研究員。
専門:科学哲学、物理学の哲学
「アメリカ科学者連盟」、『科学・技術・倫理百科事典』(共訳)丸善出版、2012年。「量子力学をどのように解釈してきたか-思想史的観点にもとづく研究」、『比較文化研究』2012年。「認識の体系としての物理学」、『物理学基礎論研究会会誌2013』2013年。
【編著者】
西脇 与作(にしわき よさく)〔序章執筆〕
慶應義塾大学名誉教授。
【著者】
源河 亨(げんが とおる)〔第1章執筆〕
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍、慶應義塾大学大学院文学研究科非常勤助教(有期・研究奨励)。
古賀 聖人(こが まさと)〔第2章執筆〕
慶應義塾大学文学部非常勤講師。
田中 泉吏(たなか せんじ)〔第3章執筆〕
慶應義塾大学訪問研究員、慶應義塾大学文学部非常勤講師、立教大学兼任講師。
博士(哲学)。
石田 知子(いしだ ともこ)〔第4章執筆〕
慶應義塾大学通信教育部非常勤講師。
森元 良太(もりもと りょうた)〔第5章執筆〕
慶應義塾大学文学部非常勤講師ほか。
杉尾 一(すぎお はじめ)〔第6章執筆〕
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程在籍、日本学術振興会特別研究員。
目次
序 章
科学哲学を学ぶために 西脇与作
1. 哲学が問題にしてきた事柄を科学の観点から見返すと…… :
あるいは、20世紀以前の哲学を科学哲学的に見直すと
2. 20世紀初頭の科学的な哲学の動向はどうだったのか…… :
現在から振り返ってみれば
3. 現在の科学哲学にはどのような分野があり、その現状は…… :
科学哲学の現在
4. 各論文の内容について:それぞれの主張と特徴は何か
5 .各論文を読みこなし、科学哲学の将来を見据えよう
6. 参考文献について:科学哲学を学ぶために必要なのは
第一部 経験と知識の哲学
第一章 色や音は世界のなかにあるのか 源河 亨
1. はじめに
2. 客観主義
3. 主観主義
4. 主観主義の問題
5. 知覚の表象説
6. 物理主義の検討
7. おわりに
◇ ディスカッション1
知覚対象の存在論
源河 亨×田中泉吏×西脇与作
第二章 経験的知識とはどのようなものか
―合理的非合理性から見た科学的知識と知覚的知識― 古賀聖人
1. はじめに
2. 経験的知識の源:科学と知覚
3. 認識論の経済学化
4. 経験的知識のプラグマティズム
5. 結び
◇ ディスカッション2
知識というもののあり方をめぐって
古賀聖人×石田知子×西脇与作
第二部 生物学の哲学
第三章 有機体とは何か
―生物学における存在論― 田中泉吏
1. 有機体をめぐる問い
2. さまざまな有機体概念
3. 微生物と有機体概念
4. 生物学と存在論
5. 有機体の進化
6. 生物学における存在論
◇ ディスカッション3
生物学の存在論を問い直す
田中泉吏×源河 亨×西脇与作
第四章 遺伝情報を考える 石田知子
1. 導入
2. 分子遺伝学基礎知識
3. 遺伝情報概念の分析
4. 遺伝情報概念の役割
5. 結論
◇ ディスカッション4
遺伝情報をめぐる諸問題
石田知子×古賀聖人×西脇与作
第五章 進化論は生物の変化をどのように説明するのか 森元良太
1. はじめに
2. 進化論の因果的解釈
3. 進化論の統計的解釈
4. 進化論に因果概念は必要なのか
5. おわりに
◇ ディスカッション5
力の理論と進化論
森元良太×杉尾 一×西脇与作
第三部 物理学の哲学
第六章 物理学の認識論的転回を目指して 杉尾 一
1. はじめに
2. 古典論
3. 量子論
4. 新たな量子測定
5. まとめ
◇ ディスカッション6
存在論から認識論へ
杉尾一×森元良太×西脇与作
索引