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グローバル健康福祉社会への政策提言社会保護政策論

社会保護政策論 グローバル健康福祉社会への政策提言

A5判 392ページ 並製
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-7664-2109-5 C3033
奥付の初版発行年月:2014年05月 / 発売日:2014年05月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

「社会保障」から「社会保護」へ

豊かな社会における新しい貧困、最貧国でも進行する少子高齢化など、
従来の社会保障政策では対応しきれない問題が深刻化・複雑化している。
すべての人々が社会的排除と戦い、社会的参加と包摂をめざすための
総合的な取り組みである「社会保護」の実現に向けた、初の問題提起と政策提言。

著者プロフィール

真屋 尚生(マヤ ヨシオ)

日本大学商学部教授。
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。商学博士。日本大学商学部専任講師、助教授を経て、1983年より現職。専門は、社会保障論、保険論。
主要業績に、『保険理論と自由平等』東洋経済新報社、1991年(吉村賞受賞)、『節約と浪費――イギリスにおける自助と互助の生活史』慶應義塾大学出版会、1997年(Paul Johnson, Saving and Spending: The Working-class Economy in Britain 1870-1939, Oxford University Press,1985の翻訳)、Health and Welfare, University Research Center, Nihon University, 2004(編著)、『保険の知識 第2版』日本経済新聞出版社、2004年、『学び心 遊び心――古典/名著/傑作/快作と人生/教育/社会/経済』慶應義塾大学出版会、2008年など。
Visiting Researcher, St Antony’s College and the Department of Social and Administrative Studies, the University of Oxford(1983-1985)、Honorary Visiting Research Fellow, the Department of Public Health, the University of Oxford(1998-2001)、Visiting Fellow, Green College, the University of Oxford(2004-2005)、公益財団法人年金融資福祉サービス協会理事長(2009年-現在)などを歴任。

上記内容は本書刊行時のものです。

(掲載順。[ ]内は担当章。)
【編著者】
真屋 尚生(まや よしお) [はじめに、序章、第5章、第7章、Column 2、3、8]
日本大学商学部教授。

【執筆者】
吉田 達雄(よしだ たつお)[第1章、Column 1]
日本大学商学部教授。
関西大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。関西大学経済学部教授を経て、1993年より現職。専門は、財政学、公共経済学。

竹内 幸雄(たけうち ゆきお)[第2章]
日本大学商学部教授。
明治大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。日本大学商学部専任講師、助教授を経て、1992年より現職。専門は、近代経済史、イギリス帝国史、商業史。

小阪 隆秀(こさか たかひで)[第3章]
日本大学商学部教授。
日本大学大学院商学研究科博士後期課程満期退学。日本大学商学部助手、専任講師、助教授を経て、1994年より現職。専門は、経営組織論、経営管理論。

鈴木由紀子(すずき ゆきこ)[第4章]
日本大学商学部准教授。
慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。日本大学商学部専任講師を経て、2011年より現職。専門は、企業倫理。

五十嵐 眞(いがらし まこと)[第5章]
元ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine, Houston)教授。
慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。(M.D., Ph.D.)。専門は、宇宙医学、平衡科学。

塚田 典子(つかだ のりこ)[第6章]
日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)大学院博士課程修了。Ph.D. in Social Welfare. UCLA Center for Policy Research on Aging非常勤研究員、UCLA Department of Social Welfare非常勤講師、日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科助手、助教授を経て、2005年より現職。専門は、社会老年学。

円居 総一(えんきょ そういち)[第8章]
日本大学国際関係学部教授。
ロンドン大学政治経済学院(LSE)博士課程修了。Ph.D. in Economics.東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)米州本部上級副頭取主席エコノミストを経て、1997年より現職。専門は、金融経済学、応用経済学。

永山 利和(ながやま としかず)[第9章]
元日本大学商学部教授。
慶應義塾大学経済学部卒業。日通総合研究所、国民経済研究協会勤務、日本大学商学部教授を経て、2010年より日本大学商学部非常勤講師。専門は、労働経済学。

高橋 巌(たかはし いわお)[第10章]
日本大学生物資源科学部教授。
日本大学大学院農学研究科博士前期課程修了。博士(農学)。埼玉県狭山市農協、中央酪農会議、農協共済総合研究所主任研究員、日本大学生物資源科学部助教授を経て、2010年より現職。専門は、農業経済学。

森山 幹夫(もりやま みきお)[第11章]
東京医科大学医学部看護学科教授。
九州大学法学部政治学科卒業。厚生労働省社会・援護局総務課長、四国厚生支局長、国立看護大学校研究課程部(大学院)教授などを経て、2013年より現職。専門は、保健行政学。

髙久保 豊(たかくぼ ゆたか)[第12章、Column 12]
日本大学商学部教授。
慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程単位取得退学。日本大学商学部助手、専任講師、助教授を経て、2004年より現職。2003-2004年、北京大学光華管理学院訪問学者。専門は、経営学、中国経営論、比較経営論。

小島智恵子(こじま ちえこ)[第13章]
日本大学商学部教授。
日本大学大学院理工学研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。日本大学商学部専任講師、助教授を経て、2009年より現職。専門は、現代物理学史、原子力開発史。

野村 泰之(のむら やすゆき)[第5章、第14章]
日本大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野診療准教授。
慶應義塾大学商学部卒業の後、日本大学医学部卒業。医学博士。日本大学医学部耳鼻咽喉科に入局、NASA(アメリカ航空宇宙局)ジョンソン宇宙センター留学勤務、日本大学医学部耳鼻咽喉科講師を経て、2012年より現職。専門は、耳科学、平衡科学。

中山 直次(なかやま なおじ)[Column 4、5、10、11、13]
元日本大学商学部教授。
東京外国語大学大学院修士課程修了。日本大学商学部専任講師、助教授、教授を経て、2010年より日本大学商学部非常勤講師。専門は、スペインの言語・文化史。

アアバ・チャウダリ(Aabha Chaudhary)[Column 6、7、9]
Honorary Chairperson of Anugraha, India.
Lady Shri Ram College and Delhi School of Economics, Delhi University卒業。Ph.D. in Gerontology and Gender Issues. Consultant with UN and Indian Government Agencies, Founder Secretary of Anugraha.専門は、老年学、性差別問題。

目次

はじめに


序章 社会保護体系の構築に向けて
――日英比較を中心にしたグローバルな視点からの問題提起
真屋 尚生
 1 豊かな社会の新しい貧困と社会保護
 2 根強い偏見と選別主義
 (1)救貧法の残滓
 (2)社会保障をめぐる逆転現象
 (3)職業をめぐる人種差別
 (4)男女間賃金格差
 (5)個性尊重の教育
 (6) エリートの価値観
 3 残された究極の課題
 (1)生命の安全をめぐる放任と規制
 (2)人命をめぐる利己主義と利他主義
 (3)地球規模の公共性とは何か?


 第Ⅰ部 社会保護をめぐる思想的論点

第1章 公共経済における公共性と共同性  吉田 達雄
 1 はじめに
 2 消費者・市民の行動
 3 外部効果と公共財
 4 公共性レベルでの予算選択
 5 集合体と感情指向
 6 共同性レベルでの予算選択
 7 むすび

Column 1 いじめがなくなるとき [吉田達雄]

第2章 社会福祉思想と“ニュー”と“ネオ”の2つの新自由主義
――19世紀イギリスの貧困・失業と社会福祉思想の生成  竹内 幸雄
 1 はじめに――新(ネオ)自由主義経済学と社会福祉の制限
 2 19世紀におけるレセ・フェールと国家干渉
 (1)古典派経済学における原則と例外
 (2)救貧法改正――貧民と労働者
 (3)工場法と10時間労働法
 (4)ミルによるレセ・フェールへの条件
 (5)事実上の国家干渉――19世紀の行政革命
 3 レセ・フェールのもたらしたもの――飢饉への無策
 (1)アイルランド飢饉
 (2)インド飢饉
 4 新しい社会福祉の思想(新自由主義)の成立
 ――19世紀末から20世紀初頭にかけて
 (1)経済社会の変化と社会改革
 (2)新自由主義(New liberalism)の生成
 (3)ホブソンの「社会改革と帝国主義」
 (4)自由党政権の社会改革

Column 2 学生生活と国民年金 [真屋尚生]

第3章 ポスト企業福祉社会の効率と公正
――「共」を担う新たなコミュニティの形成  小阪 隆秀
 1 少子高齢社会における社会的連帯と持続可能性
 2 資本主義制度における「効率」と「公正」
 3 高度経済成長期における家族の変化と企業福祉政策
 4 企業福祉の後退と「社会」の喪失
 5 持続可能な社会とNPOの役割
 6 「豊かな社会」と公共性

Column 3 イギリスのボランタリー活動――PrivateとPublic
[真屋尚生]

第4章 「企業の社会的責任」概念の変容と拡張  鈴木由紀子
 1 はじめに
 2 CSRをめぐる議論
 (1)CSRを果たす目的
 (2)CSRの要請と賛否
 3  CSRの概念的展開
 4 現代におけるCSR
 (1)CSRと持続可能性
 (2)CSRのガイドライン
 5  CSRの拡張と課題
 (1)戦略化するCSR
 (2)CSRのための新たな企業形態――Benefit Corporation
 6 むすびにかえて

Column 4 共生社会の追求 [中山直次]

第5章 健康福祉社会と死生学――終末期医療と死の質  
五十嵐 眞・真屋 尚生・野村 泰之
 1 視点と問題提起
 2 日本と英米の医療と老年介護システム
 (1)日本型健康福祉サービスの問題点
 (2)米英型健康福祉サービスの特徴
 (3)医学に関する社会教育の重要性
 (4)日本の医療福祉制度改革の方向性
 3 死生学教育(Thanatology Education)
 4 今後の医療、医学、そして先進医療と福祉医療とのバランス

Column 5 総合する科学 [中山直次]

 第Ⅱ部 少子高齢時代の社会保護政策課題

第6章 プロダクティブ・エイジングの課題と展望
――新しい高齢者像の実現に向けて  塚田 典子

 1 人類未踏の少子高齢化と世界の人口高齢化
 (1)進む日本の少子高齢化
 (2)グローバル・エイジングと世界レベルの取り組み
 2 エイジング(高齢化・加齢)を捉えるパラダイム
 (1)初期のネガティブ・エイジング・パラダイム
 (2)エイジング・パラダイムのシフト
  ――ネガティブからポジティブへ
 (3)ポジティブ・エイジング・パラダイム
 3 日本の高齢社会政策に見る高齢者像
 (1)働く意欲の高い日本の高齢者
 (2)高齢者雇用制度とプロダクティブ・エイジング
 (3)「高齢社会対策大綱」に見る高齢者像の変遷
 4 プロダクティブ・エイジングと新しい社会保障制度
 (1)プロダクティブ・エイジングに求められるもの
 (2)新しい高齢者像の真の実現に向けて
 (3)社会保障制度から社会保護政策へ向かって

Column 6 高齢化をめぐるアジアの課題と国際的行動計画
[アアバ・チャウダリ]

第7章 社会保障の原点とジェンダー・ギャップ  真屋 尚生
 1 平均寿命と賃金における男女間格差
 2 社会保険加入者としての主婦
 3 被扶養者としての主婦
 4 ジェンダー視点から見た社会保障の理想と現実
 5 社会保障から社会保護への発想の転換

Column 7 アジア型高齢者包摂社会の構図
――社会的弱者としての高齢女性 [アアバ・チャウダリ]

第8章 少子高齢化の負の神話と経済成長戦略
――低成長と財政悪化、福祉崩壊のワナの回避に向けて  円居 総一
 1 はじめに
 2 少子高齢化の現状
 (1)類を見ない日本の少子高齢化の進行
 (2)少子化と高齢化の同時進行による人口構成の急変
 3 少子高齢化と経済成長
 4 負の憂鬱の真実
 5 成長戦略を軸にした体系的取り組み
 6 むすびにかえて

Column 8 高齢者の資金ニーズの多様化と年金担保貸付制度
[真屋尚生]

第9章 国際労働移動をめぐる制度的課題  永山 利和
 1 急速に進む日本の少子化と高齢化
 2 労働力構造是正策としての国際労働移動への政策感覚
 (1)高度人材確保政策
 (2)単純労働者の受け入れ政策
 3 生産力調整方策としての国際労働移動条件をめぐる諸問題

Column 9 アジアにおける高齢化の光と影
――シンガポールとネパール [アアバ・チャウダリ]

 第Ⅲ部 社会保護の視座と展望

第10章 農村地域社会におけるセーフティ・ネットとソーシャル・キャピタル
――総合農協の事業・活動事例を中心に  高橋 巌
 1 はじめに
 2 問題の背景
 ――新自由主義的政策の中で変容する市民生活と空洞化するセーフ
   ティ・ネット
 3 社会保護の基礎となるセーフティ・ネット再構築の担い手としての
   農協
 (1)セーフティ・ネットとソーシャル・キャピタル
 (2)地域の「食」と「生活」を支える総合農協の機能
 (3)農協が醸成する「総合性」とソーシャル・キャピタル
 4 農協事業の特質とセーフティ・ネット、ソーシャル・キャピタル
 ――愛知県ひまわり農協のケース・スタディ
 (1)地域の「食」「生活」の総合的事業展開を図る農協
 (2)総合事業の地域波及と影響力、ソーシャル・キャピタルの醸成
 5 農村地域社会とソーシャル・キャピタル
 ――まとめと今後の課題提起

Column 10 個と共同体 [中山直次]

第11章 医療・福祉における国際協力と人材育成  森山 幹夫
 1 日本の経験と挑戦
 2 アジア型福祉国家の形成と日本の国際協力
 3 途上国支援の政策枠組み
 4 国際協力と人材育成――看護職を中心にして

Column 11 共生に向けての規範と契約 [中山直次]

第12章 中国「儒法モデル」の経営管理  髙久保 豊
 1 はじめに
 2 「中国的ビジネスモデル」の限界
 (1)「安価な労働力」としての農民工
 (2)「弱勢群体」は与件ではない
 3 経営管理「儒法モデル」の基本論点
 (1)新しい定義における「儒」と「法」
 (2)効率重視の非効率――「ビジネスモデル」至上論への疑問
 4 「弱勢群体」への視点と和諧社会
 (1)社会主義市場経済の本質をどう見るか
 (2)「発展空間がほしい」という声が聞こえるか
 5 おわりに

Column 12 中国版「草の根金融」の一断面 [髙久保 豊]

第13章 科学技術リテラシーと原子力
――原子力教育に関する日仏比較  小島智恵子
 1 はじめに
 2 日本の社会を支えてきた原子力エネルギー
 3 日本における原子力リテラシー
 (1)一般市民の認識
 (2)初等・中等教育における原子力リテラシー
 4 フランスにおける原子力リテラシー
 (1)一般市民の認識と初等・中等教育における原子力リテラシー
 (2)元パリ大学理論物理学担当者へのインタビュー
 (3)フランスの原子力技術者専門教育
 5 原子力教育に関する日仏比較
 (1)エリートの社会的位置づけと原子力
 (2)原子力開発における日仏比較
 6 おわりに

第14章 宇宙開発時代の医療・健康問題  野村 泰之
 1 はじめに――『竹取物語』から国際宇宙ステーションの時代へ
 2 劇的な事実を求む
 3 宇宙酔いと動揺病・めまい
 4 空間識入力の3系統
 5 重力変化による平衡系の破綻と宇宙酔いの発症
 6 宇宙酔いの諸説と適応
 7 再突入症候群と再可塑化
 8 適応回復とパフォーマンス向上
 9 宇宙医療・医学からのスピン・オフの今後

Column 13 人類の未来を思う [中山直次]


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