国民の司法参加と刑事法学
価格:9,900円 (消費税:900円)
ISBN978-4-7664-2115-6 C3032
奥付の初版発行年月:2014年02月 / 発売日:2014年02月下旬
刑事裁判への国民参加の意義を問いなおす。
▼ドイツ参審制度の先駆的研究を皮きりに、国民の刑事裁判への参加は何のために、どのようになされるべきかを考究した著作を中心とする論文群が遂に集成。
▼裁判員制度開始以来、刑事裁判に対する関心は高い。本書は、司法制度改革において、裁判員制度導入検討の中心メンバーであった平良木登規男教授による論文集。待望されつつも未だ刊行がなされていなかった平良木教授の研究を集成し、裁判員裁判制度の本質論はもちろん、刑事司法制度全般に横たわる諸問題をも取り扱う論文集が遂に刊行!
目次
国民の司法参加余話――はしがきにかえて
第一部 参審制度と裁判員制度
第一章 参審制度について
第一節 ドイツにおける参審制度の沿革
一 はじめに
二 序 説
1 素人裁判官に関する若干の用語 / 2 参審員の現状
三 ドイツの刑事裁判制度の概要
1 区裁判所 / 2 州裁判所 / 3 上級州裁判所
四 ドイツの参審制度――沿革を中心に――
1 参審員(Schöffen)の語源について / 2 参審制度の生成
3 裁判所構成法(Das Gerichtsverfassungsgesetz von
1877)の成立 /
4 その後の改正の経緯 /
5 一九四五年(第二次世界大戦)以降の素人裁判官
五 一応の総括
六 おわりに
第二節 ドイツにおける参審制度の現在
一 はじめに
二 裁判制度における構造上の特色
1 総 説 / 2 控訴制度
三 裁判制度における手続上の特色
1 職権主義 / 2 参審員と予断
四 参審員の選出
1 連邦裁判所一九五八年一二月二日判決 /
2 連邦裁判所一九九一年七月三〇日判決
五 参審制度の現代的意義
1 民主主義の原理 / 2 裁判(判例)の質の向上 /
3 民衆に対する教育効果
六 むすび
第三節 日独の刑事司法
一 はじめに
二 我が国の刑事司法の成立
三 ドイツの刑事裁判制度の概要
1 区裁判所が第一審を管轄する事件の審級 /
2 州裁判所が第一審を管轄する事件の審級
四 ドイツの刑事裁判制度の特徴
1 第一審の裁判体へ参審員(素人裁判官)が参加しているこ
と /
2 軽い罪の事件については三審制、重い罪の事件については二
審制を採用していること /
3 控訴審は覆審であること /
4 職業裁判官が法曹有資格者であること /
5 裁判体の構成が柔軟であること
五 ドイツの刑事裁判手続の特徴
1 職権主義の採用 / 2 素人裁判官制度の導入
六 参審制度
1 参審制度の生成 / 2 エミンガー改革 /
3 陪審と参審の異同 / 4 参審員の選出 /
5 合議と評決
七 さいごに
第四節 参審制度導入をめぐる問題点
一 はじめに
二 導入の基本的なコンセプト
三 具体的な提案
1 ドイツ型参審モデル / 2 導入の問題点 /
3 日本型参審制度モデル――私案―― /
4 導入の問題点
四 憲法問題
1 憲法の個別規定との関係 / 2 参審制度の憲法適合性
五 当事者主義・職権主義との関係
六 上訴審――特に控訴審――について
1 ドイツの上訴審 / 2 控訴審撤廃の論拠 /
3 参審制度と事後審
七 結 論
第二章 裁判員制度について
第一節 裁判員制度の問題点
一 はじめに
二 憲法問題
三 司法と民主主義
四 国民の負担
1 対象となる事件 / 2 裁判員の員数(評決との関係 ) /
3 裁判員の選出方法について
五 上訴制度
六 最後に
第二節 裁判員制度と刑事手続
一 司法制度改革の経緯
二 裁判員制度の本質
1 陪審制度と参審制度の異同 / 2 エミンガー改革 /
3 結 論
三 裁判員の員数及び選出方法
1 裁判体の構成 / 2 裁判員の選出方法
四 裁判員制度の下における刑事裁判手続
1 対象事件 / 2 公判手続 / 3 事前準備 /
4 評議及び判決書 / 5 上 訴
五 さいごに
第三節 当事者主義と予断排除
一 はじめに
二 職権主義と当事者主義
三 現行刑事訴訟法の基本構造
四 わが国における予断排除
五 ドイツにおける予断排除
六 事前準備
1 わが国の事前準備 / 2 ドイツの準備手続
七 結 論
第四節 刑事裁判の充実・迅速化と新たな準備手続(公判前整理手
続)
一 はじめに
二 現行刑事訴訟法における集中審理と事前準備についての取組み
1 刑事訴訟規則の改正 / 2 刑事訴訟規則に内在する問題 /
3 集中審理・事前準備が行われなくなった理由
三 刑事裁判の充実・迅速化が、なぜ今問題にされるに至ったか
四 新たな準備手続の創設
五 おわりに
第五節 裁判員裁判における評決について
一 はじめに
二 評議・評決の定義
三 国民の司法参加と民主主義
1 ドイツにおける陪審・参審について / 2 参審員の員数と
評決
四 裁判員裁判における評議・評決
1 意見を述べる義務 / 2 最高裁において評決が問題になった
裁判例 / 3 裁判員裁判における評決
第六節 裁判員裁判の合憲性
一 事実の概要
二 判決要旨
三 評 釈
1 国民の司法参加と憲法 / 2 憲法の個別規定との関係
第二部 刑事法の諸問題
第一章 実体法
第一節 交通事故における過失について――段階的過失論の批判的検
討を中心に
一 序 説
二 過失犯の構造
1 過失犯の体系上の地位 / 2 過失と注意義務との関係 /
3 過失の個数
三 過失の注意義務に関する諸見解の概観
1 過失併存説以前 / 2 過失併存説 / 3 段階的過失論 /
4 段階的過失論の問題点
四 結 論
第二節 共謀共同正犯について
第一款 学説を中心に
一 はじめに
二 問題点
三 否定説
四 肯定節
1 共同意思主体説 / 2 関接正犯類似説 /
3 行為支配説 / 4 優越的行為支配説 /
5 団藤説 / 6 中野説 / 7 西田説
五 判例理論
六 私 見
1 正犯概念について / 2 共同正犯の正犯性 /
3 共謀共同正犯の正犯性
第二款 ドイツ判例実務を中心に
一 はじめに
二 共謀共同正犯について
1 ドイツにおける実質的な黒幕の処罰 /
2 Alternative Tatbeiträge(択一的事実寄与)
三 事実の錯誤における数故意犯説について
1 ローゼ・ロザール事件 /
2 第二ローゼ・ロザール事件 /
3 わが国における問題点
四 むすびにかえて
第三節 没収について
――麻薬新条約、とくに利益没収理解のために――
一 はじめに
二 没収の法的性質
三 「罪となるべき事実」と没収
1 問題の所在 / 2 包括一罪と没収 /
3 適正な没収の範囲をめぐる実務上の諸問題
四 犯罪事実と没収の量的バランス
五 無形の財産的利益に対する没収
六 没収価格の算定時期
七 その他の問題点
1 没収の非刑罰化 / 2 担当機関について
八 結 語
第四節 環境分野における刑事規制
一 はじめに
二 問題の所在
三 ドイツにおける環境問題に対する取り組み
1 環境政策 / 2 環境経済 / 3 環境法
四 ドイツにおける環境刑法の成立
1 刑法典における環境犯罪の制定 / 2 行政従属性 /
3 具体的危険犯から抽象的危険犯へ / 4 保護法益論
五 ドイツにおけるその後の改正の経緯
1 犯罪構成要件の強化 / 2 その後の議論の状況 /
3 罰則の強化
六 わが国の法規則の特徴
1 特別法による規制 / 2 法人等の処罰 /
3 取締役の責任
七 おわりに
第二章 手続法
第一節 組織犯罪対策における手続法的問題点
一 はじめに
二 組織犯罪に対するこれまでの対応
三 手続法上の問題点の喚起
四 現行法による令状発付の特徴
五 将来生ずる犯罪事実についての令状発付
六 差押の対象物の特定
七 その余の問題点
第二節 通信傍受法について
――将来発生する犯罪についての捜査との関連において――
一 はじめに
二 通信傍受の法的性質
1 裁判例 / 2 検 討
三 現行の電話傍受の問題点
四 通信傍受法の問題点
1 令状主義の要請 / 2 行政警察と司法警察 /
3 通信傍受法と将来の犯罪事実
五 将来の犯罪事実についての捜査
六 新たな立法と令状主義
1 令状主義と将来の犯罪 / 2 犯罪事実と対象物の特定 /
3 通信傍受法の適法性
七 おわりに
第三節 再審公判手続をめぐる諸問題
一 序 説
二 再審開始決定が確定しながら再審公判手続において有罪とさ
れた事案の概要
三 再審開始決定の法的性質
1 確定判決と再審開始決定との関係 /
2 再審開始決定の再審公判手続に対する拘束性 /
3 確定判決と再審判決との関係
四 再審公判手続のあり方
1 問題の所在 / 2 諸学説及びその検討
五 訴因変更等の可否
1 問題の所在 / 2 裁判例 / 3 検 討
六 結 論
初出一覧
あとがきにかえて(平良木先生論文集刊行委員会)