福澤諭吉とフリーラヴ
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-7664-2116-3 C3010
奥付の初版発行年月:2014年10月 / 発売日:2014年10月下旬
自由愛情(フリーラヴ)か、偕老同穴か
福澤諭吉が新しい家族の姿に托した希望とは何か。
近代家族のゆくえを探る!
▼近代社会における新しい家族の姿はどうあるべきなのか。人びとの一生を左右する「家」をどのように考えるのか。「一身独立」した生き方を男女に説いた福澤諭吉の答えは、しかし曖昧に見える。愛情を最優先する「自由愛情(フリーラヴ)」の世界を理想としながらも、現実には「偕老同穴(かいろうどうけつ)」を説いた福澤の真意はどこにあったのだろうか。士族授産や女性教育といった「家」の変容を促す知られざる試みの実態を解明するとともに、論説を詳細に検討し、明治政府の政策や同時代の家族論と比較。さまざまな機会に揺れ動く姿を描きだし、両性関係と家族のゆくえを見つめ続けた福澤諭吉のあらたな側面に迫る。
西澤 直子(ニシザワ ナオコ)
慶應義塾福澤研究センター教授。
1961年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。
主要業績に、『福澤諭吉と女性』慶應義塾大学出版会、2011年、『近代日本と福澤諭吉』(共著、小室正紀編)慶應義塾大学出版会、2013年、『ふだん着の福澤諭吉』(西川俊作との共編)慶應義塾大学出版会、1998年、などがある。『福澤諭吉書簡集』(岩波書店、2001~3年)、『慶應義塾史事典』(慶應義塾、2008年)、『福澤諭吉事典』(慶應義塾、2010年)各編集委員。
目次
はじめに
第一章 福澤諭吉の近代化構想と家族
一、 西洋の家族と日本の「家」
(一) 『西洋事情』に描かれた家族
(二) 江戸時代の「家」 ―― 福澤家を事例に
二、 近代化への道程
(一) 一身独立から一家独立、一国独立へ
(二) 「一身独立」とはなにか
(三) 「家」の変容
(四) ミドルクラスへの期待
第二章 近代における家族の要件
一、 家族のかたち ―― 求められる家族像
(一) 一夫一婦
(二) 団欒のある家族
(三) 親子の関係
二、 明治政府の構想する家族
(一) 戸籍による家族
(二) 西洋思想の受容と儒教主義の導入
三、 家族のきずな
(一) 愛・敬・恕
(二) 男女交際の役割
(三) 家族団欒の価値
四、 フリーラブと現実
(一) フリーラブの理想
(二) 男女平等と一夫一婦
(三) 対外問題と一夫一婦
(四) 離婚と偕老同穴
第三章 家族の持つ機能
一、 私徳の涵養の場としての「一家」
(一) 「家の美風」と徳教
(二) 私徳から公徳へ
二、 法律単位としての「一家」
(一) 戸籍と家族
(二) 財産と権利
(三) 家産の弊害
三、 経済的単位としての「一家」
(一) 中津士族社会の変容と不変容
(1) 家禄への依存
(2) 中津市学校の展開
(3) 門閥の残夢
(二) 士族授産における「一家」
(1) 中津市学校事務委員集会の士族授産
(2) 『田舎新聞』に見られる士族授産
(3) 士族の授産は養蚕製糸を第一とす
(三) 女性の経済的自立と家族
(1) 女性の職業
(2) 性別役割分業
第四章 ネットワーク形成と家族の階層化
一、 近代化構想における人間交際
二、 交詢社の設立
(一) 世務諮詢
(二) 新たな帰属組織
三、 女性の排除と男女交際論
四、 福澤家における人間交際
五、 福澤家の女性たちのネットワーク
六、 『学問のすゝめ』における競争原理と女性
第五章 女性と教育
一、 慶應義塾における女子教育
二、 福澤の教育理念と女子教育
(一) 女子教育の目的
(二) 女子教育の場
(三) 自己犠牲精神の涵養
三、 学校教育と家族像
第六章 個人主義と家族主義
一、 明治民法への期待
二、 優先される家族像
(一) 文明の進歩への信頼
(二) 家族論の二つの側面
(三) 感情がもたらす矛盾
三、 「一家」の継承性
四、 「一身」と「一家」の軽重
五、 家族論に内在した普遍的課題
おわりに
註
参考文献
あとがき
索引