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ディズニーランド化する社会で希望はいかに語りうるか

ディズニーランド化する社会で希望はいかに語りうるか

四六判 304ページ 上製
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-7664-2140-8 C0036
奥付の初版発行年月:2014年07月 / 発売日:2014年07月中旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

いまや誰もが「ディズニーランド」の住人である
「それなりに愉しく幸福な絶望」の日常に絡めとられた私たちに、
いかなる「生」が可能なのか?
才気溢れる筆致で描く、希望のメディア論


夢と魔法の王国、ディズニーランド――。
 いまや巨大複合商業施設にかぎらず、イメージと消費とが深く絡みあうポストモダンな情報消費社会には、日常のあらゆる営みに、ディズニーランド的な非日常性が演出され、浸透し、繁茂している。
 ディズニーランドのアトラクションがもたらすものは利便でもなければ、生産でもなく、「愉しさ」である。アトラクションへの搭乗は、遊戯機械というテクノロジーに触れ、同期し、協調的に運動をしながら、特定の目的へ向かうことなく戯れ、そのプロセス自体において「愉しさ」が立ちあらわれるような経験である。このような運動を、本書では〈テクノロジーの遊戯〉とよぶ。
 多様な欲望を無際限に喚起し、解放感や高揚感をもたらす一方で、「ここではないどこか」や「ありえたかもしれない別の様態」といった外部を想像する力を奪ってゆくテクノロジーが、社会の隅々にまで浸潤するいま、わたしたちには、いかなる生の形式が可能なのか。
 才気溢れる筆致で描く、希望のメディア論。

著者プロフィール

長谷川 一(ハセガワ ハジメ)

1966年、名古屋市生まれ。千葉大学大学院中退後、書籍編集者として働く。東京大学大学院情報学環・学際情報学府博士課程満期退学。東京大学大学院情報学環助手を経て、現在、明治学院大学文学部芸術学科教授。専門はメディア論、メディア思想、文化社会学。博士(学際情報学)。
おもな著書に、『アトラクションの日常――踊る機械と身体』(河出書房新社、2009年)、『出版と知のメディア論』(みすず書房、2003年、日本出版学会賞奨励賞)、『本は、これから』(共著、岩波新書、2010年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第1章 ディズニーランド化する社会
 1-1 「だって、愉しいから」
     なぜディズニーランドへゆくのか / ビジネス書的ディズニー
     言説 / 人文社会科学系の知におけるディズニーランド
 1-2 シミュラークルの楽園――消費社会論と文化記号論
     シミュラークルの完璧なモデル / 消費社会のディズニーラン
     ド / 東京ディズニーランド開園以降
 1-3 建築・都市のディズニーランド
     現代建築の「最高傑作」 / ディズニーランドのポストモダ
     ン / ショッピングモール

第2章 外部の不在、希望という外部
 2-1 外部の不在とディズニーランド化
     外部の不在、外部の流入 / ディズニーランドと「つながりの
     社会性」 / ディズニーの物語性をめぐって / 「浦安ブラン
     ド」とその3・11以後
 2-2 不可能性の時代
     内在しつつ「希望」を語ることの困難 / 不可能性の時代 /
     内在的批判可能性への四つの要件
 2-3 内在的に希望を語るために
     希望を語るための条件 / 極限的な地点としての「裸」の身
     体 / 参加と体験のディズニーランド / 映画としてのディズ
     ニーランド / 偶有性、愉しさ、実践 / 内在的批判可能性へ
     の戦略

第3章 社会変革の実践から日常の実践へ
 3-1 実践とその二つのベクトル
 3-2 実践という思想
     プラチックとプラクシス / テオーリアーとプラークシス――
     実践の由来 / 近代知批判としての実践
 3-3 批判的メディア実践とワークショップ
     社会変革の実践としての批判的メディア実践 / 参加、体験、
     共同、学び――ワークショップという活動 / 実践共同体とそ
     のデザイン / サルトル的実践としての批判的メディア実践
 3-4 社会変革から日常へ
     社会変革志向の実践が孕むもの / ワークショップの陥穽 /
     批判性の喪失 / ワークショップと資本主義 / そして日常の
     実践へ

第4章 テクノロジーと身体の〈アトラクション〉
 4-1 なぜ〈アトラクション〉なのか
 4-2 〈アトラクション〉の日常
     〈アトラクション〉とディズニーランドのアトラクション /
     テクノロジー化した日常 /日常的実践のモデルとしての遊戯
     機械
 4-3 ハビトゥスから〈アトラクション〉へ
     プラチック的実践におけるテクノロジーの不在 /
     身体技法とハビトゥス / ハビトゥスと〈アトラクション〉
 4-4 〈テクノロジーの遊戯〉――物質、運動、ゲーム
     目的・機能から実践を解放するもの / 言語ゲームとしての
     日常的実践 /〈テクノロジーの遊戯〉――知覚の攪乱、第
     二の技術、共同の遊戯
 4-5 遊戯機械、見世物、引力
     「第二の技術」としての遊戯機械 / 回転木馬とコースター
     ――遊戯機械の運動パターン / 見世物という引力 / フジ
     パン・ロボット館 / 〈テクノロジーの遊戯〉としてのスラ
     ップスティック / 魔術としての引きつける力
 4-6 露出症としてのテクノロジーの本性
     テクノロジーと魔法 / ミッキーとキートン――機械としての
     映画 / 露出症としてのテクノロジー

第5章 契機としての〈テクノロジーの遊戯〉
 5-1 サイボーグと縫合
     〈テクノロジーの遊戯〉による非人間化 / サイボーグ化をめ
     ぐって / 縫合と縫合糸
 5-2 文化を脱ぎ捨てる
     経験と貧困と新たな未開――ベンヤミン / 〈テクノロジーの
     遊戯〉としての映画経験 / アトラクションとしての初期映
     画 / 文化から解き放たれること
 5-3 モンタージュとしての動詞
     運動をモンタージュする / 動詞と行為 / 家族的類似性 /
     「遊歩」する動詞 / パノラマ的、ヴォードヴィル的

第6章 ディズニーランド化する社会で希望はいかに語りうるか

 註
 あとがき
 索引


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