革命と騒乱のエジプト ソーシャルメディアとピーク・オイルの政治学
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-7664-2141-5 C0031
奥付の初版発行年月:2014年07月 / 発売日:2014年07月中旬
エジプトで、何が、起きているのか
2011年の革命、2013年の騒乱とその後を
情報通信技術とエネルギー関連技術の視角から
鮮やかに読み解く、俊英の快著。
エジプトで、何が、起きているのか。
2011年、アラブの春に湧いたエジプト。しかし、ムバーラクの後を継いだモルシー政権は2013年の騒乱であっけなく崩壊する。いったい、エジプトで何が起きているのか。
本書は、いわゆる「アラブの春」とその後の混乱について、こうした政変が発生する背景やメカニズムを国際社会の構造変化という視点から明らかにする。
技術は、政治を、社会を、経済を、その地域固有の文化をも変える力を持っている。時には、予測もつかない方向に、そして、予期せぬ規模での変化をもたらすこともある。本書が描くエジプト政変にも技術が深く関わっている。エジプトのケースで注目すべき技術とは、情報通信技術(ICT)とエネルギー関連技術の2つである。
エジプトの政変は、より深いレベルでは、現在、国際社会において進行しつつある構造的変化と密接に関連している。本書は、エジプト政変のメカニズムを精緻に分析することで、今後、国際社会が直面する構造的変化とそのインパクトについての示唆をも導き出す。
山本 達也(ヤマモト タツヤ)
清泉女子大学文学部地球市民学科准教授。NPO法人もったいない学会理事。
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。シリア国立アレッポ大学学術交流日本センター主幹・客員研究員、国際協力機構(JICA)準客員研究員、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、日本国際問題研究所中東政治変動研究会委員などを経て現職。専攻は、国際関係論、公共政策論、情報社会論。
著書に『アラブ諸国の情報統制――インターネット・コントロールの政治学』(慶應義塾大学出版会、2008年)、『政治の見方』(共編著、八千代出版、2010年)、『イスラームの豊かさを考える』(共著、丸善出版、2011年)、『ネットの高い壁――新たな国境紛争と文化衝突』(共著、NTT出版、2009年)、『政策過程分析の最前線』(共著、慶應義塾大学出版会、2008年)、『国家の現在』(共著、芦書房、2007年)など。
目次
序 章
第1章 タハリールⅠ ―― 誰も予測できなかった政治変動
1-1 突然の変化
1-2 世襲を阻止せよ
1-3 政治変動を担ったアクターたち
1-4 幻の「白い革命」
1-5 タハリールⅠとタハリールⅡ
第2章 革命2・0 ―― 新しい時代の「革命」か?
2-1 インターネット時代の政治変動
2-2 エジプトにおけるインターネットの歴史と構造
2-3 革命2・0
2-4 ソーシャルメディアと民主化運動
第3章 ソーシャルメディア時代の民主主義
3-1 動員革命
3-2 透明性革命
3-3 国家の揺り戻し
3-4 監視国家vs. 無政府主義者
第4章 タハリールⅡ ―― 予見された政治変動
4-1 エジプト騒乱に関心を持った第二のグループ
4-2 油田の振る舞いとエジプトへの影響
4-3 枯渇性資源とエジプト社会
4-4 タハリールⅡへ
4-5 他地域への分析視角の適用可能性
第5章 エネルギー環境の変化
5-1 石油をめぐる議論の新展開
5-2 「量」に関する石油ピーク論争
5-3 石油ピーク論の検討
5-4 イージーオイル時代の終焉
第6章 ポスト・イージーオイル時代の国際関係論
6-1 グローバル化論の再考
6-2 ネットワークの組み替えか?
6-3 国際秩序形成への課題
6-4 エネルギー安全保障のこれから
第7章 市場 vs. 地球 ―― 「有限」な地球における無限成長という矛盾
7-1 指数関数的振る舞いのワナ
7-2 三つの成長曲線
7-3 石油と経済成長
7-4 原油価格と現代文明をめぐる数理
7-5 矛盾表出のタイミングとその帰結
終 章 縮小社会のマネージメント
あとがき
註
参考文献
索 引