マラルメ 不在の懐胎
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-7664-2143-9 C0098
奥付の初版発行年月:2014年06月 / 発売日:2014年06月上旬
「ないものがある」 ――詩人にとっての虚構とは何か。
▼マラルメの詩をひもときながら、詩人が〈詩人〉となる瞬間と、〈虚構〉が生まれ出る場に立ち会う。
▼芸術に計り知れない影響を与えつづけるフランス近代詩の巨人が、〈理念〉の追求の末に到達した詩境とは何だったのか。
新たに訳した14の詩作品の全文を注意深く読み込むことで、諧謔と皮肉に覆われた「虚構」の森へと分け入り、詩人の「思考」に肉薄する。
著者の豪筆がうなる、挑戦的詩論。
原 大地(ハラ タイチ)
1973年生まれ。慶應義塾大学商学部准教授。2004年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。同年、パリ第四大学博士課程修了。慶應義塾大学商学部専任講師を経て、2011年より現職。専門はフランス語・フランス文学。主要著書に Lautréamont : vers l' autre. Etude sur la création et la communication littéraires, L'Harmattan, 2006 (2007年渋沢・クローデル賞本賞)、『牧神の午後――マラルメを読もう』 (慶應義塾大学教養研究センター選書、2011年)。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 詩人の相貌
詩人の到来 / 詩人自身 / マラルメ自身 / 詩人になる
第一章 誕 生
明快な詩 / 詩人の誕生 / 近代の凡庸 / 役人詩人 / 詩の出自 /
クレマン・プリヴェ / 真の作者 / ヨンヌ県の青春 /
口づたえの文学 / 出生の幻影
第二章 幼 年(アンフアンス)
虚構の孤児 / 母の死 / 妹の死 / 青年のおわり / 牢獄たる虚構 /
追憶 / 詩人と芸人 / 詩人になりたかった青年
第三章 詩人と妻と娘
原始の女 / カンケ灯の魔術 / 危機 / 家族 / 〈存在〉と〈理想〉 /
エロディアード / 暁の死児 / イドマヤの夜と黒い曙光 /
詩人の妻 / 家庭と詩作 / ジュヌヴィエーヴ / 家族のかたわらで
第四章 『エロディアード』 Ⅰ
出現 / 赤い王女と白い王女 / 戯曲『エロディアード』 /
晨昏の照応 / 『舞台』前段 / 夢幻の舞台 / 破綻する悲劇 /
演劇的興趣
第五章 『エロディアード』 Ⅱ
バンヴィルのエロディアード / ハイネのエロディアード /
王女の恋の起源 / 割れた柘榴 / 乙女の名 / 名に発する悲劇 /
隠れた理想 / 香らぬ花 / 閉ざされた光輝 /極限の美 /
おとずれ / 宿命の成就 / 放棄された悲劇
第六章 生まれなかった王女
三幅対のソネ / ベッドのない寝室 / 至高の遊戯 / 黄金の夢 /
主人の不在 / 空虚の変容 / 『エロディアード』の遺稿 /
王女の消失 / 生まれない子の物語 / 幼い女帝の兜のように/
美しい自殺 / 闇に下る髪 / メリー・ローラン / 手許にある不在
第七章 暮れ方の〈理想(イデア)〉
理想の道行き / 現実と理念 / 虚構の底へ / 人間の光景 /
断食芸人 / 一文の芸 / 微妙な供覧 / 炎の往還 / 女性と英雄 /
華やぐ松明 / 詩人と観客 / 高雅な対話
終 章 扇三面
おりふしの詩句 / メリー・ローランの扇 / マリー・マラルメの扇 /
ジュヌヴィエーヴ・マラルメの扇
ステファヌ・マラルメ略年譜
主要参考文献
あとがき