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現代中国の維権運動と国家

現代中国の維権運動と国家

A5判 328ページ 上製
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-7664-2191-0 C3031
奥付の初版発行年月:2014年12月 / 発売日:2014年12月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

これは民主化への助走なのか?

改革開放政策が中国にもたらしたのは、富だけではない。人々の権利への目覚めも、その必然的な産物である。1990年代以降、多様な領域で繰り広げられている権利侵害に対する抵抗と要求 ―― それが維権運動である。

メディアや知識人が加わって全社会を舞台に展開されるようになった維権運動は、次第に市民の基本的権利を求め、新たな制度構築を要求する運動へと変容してきている。そこには新たな国家―社会関係と、ボトムアップ型の政治参加の実態が垣間見られる。

様々な領域における維権運動を綿密に分析し、運動が台頭するプロセスとメカニズムを解明することから、現代中国社会の変容とその政治への影響を論ずる画期的研究。

著者プロフィール

呉 茂松(WU Maosong)

慶應義塾大学法学部専任講師(有期)
1999年東北師範大学卒業。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。法学博士。慶應義塾大学法学研究科助教、東京大学、東海大学などの非常勤講師を経て、2014年4月より現職。専門は、現代中国論。
主な著作に、『現代中国政治外交の原点』(共著、慶應義塾大学出版会、2013年)、『陳情:中国社会の底辺から』(共著、東方書店、2012年)、『党国体制の現在:変容する社会と中国共産党の適応』(共著、慶應義塾大学出版会、2012年)、『中国共産党のサバイバル戦略』(共著、三和書籍、2012年)、『中国:基層からのガバナンス』(共著、法政大学出版局、2010年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 なぜいま維権運動なのか
 第一節 問題の所在
 第二節 研究の対象、研究動向
  一 「維権」(権利擁護)行為の出現 / 二 中国の社会運動研究の
  文脈と最近の動向 / 三 集合行為に関する研究動向
 第三節 問題意識と分析方法
  一 研究対象と問題意識 / 二 分析枠組み / 三 資料、説明変数
 第四節 本書の構成と結論
  一 本書の構成 / 二 本書の結論

 第一部 維権の現場
第一章 中国における消費者運動の台頭とマス・メディア
―― 「王海現象」を事例として ――
 第一節 はじめに
 第二節 消費者運動の発展経緯と性質
  一 消費者問題の浮上 / 二 消費者運動の発展経緯及び性質 /
  三 消費者運動の変化 / 四 マス・メディアの現状
 第三節 「王海現象」に見るメディアと消費者運動
  一 分析の枠組みと概念整理 / 二 「王海現象」の顚末 /
  三 消費者維権運動 / 四 政治への影響
 第四節 おわりに

第二章 都市部における所有権者たちの維権行為
―― 深圳、北京、上海の事例を手がかりに ――
 第一節 はじめに
 第二節 政府の住宅制度改革と不動産管理システム
  一 政府の住宅制度改革 / 二 住宅不動産管理システムの普及と深
  圳市の先例 / 三 新たなアクター、新たな関係、三市の概況 /
  四 住宅不動産をめぐる諸問題
 第三節 維権の現場
  一 意識から行動への「維権」 / 二 維権運動の諸要素と特徴
 第四節 政治への影響
  一 政策過程に対する影響力 / 二 政治秩序への影響
 第五節 おわりに

第三章 タクシー業界における運転手たちの維権行為
―― 政策提言からストライキまで ――
 第一節 はじめに
 第二節 タクシー産業の概況、政府管理、問題点
  一 発展概況 / 二 政府管理の方針、管理体制、規制内容 /
  三 争議事件の争点
 第三節 維権行為の構造
  一 目標、対象 / 二 維権の方式、資源動員能力 /
  三 ストライキ
 第四節 政治への影響
  一 政策過程への影響 / 二 政府側の対応
 第五節 おわりに

第四章 労働者たちの維権行為
―― 国有企業の従業員と農民工たちを中心に ――
 第一節 はじめに
 第二節 市場経済化と激化する労使紛争
  一 経済体制改革と労働市場の形成 / 二 新たな産業労働者 ――
  農民工の登場 / 三 労使関係の変化と多発する労働争議の内容
 第三節 維権行為の構造
  一 目標と対象 / 二 方法 / 三 資源の動員 / 四 維権行為の変
  化と課題
 第四節 政治への影響
  一 政策過程への影響 / 二 政治秩序への影響、制度内への吸収
 第五節 おわりに

第五章 陳情制度をめぐる維権と安定維持の力学
―― 西安整流変圧器工場の従業員たちの事例を手がかりに ――
 第一節 はじめに
 第二節 利用者にとっての陳情制度
  一 出発点、維権活動の全体像 / 二 陳情行為の変化
 第三節 運用者にとっての陳情制度
  一 運用側の対応 / 二 制度運用の特徴
 第四節 陳情政治
  一 維権の台頭、権利救済メカニズムの機能不全 / 二 陳情行政の
  実態 / 三 民と官の相克
 第五節 おわりに

 第二部 維権運動と国家
第六章 維権運動の構造と言説
 第一節 はじめに
 第二節 維権運動の生成条件
  一 「維権元年」説 / 二 維権が提起された時代背景、必要条件 /
  三 維権行為の発生要因
 第三節 維権運動の定義と政治への影響
  一 維権行為の内容と様相 / 二 政策過程、政治秩序への影響 /
  三 維権運動の定義、構造、性質、特徴 / 四 包括的な社会運動
  としての維権運動
 第四節 「維権」という言説
  一 維権言説の中身と特徴 / 二 主流言説との共鳴 / 三 新たな
  言説を求める社会
 第五節 おわりに

第七章 台頭する維権運動への国家の対応
 第一節 はじめに  
 第二節 維権観をめぐる諸議論
  一 社会側の維権観 / 二 体制側の維権モデルと維権観 /
  三 維権観に見る国家と社会の隔たり
 第三節 「社会管理」の強化
  一 社会管理の提起 / 二 法制化の両義性 / 三 行政幹部の問責
  強化 / 四 安定維持体制の構築 / 五 組織資源に対する「分類控
  制」
 第四節 おわりに

終 章 結論と今後の課題
 第一節 既成事実としての維権運動
 第二節 可能性としての維権運動
 第三節 今後の課題

主要参考文献
初出一覧
あとがき
索 引


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