破断の時代 ― 20世紀の文化と社会
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2200-9 C3022
奥付の初版発行年月:2015年03月 / 発売日:2015年03月下旬
▼遺作
20世紀の偉大な歴史家、ホブズボーム。
資本主義社会の矛盾に鋭い眼を向け、
社会変革の可能性を生涯追い続けた彼は、
最期、私たちに、いかなる言葉を遺したのか
本書は、1964年から逝去する2012年までの約50年の間におこなわれた講演原稿をもとに、ホブズボーム自身が手に入れ、1冊に編みこんだ遺作である。
ホブズボームは、歴史家として、これまでも社会的現実と芸術の間に横たわる奇妙な絡まりについて筆をとってきたが、本書では、特に彼自身の文化的背景となっている中央ヨーロッパのドイツ語圏をとりあげ、19世紀に勃興した資本主義産業化のもとで生まれた「ブルジョワ(高級)」な社会と芸術が、第1次世界大戦を契機として、いかに破壊されていったかを述べる。ブルジョワ「近代」の価値観とはなんだったのか、それに絡みつく「芸術」の概念はどのように変容したのか。
「二重革命の時代」「資本の時代」「帝国の時代」「極端な時代」、そして、破断の時代――。
ホブズボームが、最後に読者に伝えたかった「20世紀」とは何か。
エリック・ホブズボーム(Eric Hobsbawm)
イギリスの歴史家。1917年エジプトのアレキサンドリアでユダヤ人の家庭に生まれ、幼年時代をオーストリアのウィーンやドイツのベルリンで過ごした。ドイツでヒトラーが政権を掌握したことにより、1933年に渡英。ケンブリッジ大学で学び、第二次世界大戦後、ロンドン大学バークベック・コレッジで教鞭をとりつつ、社会主義知識人としてさまざまな活動を行った。2012年10月、ロンドンで死去。多数の著作があるが、特に18世紀末以降の歴史を扱った4部作、『市民革命と産業革命 ―― 二重革命の時代』(岩波書店、1968年)、『資本の時代 1848-1875』(みすず書房、1981-82年)、『帝国の時代 1875-1914』(みすず書房、1993、98年)、『20世紀の歴史 ―― 極端な時代』(三省堂、1996年)がよく知られている。これらで提唱した「長い19世紀」(フランス革命から第一次世界大戦まで)、「短い20世紀」(第一次世界大戦から冷戦終結まで)という時代区分や、編著『創られた伝統』(紀伊国屋書店、1992年)での「伝統の創造」論などは、近現代史研究に大きな影響をおよぼした。
木畑 洋一(キバタ ヨウイチ)
成城大学法学部教授、東京大学名誉教授。専門は、国際関係史・イギリス帝国史・国際関係論。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。
主な著書に『帝国のたそがれ ―― 冷戦下のイギリスとアジア』(東京大学出版会、1996年、大平正芳記念賞受賞)、『イギリス帝国と帝国主義 ―― 比較と関係の視座』(有志舎、2008年)、『二〇世紀の歴史』(岩波書店〈岩波新書〉、2014年)など、翻訳に、カール・ポランニー『経済の文明史』(共訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2003年)など。
後藤 春美(ゴトウ ハルミ)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は、国際関係史、イギリス帝国史。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。オクスフォード大学大学院近現代史研究科博士課程修了。(D.Phil.)。
主な著作に、『アヘンとイギリス帝国 ―― 国際規制の高まり 1906-43年』(山川出版社、2005年)、『上海をめぐる日英関係 1925-1932年 ―― 日英同盟後の協調と対抗』(東京大学出版会、2006年)など。
菅 靖子(スガ ヤスコ)
津田塾大学学芸学部准教授。専門は、近現代イギリス史、デザイン史。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。ロイヤル・カレッジ・オヴ・アート博士課程修了(Ph.D.)。
主な著作に、『イギリスの社会とデザイン ―― モリスとモダニズムの政治学』(彩流社、2005年)、『モダニズムとデザイン戦略 ―― イギリスの広報政策』(ブリュッケ、2008年)、The Reimann School: A Design Diaspora (London: Artmonsky Arts, 2014)など。
原田 真見(ハラダ マミ)
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。専門は、ニュージーランド史、地域研究。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。
主な著作に、「ニュージーランド女性の国際意識と帝国 ―― 二十世紀の幕開けから両大戦間期まで」『帝国の長い影』(ミネルヴァ書房、2010年)など。
【著者】
エリック・ホブズボーム(Eric Hobsbawm)
イギリスの歴史家。1917年エジプトのアレキサンドリアでユダヤ人の家庭に生まれ、幼年時代をオーストリアのウィーンやドイツのベルリンで過ごした。1933年に渡英。ケンブリッジ大学で学び、第二次世界大戦後、ロンドン大学バークベック・コレッジで教鞭をとりつつ、社会主義知識人としてさまざまな活動を行った。2012年10月、ロンドンで死去。
【訳者】
木畑洋一(きばた よういち)[序文、第1章、第2章、第5章、第16章、第17章]
成城大学法学部教授、東京大学名誉教授。専門は、国際関係史・イギリス帝国史・国際関係論。
後藤春美(ごとう はるみ) [第6章、第8章、第11章、第13章、第15章、第19章]
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は、国際関係史、イギリス帝国史。
菅 靖子(すが やすこ)[第4章、第7章、第10章、第12章、第18章、第20章]
津田塾大学学芸学部准教授。専門は、近現代イギリス史、デザイン史。
原田真見(はらだ まみ) [第3章、第9章、第14章、第21章、第22章]
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。専門は、ニュージーランド史、地域研究。
目次
謝辞
序文
第1章 マニフェスト
第1部 「高級文化」窮状の今
第2章 芸術はどこへ行く?
第3章 文化共生の世紀?
第4章 なぜ21世紀にフェスティヴァルを開催するのか
第5章 新世紀の政治と文化
第2部 ブルジョア世界の文化
第6章 啓蒙と成果 ―― 1800年以降のユダヤ人才能の解放
第7章 ユダヤ人とドイツ
第8章 中欧の運命
第9章 ヨーロッパ・ブルジョワ社会の文化とジェンダー ―― 1870
年~1914年
第10章 アール・ヌーヴォー
第11章 人類最期の日々
第12章 ヘリテージ
第3部 不確実性、科学、宗教
第13章 未来への不安
第14章 科学 ―― 社会的機能と世界の変容
第15章 フリジア帽をかぶったマンダリン ―― ジョゼフ・ニーダム
第16章 知識人たち ―― その役割、機能とパラドックス
第17章 民衆宗教の将来
第18章 アートと革命
第19章 芸術と権力
第20章 アヴァンギャルドの失敗
第4部 芸術から神話へ
第21章 ポンと飛び出す芸術家 ―― ポップ化する芸術家、爆発する
文化
第22章 アメリカン・カウボーイ ―― 国際的な神話?
訳者あとがき
索引