ヨーロッパの中世
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-7664-2206-1 C3022
奥付の初版発行年月:2015年05月 / 発売日:2015年05月上旬
近現代に結実する、豊穣なる中世
―― 中世とは真に暗黒の時代だったのか。
「ローマ」「キリスト教」「世俗権」「都市」「国民」「科学」など、ヨーロッパの基底となるキーワードから読み解く。
▼ヨーロッパ史を学び直したい人のために。
中世ヨーロッパは確かに暗黒の時代であった。しかし、近代において飛躍するヨーロッパを育んだ豊かな苗床の時代であったともいえる。
「ローマ」「キリスト教」「世俗権(王権・帝権)「都市」「国民」「科学」などのキーワードから中世ヨーロッパ史を読み解き、近代の「人間」の時代へと誘う。
▼中世を読み解くための6つのキーワード
【ローマ】中世人は模範として仰ぎ見た。政治的にも文化的にも深い刻印を残したが、中世は古代ローマの繁栄を1000年以上も超えられなかった。
【キリスト教】中世人の心を絶対的な規範として律した。人々はそのメッセージを遵守し、理想に殉じたが、時に軽んじ、自らの利益を優先した。
【世俗権】君主個人の能力やカリスマに基づいたが、教会との闘争を経て宗教性を減じ、官僚制と軍を備えた近代国家へと脱皮した。
【都市】西欧の復活にともない、社会全体の成長のエンジンとなった。生活を向上させるだけでなく、新興階層を出現させ、新しい文化を生み出した。
【国民】帝国でもなく宗教でもない、ヨーロッパが生み出した新しい統合の絆である。現在に至るまで世界を支配している。
【科学】近現代におけるヨーロッパの繁栄の源泉となった。技術を手がかりに、理論を実験や観測と結びつけ、新しい合理的な世界観を生み出した。
・・・そして【人間】へ・・・
神崎 忠昭(カンザキ タダアキ)
略 歴:1957年生まれ。1989年3月慶應義塾大学大学院博士課程単位取得満期退学。慶應義塾大学文学部教授。
専 攻:ヨーロッパ中世史。
主要著作:『地中海世界の旅人 ―― 移動と記述の中近世史』(共著、慶應義塾大学出版会、2014年)、ジャン・ルクレール『修道院文化入門 ―― 学問への愛と神への希求』(共訳、知泉書館、2004年)、「ヴェッティヌスの幻視 Visio Wettiniについて」『慶應義塾大学言語文化研究所紀要』26、1994年等。
目次
イントロダクション
1 時代区分
2 自然条件
第1章 大いなるローマ
1 ローマの遺産
2 キリスト教の成立
3 後期ローマ帝国
4 荒れ野に生きる人々
第2章 古代世界の終焉とゲルマン人
1 侵入
2 帝国の衰退
3 統合の模索
4 ガリア
5 海の彼方
6 文化の継承
第3章 フランク王国
1 メロヴィング朝
2 カロリング家の台頭
3 カール大帝
4 カロリング・ルネサンス
5 ベネディクト修道士
6 カロリング家の退潮
第4章 隣人たち ―― 交流と緊張
1 コンスタンティノープル
2 イスラーム
3 東欧
4 ノルマン人
第5章 鉄の時代 ―― 混乱と再編
1 異民族の侵入
2 封建制
3 荘園と農民
4 農業革命
5 平和の回復
第6章 皇帝
1 オットー朝
2 帝国教会政策
3 11世紀中葉までのローマ教会
4 カノッサの屈辱
第7章 教皇
1 聖職者とは
2 ヒエラルキー
3 教皇権の「絶頂」
4 帝国の落日
5 アナーニ事件
第8章 修道士
1 クリュニー
2 隠修士
3 シトー会
4 修道参事会士
5 戦士のキリスト教化
6 12世紀ルネサンス
第9章 英仏の葛藤
1 プランタジネット朝
2 カペー家
3 イングランドの混乱と立憲制の萌芽
第10章 都市
1 都市とは
2 都市の人々
3 人とモノの動き
4 都市の文化
5 アウトサイダーたち
第11章 新しい宗教生活
1 異端:ワルド派、カタリ派
2 托針修道会
3 知の復興
4 民衆のキリスト教化
第12章 国民国家
1 百年戦争
2 国民国家フランス
3 バラ戦争:イングランド
第13章 それぞれの国制の模索
1 帝国からドイツへ
2 ブルゴーニュ
3 イタリア
4 スイス
第14章 隣人から一員へ
1 北欧
2 中東欧
3 レコンキスタ
4 コンスタンティノープルの落日
5 帝国の後継者
第15章 中世後期の教会
1 アヴィニョン教皇庁
2 教会大分裂
3 公会議主義運動
4 「国民教会」に向かって
第16章 衣食住
1 衣服
2 食生活
3 住居
第17章 人の一生
1 子ども
2 家族
3 病気
4 不安
5 死
第18章 宗教改革
1 人文主義
2 ルター
3 カール5世
4 反宗教改革
第19章 近代へ
1 古代の再発見
2 大航海時代
3 技術そして科学
4 人間性の肯定
エピローグ
人名索引
事項索引
図版出典一覧