21世紀のマルクス経済学
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-7664-2222-1 C3033
奥付の初版発行年月:2015年07月 / 発売日:2015年07月上旬
▼現代の経済危機をマルクス経済学はどう見るか?
現代社会の諸問題を理解するための正統派マルクス経済学の最新テキスト!
世界的な金融・経済危機が長期化するなか,現代社会は,経済だけでなく人々の意識さえも将来を展望するのが困難な閉塞的な状況に陥っている。
本書は,現代社会が抱える諸問題を分析するためのマルクス経済学の基礎理論を丁寧に解説し,様々なトピックをわかりやすく説明しながら,膨大な資本のグローバルな運動によって規定される現代資本主義の危機の構造と1990年代以降の日本経済の構造的変化を明らかにする。
現代社会を理解し,未来を展望するための正統派マルクス経済学の最新テキスト!
延近 充(ノブチカ ミツル)
慶應義塾大学経済学部教授
1971年京都教育大学附属高等学校卒業、1979年慶應義塾大学経済学部卒業、81年同大学大学院修士課程修了、84年同博士課程単位取得退学。1981年慶應義塾大学経済学部助手、91年同助教授を経て、2012年より現職。専門は、マルクス経済学、現代資本主義論。
主要業績:『薄氷の帝国アメリカ ―― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』御茶の水書房、2012年;「独占的市場構造と独占価格」、「独占利潤の本質と利潤率の構造的階層化」北原勇・鶴田満彦・本間要一郎編『資本論体系 第10巻 現代資本主義』所収、有斐閣、2001年。
目次
序 ―― 本書の課題と分析視角
序章 マルクス経済学の視角と方法
第1節 マルクス経済学の視角
(1) マルクス経済学とはどのような学問なのか
(2) 資本主義社会とはどのような社会か
(3) マルクス経済学の現代的意義
(4) 資本主義の歴史的段階変化
第2節 マルクス経済学の方法
(1) 経済現象の法則性の基盤
(2) 経済学の方法
第1部 資本主義経済の一般的運動法則
はじめに
第1章 商品と貨幣
第1節 商品の2要因 ―― 使用価値と価値
(1) 使用価値
(2) 価値
(3) 労働の二重性
(4) 価値の表現形態
(5) 商品・貨幣の物神的性格
第2節 貨幣の諸機能
(1) 価値の尺度
(2) 流通手段
(3) 蓄蔵手段
(4) 支払手段
(5) 世界貨幣
【補】 第二次世界大戦後の国際通貨体制
第2章 剰余価値の生産
第1節 資本主義的生産過程と剰余価値の本質
(1) 単なる貨幣と資本としての貨幣
(2) 貨幣の資本への転化
(3) 剰余価値の生産とその本質
第2節 資本主義の発展と剰余価値の増大
(1) 絶対的剰余価値の生産
(2) 相体的剰余価値の生産
第3節 剰余価値生産の増大のための生産力の発展と資本・賃労働関係
(1) 単純協業
(2) 分業
(3) 機械制大工業
第4節 剰余価値の本質を隠蔽する諸要因
(1) 労賃という形態による隠蔽
(2) 「資本の生産力」という外観による隠蔽
(3) 剰余価値の利潤への転化による隠蔽
(4) 擬制資本
第3章 資本の蓄積過程
第1節 資本主義的再生産と資本関係の再生産
(1) 単純再生産
(2) 資本蓄積
(3) 資本主義的取得法則
第2節 資本蓄積と生産力向上との相互促進的進展
(1) 生産力向上のための資本蓄積
(2) 生産力向上による資本蓄積の促進
(3) 資本蓄積の進展過程の特徴
第3節 資本蓄積の進展と労働者階級の状態
(1) 生産力の向上と相対的過剰人口
(2) 相対的過剰人口の発生
(3) 資本蓄積が急激に進展した場合
(4) 景気循環と相対的過剰人口
(5) 相対的過剰人口の機能と存在形態
(6) 資本主義における生産力発展の性格
第4章 資本の流通過程
第1節 資本の循環と回転
(1) 流通費用
(2) 資本の回転
第2節 社会的総資本の再生産と流通① ―― 単純再生産
(1) 分析の課題と方法
(2) 単純再生産
第3節 社会的総資本の再生産と流通② ―― 拡大再生産
(1) 余剰生産手段
(2) 拡大再生産の正常的経過のための必要条件
(3) 余剰生産手段の両部門への配分
(4) 資本の投資行動と余剰生産手段の配分
(5) 資本主義的拡大再生産過程の基本的傾向
(6) 生産力の向上をともなう拡大再生産
第5章 競争段階の景気循環と市場構造の変化
第1節 競争段階の景気循環
(1) 回復過程 ―― 景気の自動的回復メカニズム
(2) 好況過程の進展 ―― 〈生産と消費の矛盾〉の累積
(3) 好況過程の限界 ―― 〈生産と消費の矛盾〉の成熟
(4) 恐慌 ―― 〈生産と消費の矛盾〉の一時的・暴力的解決
第2節 市場構造の変化と独占段階への移行
第2部 独占資本主義段階の理論
はじめに
第6章 独占的市場構造と独占価格・独占利潤
第1節 独占的市場構造の特徴
(1) 高い市場集中度
(2) 参入障壁
第2節 協調による市場支配と独占価格の設定
(1) 独占価格設定における独占企業の行動原理
(2) 独占価格の設定
第3節 独占利潤の実体と源泉
(1) 生産手段の独占価格設定による独占利潤の収奪
(2) 消費手段の独占価格設定による独占利潤の収奪
(3) 生産力の向上と独占利潤の収奪源泉
(4) 独占資本主義の収奪構造・利潤率格差
第7章 独占企業の投資行動
第1節 新生産方法が存在しない場合の独占企業の設備投資行動
(1) 独占企業の設備投資決定の基本的特徴
(2) 設備投資における事実上の協調的行動
第2節 新生産方法が存在する場合の独占企業の投資行動
(1) 独占資本主義における新技術開発
(2) 新生産方法の導入をめぐる独占企業の投資行動
第8章 独占段階における景気循環の変容
第1節 停滞基調
(1) 生産=市場拡大の内的起動力
(2) 関連部門の市場=生産の誘発的拡大メカニズム
(3) 〈生産と消費の矛盾〉の現れ方の変化
第2節 新生産部門の形成と対外膨張による急速な拡大再生産の現実化
(1) 新生産部門の形成をめぐる設備投資
(2) 関連生産部門への需要の波及と設備投資の誘発
(3) 新生産部門の形成による発展の限界
(4) 対外膨張による急速な拡大再生産の現実化
(5) 対外膨張による再生産構造の変化
(6) 1930年代長期不況と第二次世界大戦
第3部 現代資本主義の危機の構造
はじめに
第9章 戦後資本主義世界体制の特徴
第1節 アメリカの恒常的軍拡体制
(1) 1950年代のアメリカの冷戦戦略と恒常的軍拡体制の成立
(2) 1960年代のアメリカの冷戦戦略とベトナム戦争
第2節 初期IMF=ドル体制の機能と冷戦戦略の実行
(1) 初期IMF=ドル体制の機能
(2) 冷戦戦略の実行と初期IMF=ドル体制の動揺
(3) ベトナム戦争と初期IMF=ドル体制の崩壊
(4) アメリカ経済の相対的衰退
第10章 戦後資本主義世界体制の危機の構造
第1節 レーガン政策と「危うい循環」の形成
(1) ドルの基軸通貨特権の危機と金融の自由化・国際化戦略
(2) レーガン政権の「経済再生計画」
(3) レーガン政策の帰結Ⅰ ―― インフレーション鎮静化と経済成
長
(4) レーガン政策の帰結Ⅱ ―― 双子の赤字の膨大化
(5) 双子の赤字とドルの基軸通貨特権の危機 ―― 「危うい循環」
の形成
第2節 アメリカ経済の「復活」と「危うい循環」の深化
(1) 1990年代のアメリカ経済の「復活」
(2) 経常赤字の累増と「危うい循環」の深化
第3節 投機的金融取引の盛行と世界的金融・経済危機
(1) 投機的金融取引の連鎖的膨張による実体経済の回復
(2) 経常赤字の累増と「危うい循環」の拡大・不安定牲の増大
(3) 2008年秋の金融・経済危機の発生
(4) 2008年秋以降の経常赤字のファイナンス構造
(5) 「薄氷の世界経済」化
第11章 1990年代以降の日本経済の構造的危機
第1節 アベノミクスの理論的支柱 ―― リフレ派の主張
(1) リフレ派の主張の特徴
(2) リフレ派の主張の検討
第2節 リフレ派に対する批判Ⅰ―― 「生産年齢人口減少説」
(1) 藻谷浩介氏「生産年齢人口減少説」の検討
(2) 河野龍太郎氏「生産年齢人口減少説」の検討
第3節 リフレ派に対する批判Ⅱ ―― 「成熟社会化=貨幣選好強化
説」
(1) 小野善康氏「成熟社会化=貨幣選好強化説」 の論理
(2) 小野説の検討
第4節 リフレ派に対する批判Ⅲ ―― 複合要因説
(1) 吉川洋氏「複合要因説 」の論理
(2) 吉川説の検討
第5節 日本経済の構造的危機の基本的性格
(1) 高度成長期から1980年代までの日本の経済成長のメカニズム
(2) 1990年代以降の停滞基調と日本経済の構造変化
あとがき
索引