遺伝子から探る生物進化4
新たな魚類大系統 ―― 遺伝子で解き明かす魚類3万種の由来と現在
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-7664-2298-6 C3345
奥付の初版発行年月:2016年10月 / 発売日:2016年10月下旬
▼世界の海や川には33,462種の魚がいる!
遺伝子を比較して魚の過去を復元したところ、教科書を書き換える予想外の結果が次々と得られた。分子系統学が解き明かす魚類5億年の進化史。
▼既成概念への挑戦! シリーズ第4弾。
ミトコンドリアゲノム全長配列の高速決定法開発に成功 ―― それがきっかけとなり、長いことその道の権威の独壇場だった魚類系統学に身を投じた。無謀にもみえた挑戦だったが、著者は数々の困難を乗り越え、魚類3万種の大系統の概要を世界に先駆けて発表。さらには「深海魚の3つの科が1つに」「ウナギの祖先は深海魚」「生きている化石ムカシウナギの発見」「(マグロを含む)新分類群ペラジアの発見」など、国内外で大きな反響を呼んだ研究成果を次々に発表した。文字どおり魚類学の教科書を書き換えた15年間のストーリー。
斎藤 成也(サイトウ ナルヤ)
1957年生まれ。テキサス大学ヒューストン校生物学医学大学院修了(Ph.D.)。現在は国立遺伝学研究所教授。おもな著書に『DNAから見た日本人』(ちくま新書)、『ゲノム進化学入門』(共立出版)、『Introduction to Evolutionary Genomics』(Springer)、『日本列島人の歴史』(岩波ジュニア新書)などがある。
塚谷 裕一(ツカヤ ヒロカズ)
1964年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。現職は東京大学大学院理学系研究科教授。岡崎統合バイオサイエンスセンターおよび放送大学客員教授も努める。おもな著書に、『漱石の白くない白百合』(文藝春秋)、『果物の文学誌』(朝日選書)、『植物の<見かけ>はどう決まる』(中公新書e-Book)、『植物のこころ』(岩波新書)、『変わる植物学、広がる植物学』(東京大学出版会)、『スキマの植物図鑑』(中公新書)など。趣味は、植物に関するさまざまなこと、エッセイ書き、おいしいもの探索など。
高橋 淑子(タカハシ ヨシコ)
1960年生まれ。京都大学理学研究科生物物理学専攻(理学博士)。現在は京都大学大学院理学研究科生物科学専攻教授。おもな訳書に『ギルバート発生生物学』(監訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル出版)がある。趣味は歌(合唱)。大阪フィルハーモニー合唱団所属。
宮 正樹(ミヤ マサキ)
1959年生まれ。東京大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士。現在は千葉県立中央博物館 生態・環境研究部長。専門は魚類の分子系統進化学・分子生態学。趣味は料理、ワイン、ガーデニング。それが長じて「フランスワイン産地巡礼」というライフワークを創出。年に1~2回渡仏し、アパートを借りてレンタカーでブドウ畑を巡り、周辺の丘陵をランドネ、夜は現地の食材で料理をつくってワインと楽しむ。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
第1章 系統学事始め
1.1 “Connecting the dots”(点と点をつなげる)
1.2 系統学における“connecting the dots”
1.3 現生種は共通祖先を通じて結ばれる
1.4 遺伝子と分子系統学
1.5 系統学における「既成概念」
1.6 研究のフロンティアとインパクト
1.7 サイエンスにおける発見の喜び
第2章 研究の世界との出合い
2.1 釣りにのめり込んだ少年時代
2.2 大学入学
2.3 アカデミアの世界を知る
2.4 深海魚との出合い
2.5 大学院入試と卒論
第3章 深海性オニハダカ属魚類の研究へ
3.1 深海性オニハダカ属魚類の生態研究
3.2 系統学理論の勉強
3.3 比較形態に基づくオニハダカ属の系統解析
3.4 博物館への就職
3.5 西田睦さんとの出会い
3.6 科研費の壁
3.7 分子生物学実験入門
3.8 オニハダカ属魚類の分子系統樹
3.9 オニハダカ属魚類の進化史再構成
3.10 外洋における種分化
3.11 終わりの始まり
第4章 新たなミトコンドリアゲノム全長配列決定法
―― ロングPCRの応用
4.1 きっかけは深海魚
4.2 ミトコンドリアとミトコンドリアゲノム
4.3 脊椎動物のミトゲノム
4.4 これまでの実験法
4.5 ロングPCR
4.6 PCRの原理
4.7 ヨコエソのミトゲノム増幅 ―― 最初の挑戦
4.8 プライマーの再設計で仕切り直し
4.9 新たなミトゲノム全長配列決定法
4.10 ユニバーサルプライマーの開発
4.11 ユニバーサルプライマーの検証
4.12 DNA塩基配列決定法の原理
4.13 ヨコエソのミトゲノム全長配列決定
第5章 魚類大系統解明へ向けた基盤形成
5.1 ミトゲノムデータの有用性の検証
5.2 大きいことはいいことだ!
5.3 問題解決能力の検証 ―― 下位真骨類の大系統
5.4 新たなマーカーの発見
5.5 プロジェクトの発進
5.6 条鰭類の大系統解明 ―― その第一歩
5.7 魚類とは何か
5.8 問題の歴史的背景その1:進化に対する段階群的(類型的)認識
の時代
5.9 問題の歴史的背景その2:進化的段階群の解体
5.10 問題の歴史的背景その3:分岐学理論の登場
5.11 問題の歴史的背景その4:分岐学理論のエッセンス
5.12 問題の歴史的背景その5:権威主義の横行と分子系統第一世代の
挑戦
5.13 問題の歴史的背景その6:分子系統第二世代の挑戦
5.14 分子系統第三世代の挑戦 ―― ミトゲノム全長配列による上位真
骨類系統の解明
第6章 条鰭類の大系統解明 ―― 全体像を4つに分けて示す
6.1 下位条鰭類
6.2 ニシン・骨鰾類
6.3 原棘鰭類(下位正真骨類)
6.4 上位(正)真骨類
第7章 スズキ類の大系統 ―― 混沌から見えてきたもの
7.1 スズキ類に対する3つのアプローチ
7.2 スズキ類論文で味わった挫折と再出発
7.3 スズキ類における10個の包括的単系統群
7.4 「ベラ亜目」の実体とオヴァレンタリアの発見
7.5 「トゲウオ目」の実体とヨウジウオ目の創設
7.6 フグの仲間のユニークな進化
7.7 ペラジアの発見と外洋における適応放散
第8章 新天地を求める魚たち、新天地に連れて行かれる魚たち
8.1 白亜紀末の深海魚から進化したペラジア
8.2 表層から深層へ―― 三変化する深海魚
8.3 ルアーを武器に深層へ
8.4 ウナギの祖先も深海魚
8.5 淡水魚の進化と大陸移動
8.6 シーラカンス2種の進化と大陸移動
第9章 魚の過去から現在・未来へ
9.1 悪夢の科研費不採択
9.2 窮余の策「環境DNA」
9.3 魚類環境DNAメタバーコーディングの技術開発
9.4 魚の過去から現在・未来へ
おわりに
参考文献
索引