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植物はなぜ自家受精をするのか

遺伝子から探る生物進化
植物はなぜ自家受精をするのか

四六判 170ページ 並製
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-7664-2299-3 C3345
奥付の初版発行年月:2017年08月 / 発売日:2017年08月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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在庫あり

内容紹介

▼自家受精は遺伝子が壊れて進化した!

ある植物は自家受精ばかり行ない、また別の植物は自家受精をかたくなに拒む。
このちがいは何なのか。
長年の論争に遺伝子解析から挑む。

▼遺伝子から解き明かす進化の最前線を紹介するシリーズ、第5弾!

いわば、「見境のない雄」と「誰でも受け入れる雌」はどちらが進化しやすいのかという問題である。花粉の数が胚珠の数を圧倒しているかぎりは、「見境のない雄」のほうが進化しやすい。これは動物でよく研究されてきた性選択の議論にとても近いものである。より配偶子の数の多いほうの性(多くの場合は雄)が、限られた交配相手をめぐって強い配偶者競争にさらされる。性選択というと、クジャクの飾り羽やカブトムシの角を思い浮かべるかもしれないが、じつは植物の自家和合性の進化とも関係しているのだ。(第2章より)

著者プロフィール

斎藤 成也(サイトウ ナルヤ)

1957年生まれ。テキサス大学ヒューストン校生物学医学大学院修了(Ph.D.)。現在は国立遺伝学研究所教授。おもな著書に『DNAから見た日本人』(ちくま新書)、『ゲノム進化学入門』(共立出版)、『Introduction to Evolutionary Genomics』(Springer)、『日本列島人の歴史』(岩波ジュニア新書)などがある。

塚谷 裕一(ツカヤ ヒロカズ)

1964年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。現職は東京大学大学院理学系研究科教授。岡崎統合バイオサイエンスセンターおよび放送大学客員教授も務める。おもな著書に、『漱石の白くない白百合』(文藝春秋)、『変わる植物学、広がる植物学』(東京大学出版会)、『スキマの植物図鑑』(中公新書)など。趣味は、植物に関するさまざまなこと、エッセイ書き、おいしいもの探索など。

高橋 淑子(タカハシ ヨシコ)

1960年生まれ。京都大学理学研究科生物物理学専攻(理学博士)。現在は京都大学大学院理学研究科生物科学専攻教授。おもな訳書に『ギルバート発生生物学』(監訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル出版)がある。趣味は歌(合唱)。大阪フィルハーモニー合唱団所属。

土松 隆志(ツチマツ タカシ)

1983年生まれ。2010年東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。博士(学術)。チューリッヒ大学博士研究員、グレゴール・メンデル研究所博士研究員、東京大学大学院総合文化研究科助教を経て、現在は千葉大学大学院理学研究院生物学研究部門准教授。専門は進化生物学、集団ゲノミクス。おもな著書に『エコゲノミクス-遺伝子からみた適応-』(分担執筆、共立出版)がある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

第1章 自家受精の研究をはじめるまで
 1.1 進化生態学の研究がしたい
 1.2 植物の性表現のモデルをつくる
 1.3 ウィーンでの出会いと転機

第2章 シロイヌナズナにおける自殖の進化
 2.1 チューリッヒへ
 2.2 自家不和合性とは
 2.3 シロイヌナズナにおける自家和合性の進化
 2.4 近縁種との掛け合わせ実験
 2.5 花粉側遺伝子SCR に見つかった逆位
 2.6 結果をどう解釈するか
 2.7 論文を書いてNature に受理されるまで
 2.8 Walter Fitch Prize に挑む

第3章 自殖の進化に見られる普遍性
 3.1 次なるターゲット
 3.2 倍数体植物のS 遺伝子座解析
 3.3 見えてきた進化のパターン
 3.4 自家和合性進化のシミュレーションモデル

第4章 シロイヌナズナ再び:自殖はいつ進化したのか
 4.1 突然のメール
 4.2 ウィーンへ
 4.3 やっかいな組換え体
 4.4 1001 ゲノム× S 遺伝子座
 4.5 フランスの自家不和合性オタクたち
 4.6 1,083 系統のS 遺伝子座の全貌が見えてきた
 4.7 S 遺伝子座崩壊の道筋を復元する
 4.8 「ネアンデルタール」シロイヌナズナ

第5章 残された問題
 5.1 解いたのは結局「歴史物語」だった
 5.2 自殖シンドロームの進化
 5.3 自殖は進化の袋小路か
 5.4 非自己認識型の自家不和合性システム

おわりに
参考文献
索引


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