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製造業実態調査から得た発展論理現代中国産業発展の研究

現代中国産業発展の研究 製造業実態調査から得た発展論理

A5判 352ページ 上製
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2317-4 C3033
奥付の初版発行年月:2016年03月 / 発売日:2016年03月中旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

▼中国はいかに産業発展をなし得たのか
 その論理を追究し社会科学的な説明を試みる

日本における中小企業研究の第一人者である著者は、2000年以降、その研究対象を中国へと向け、浙江省の製造業や、自転車産業を中心に、各地で詳細な産業実態調査を続けてきた。
 巨大な市場における激しい競争と、分業の広域化が形成されるなか、著しい経済発展を遂げた現代の中国と、高度成長期の日本には、ある種の共通性を見いだすことができる。
 日中両国で膨大な調査を行った著者が、その比較の視点から、中国産業発展の論理を追究する。

著者プロフィール

渡辺 幸男(ワタナベ ユキオ)

慶應義塾大学名誉教授。
1948年生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程経済学専攻単位取得退学、博士(経済学)。慶應義塾大学経済学部助手、助教授、教授を経て、2013年より名誉教授。
著書に『日本機械工業の社会的分業構造 ―― 階層構造・産業集積からの下請制把握』(有斐閣、1997年)、『大都市圏工業集積の実態 ―― 日本機械工業の社会的分業構造 実態分析編1』(慶應義塾大学出版会、1998年)、『産地解体からの再生 ―― 地域産業集積「燕」の新たなる道』(共著、中小企業研究センター編、同友館、2001年)、『産地縮小からの反攻 ―― 新潟県ニットメーカーの多元・多様な挑戦』(共著、中小企業研究センター編、同友館、2003年)、『巨大都市印刷業の新展開 ―― デジタル化の衝撃』(共著、中小企業研究センター編、同友館、2004年)、『東アジア自転車産業論 ―― 日中台における産業発展と分業の再編』(共編著、慶應義塾大学出版会、2009年)、『現代日本の産業集積研究 ―― 実態調査研究と論理的含意』(慶應義塾大学出版会、2011年)、『21世紀中小企業論 ―― 多様性と可能性を探る』〔第3版〕(共著、有斐閣、2013年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はじめに

序 章 中国産業発展研究での方法と課題
 第1節 (中国)産業発展を見る筆者の方法
 第2節 聴取り調査により明らかにされた中国の産業発展の特徴
 第3節 加藤弘之氏の「曖昧な制度」と社会科学的説明
 補 節 渡邉真理子氏による正統派経済学からのアプローチ

 〈第1部 温州製造業から見た中国の産業発展〉

第1章 紹興・温州製造業の実態調査での衝撃
 はじめに
 第1節 企業訪問聴取り調査と工場視察
 第2節 市内視察に関連して
 第3節 中国中小企業政策関連の課題

第2章 2000年代初頭の温州調査で見えたこと
 はじめに
 第1節 馬津竜氏による温州市産業の特徴
 第2節 仮説的フレームワークの提示と若干の検討
 第3節 温州企業の調査時点での到達水準
 補節1 温州での産業集積衰退事例の示唆
     ――旧場橋鎮羊毛衫産業を中心に
 補節2 垣間見えた温州人ネットワーク
     ―― 藩陽温州商会と藩陽の温州人企業での聴取り

第3章 温州の産業機械中小企業からの示唆
 はじめに
 第1節 聴取り対象産業機械メーカーの基本的属性
 第2節 産業機械メーカー創出の担い手としての創業者の出自
 第3節 創業者の出自と現在の主要製品とのずれ
 第4節 コピー商品の自社製品化における「開発」の存在とその内容
 第5節 開発における国有企業や集団所有制企業の技術者利用
 第6節 ユーザー層の特徴に対応して生き残る企業
 第7節 情報収集の場としての市場および展示会の重要性
 第8節 使用している工作機械は中古と新品の国産機械
 第9節 部品・部材調達
 第10節 労働者の出身地と賃金水準
 第11節 資金調達は自己資金中心
 第12節 競争の激しさと脱落企業の事例
 第13節 瑞安市での機械工業の革命前よりの継承の確認
 第14節 集団所有制企業での請負の意味
 第15節 小括

第4章 温州産業発展をどう見るべきか
 はじめに
 第1節 温州の産業発展の独自性の内容
 第2節 温州産業発展の独自性からの示唆
 補 節 事例の紹介とそれらが示唆するもの

補章1 日本の温州産業研究レビュー
 はじめに ―― 筆者の温州産業発展との衝撃的出会い
 第1節 日本の研究者が温州に注目する意義
 第2節 日本の研究者の温州への注目における諸視角
 第3節 小括

 〈第2部 自転車産業から見た中国の産業発展〉

第5章 自転車完成車メーカーの存立状況からの示唆
 はじめに
 第1節 中国自転車産業・電動自転車産業の概観
 第2節 完成車メーカーの存立状況が示唆するもの
 第3節 小括 ―― 完成車メーカーを中心に見た中国自転車産業の現状

第6章 自転車部品産業での高度な社会的分業
 はじめに
 第1節 事例の紹介
 第2節 自転車部品産業企業の事例が示唆すること
 第3節 小括 ―― 中国自転車部品産業の発展状況

第7章 自動車のEV化と中小企業
    ―― 日中のLEV産業の形成過程の差異
 はじめに
 第1節 既存文献・資料から見る、日本での(L)EV開発状況
 第2節 中国での(L)EV開発・商品化状況
 第3節 事例等が示唆する日中の差異とその意味

第8章 中国自転車産業・LEV産業の展開と垂直分裂化の論理
 第1節 中国自転車産業の垂直分裂型生産体制形成の意味
 第2節 LEV開発での日中の差異の意味
 第3節 第2部の議論の含意

 〈第3部 その他の中国産業発展事例〉

第9章 多様な主体の参入とその可能性
    ―― 2002年の湽博市調査から
 はじめに
 第1節 現場労働者の位置づけの違い
 第2節 技術のソース
 第3節 国有企業の可能性
 第4節 調査対象企業の多様性と共通性
 第5節 郷鎮企業にとっての合弁の意味
 第6節 村や鎮の意味
 補 節 旧国(市政府)所有企業の事例
     ―― 山東博山博泵科技股份有限公司の紹介

第10章 華南のステンレス製食器産地からの示唆
 はじめに
 第1節 現地企業にとっての日本市場
 第2節 産業集積の持つ集積の経済性の内容構成の燕市との異質性
 第3節 ハウスウエアの生産内容の特色とその示唆
 第4節 小括

補章2 激しい競争にいかに対応するか
    ―― 中国経営管理学会報告の分析と評論
 第1節 筆者の産業研究視点
 第2節 統一論題招聘報告からの示唆
 第3節 中国産業(研究)の独自性と可能性

 〈第4部 本格工業化としての中国の産業発展〉

第11章 産業論の論理的枠組みと中国産業発展・発展研究
     ―― 産業論研究の方法に関する覚書
 はじめに ―― 筆者の帰納的方法による産業論とは
 第1節 産業の形態・特徴と中国
 第2節 市場の状況と中国
 第3節 市場環境の特徴と現代の大陸市場である後発新興工業国、中国
 第4節 競争する企業群の独自性・意味と中国
 第5節 競争の諸形態の共存・特徴と中国
 第6節 小括 ―― 産業論での産業、市場、企業、競争、市場環境と中
     国

終 章 中国そして日本の産業発展から何が見えたか
 はじめに
 第1節 中国の経済発展の独自性としての既存の3つの見解
 第2節 中国経済発展要因としての中国産業の特徴
 第3節 中国経済・産業発展の独自性と対比しうる日本の経済・産業発
     展の独自性
 第4節 日中で異なる産業体系の形成をもたらした環境の差異
 第5節 まとめにかえて ―― 日中の産業発展から見えてきたこと

 あとがき
 主要参考文献・ウェブサイト
 索引


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