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資金移動取引の基礎理論独仏指図の法理論

独仏指図の法理論 資金移動取引の基礎理論

A5判 296ページ 上製
価格:8,140円 (消費税:740円)
ISBN978-4-7664-2358-7 C3032
奥付の初版発行年月:2016年08月 / 発売日:2016年08月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

▼「指図」とは一体何か?
ローマ法に淵源を有し独仏法に規定が置かれていながらも、
これらを母法とするわが国の民商法に
規定が存在していないとされる指図。
種々の資金移動取引の基礎理論と目され、
近年関心が高まっているドイツ・フランス法における
指図の理論的背景を解明する。

ローマ法を淵源とし、古くは手形小切手、信用状、昨今では振込やクレジットカードをはじめとした第三者を介する資金移動取引の基礎となっていると理解される指図理論。
近年注目を集めているにもかかわらず、わが国においては、いまだ未成熟の理論である。独仏法に規定を有していながら、これらを母法とするわが国の民商法に規定が置かれていないとされる指図とは、いかなる法理であるのか。

ヨーロッパ指図法の生成に重要な貢献を果たした二つの指図理論、ドイツ法の指図(Anweisung)、フランス法の指図(délégation)の沿革および学説の展開から、これらの背後にある理論的背景を明晰にし、現在の資金移動取引の基礎理論、ひいては私法学上の基礎法理として一般的指図理論の構築を希求する気鋭の研究書。

著者プロフィール

隅谷 史人(スミタニ フミト)

1985年生まれ。流通経済大学法学部講師。帝京大学法学部助教を経て現職。
慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(法学)(慶應義塾大学)。
専門は商法・金融法。
著書に、『民法とつながる商法総則・商行為法』(共著、商事法務、2013年)、『新・判例ハンドブック会社法』(共著、日本評論社、2014年)、『新・判例ハンドブック商法総則・商行為・手形法』(共著、日本評論社、2015年)他。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき

序 章
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 種々の資金移動取引と指図
 Ⅲ 民法(債権法)改正における議論 ―― 指図規定導入の要否
 Ⅳ 本書の目的


 第1部 ドイツ法における指図(Anweisung)

第1章 ローマ法由来の指図(delegatio)のドイツ法への継受
―― 原因関係上の既存債務からの独立を中心に
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ 近世における指図
  1 議論の出発点――Ulp.(27 ad ed.) D.46, 2, 11 pr.
  2 16世紀のデレガチオに関する学説
  3 デレガチオ(delegatio)とアシグナチオ(assignatio)
 Ⅲ 19世紀中葉までのドイツ普通法学説
  1 ケラー(Friedrich Ludwig Keller)の少数説
  2 19世紀中葉までの通説的見解
  3 マイアーフェルト(Franz Wilhelm Ludwig von Meyerfeld)の
  見解
  4 小 括
 Ⅳ 19世紀中葉以降のドイツ普通法学説
  1 ウンターホルツナー(Karl August Dominikus Unterholzner)
  2 テール(Heinrich Thöl)
  3 ファンゲロウ(Karl Adolf von Vangerow)
  4 ヴィントシャイト(Bernhard Windscheid)
  5 ザルピウス(Botho von Salpius)の影響
  6 小 括
 Ⅴ 現在のドイツ法におけるデレガチオの理解
  1 本章のまとめ
  2 「デレガチオ」という用語の多義性
  3 支払指図(delegatio solvendi)と義務設定指図(delegatio
  obligandi)
  4 能動指図(Aktivdelegation)と受動指図(Passivdelegation)
  5 学説彙纂46巻2章11法文序項の解釈
  6 無因指図(abstrakte Delegation)と指定指図(titulierte
  Delegation)

第2章 ドイツ法における指図(Anweisung)の歴史的展開
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ アシグナチオ(assignatio)の誕生
 Ⅲ 19世紀中葉までのドイツ普通法学説におけるアシグナチオの法的
 性質
  1 単一委任(einfaches Mandat)としてのアシグナチオ
  2 二重委任説(Lehre vom Doppelmandat)(旧通説)
 Ⅳ 二重委任説から授権説へ ―― ザルピウスの見解とその後
  1 ザルピウス(Botho von Salpius)の見解
  2 ザルピウス以後の学説の展開
 Ⅴ 小 括

第3章 ドイツ法における指図(Anweisung)立法の変遷
 Ⅰ はじめに 
 Ⅱ ドイツ民法典(BGB)以前
  1 プロイセン一般ラント法
  2 ヘッセン民法典草案
  3 バイエルン民法典草案
  4 ザクセン民法典
  5 ドレスデン草案
 Ⅲ ドイツ民法典(BGB)立法過程
  1 部分草案
  2 第一草案
  3 第二草案
 Ⅳ 小 括

第4章 ドイツ法における指図引受(Annahme der Anweisung)の受容
 Ⅰ はじめに 
 Ⅱ ザルピウス以前 ―― 手形引受(Wechselakzept)との関係
  1 ロイヒス(Johann Michael Leuchs)
  2 ギュンター(Carl Friedrich Günther)
  3 ジンテニス(Carl Friedrich Ferdinand Sintenis)
  4 テール(Heinrich Thöl)
  5 シュレージンガー(Rudolph Schlesinger)
  6 小 括
 Ⅲ ザルピウスおよびそれ以降 ―― デレガチオとの関係
  1 ザルピウス(Botho von Salpius)
  2 ファンゲロウ(Karl Adolf von Vangerow)
  3 デルンブルク(Heinrich Dernburg)
  4 ヴィントシャイト(Bernhard Windscheid)
  5 ヴェント(Otto Wendt)
 Ⅳ 小 括


 第2部 フランス法における指図(délégation)

第1章 フランス法における指図(délégation)の歴史的展開
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ フランス民法典成立前
  1 総 説
  2 ドマ(Jean Domat)の見解
  3 ポチエ(Robert-Joseph Pothier)の見解(Pandectae)
  4 ポチエ(Robert-Joseph Pothier)の見解(Traité)
  5 小 括
 Ⅲ フランス民法典成立とそれ以降
  1 フランス民法典の成立
  2 法典編纂後の学説 ―― 註釈学派(Ecole exégétique)
  3 註釈学派以後におけるパラダイムシフト
  4 20世紀中葉までの学説
 Ⅳ 小 括

第2章 フランス法およびドイツ法における指図の理論的接続
―― Art.1277 C. civ.の比較法的考察を中心に
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ デレガシオンとフランス民法典1277条の関係
  1 総 説
  2 デレガシオンと支払の指示の類似性
  3 デレガシオンと支払の指示との区別
  4 両者の効果的側面における差異
  5 小 括
 Ⅲ フランス民法典1277条の背景
  1 立法理由
  2 単なる指示の主要な利用形態 
  3 支払委託書(rescription)とアシグナチオ(assignatio)
  4 小 括
 Ⅳ ドイツ法とアシグナチオ
  1 総 説
  2 アシグナチオの沿革
  3 アシグナチオとアンヴァイズング
  4 小 括
 Ⅴ 未完成指図(delegatio inchoata)とフランス民法典1277条の解
 釈
 Ⅵ 小 括


第3章 ボアソナードの指図論
―― わが国における指図(délégation)の継受
 Ⅰ はじめに
 Ⅱ ボアソナードの指図論
  1 更改の種類としての指図規定
  2 債務者の交替による更改における二つの区別
  3 委任(mandat)としての指図
  4 フランス民法典1277条不採用の意味
  5 完全指図(délégation parfaite)・不完全指図(délégation
  imparfaite)
  6 完全指図における受取人の更改意思
  7 不完全指図における新旧債務者の義務
  8 完全指図における指図人の資力担保義務
  9 債権者の交替による更改
 Ⅲ 指図(嘱託)規定の削除
  1 梅謙次郎委員による指図規定の削除理由
  2 修正案511条(現行民法514条)の起草趣旨
  3 その後の学説
  4 わが国における指図理論の再発見
 Ⅳ 小 括

終 章

文献一覧
初出一覧 
あとがき 
索 引
 


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