南方熊楠 ――複眼の学問構想
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2362-4 C3039
奥付の初版発行年月:2016年12月 / 発売日:2016年12月下旬
【受賞】
第15回角川財団学芸賞。
選考委員: 鹿島茂先生、佐藤優先生、松岡正剛先生、山折哲雄先生
【書評】
『図書新聞』2017年6月3日(3305号)3面。評者: 唐澤太輔氏(龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員)。
『朝日新聞』2017年5月7日(読書面=11面)「ひもとく 南方熊楠 生誕150周年」。評者: 荒俣宏氏(京都国際マンガミュージアム館長)。
『毎日新聞』2017年4月30日(読書面=9面)「鼎談 南方熊楠生誕150年」。評者: 池澤夏樹氏(作家)、内田麻理香氏(サイエンスライター)、中島岳志氏(政治学者)。
『熊楠研究』第11号「書評」(p.195)。評者: 奥山直司氏。
▼学者熊楠、誕生の軌跡
アメリカ、キューバ、ロンドン、那智――。
世界各地を自ら踏破し、古今東西の膨大な時空に拡がる文献を駆使して、
Nature やNotes and Queries に400篇近い英文論考を発表。
西欧の知的潮流に正面から向き合い、独創的な知を紡いだ学者南方熊楠の
多様性と集束力の織り成すダイナミズムを精緻に描く労作。
松居 竜五(マツイ リュウゴ)
1964年、京都府生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。論文博士(学術)。東京大学教養学部留学生担当講師、ケンブリッジ大学客員研究員等を経て、現在、龍谷大学国際学部教授。南方熊楠顕彰会理事、日本国際文化学会常任理事、熊楠関西研究会事務局。
著書に『南方熊楠 一切智の夢』(朝日新聞社)、『達人たちの大英博物館』(共著、講談社選書メチエ)、『南方熊楠大事典』(共編共著、勉誠出版)など、訳書に『南方熊楠英文論考[ネイチャー]誌篇』(共訳、集英社)、『南方熊楠英文論考[ノーツ アンド クエリーズ]誌篇』(共訳、集英社)がある。
目次
序
1 南方熊楠研究の変遷
2 『南方熊楠 一切智の夢』における分析
3 南方熊楠邸資料調査と研究の進展
4 本書『南方熊楠 ―― 複眼の学問構想』の位置づけ
凡例
Ⅰ 教養の基盤としての東アジア博物学
1 幼少期に親しんだ和漢の書籍
2 『和漢三才図会』との出会い
3 『和漢三才図会』と東アジアの博物学
4 フォークロアとしての東アジア博物学
5 アメリカ・英国時代の熊楠と和漢書
6 東アジアの科学に向ける視線
7 英文論考における『和漢三才図会』の活用
8 『和漢三才図会』から「十二支考」へ
9 「十二支考」における博物学思考
10 東アジア博物学と「十二支考」
Ⅱ 西洋科学との出会い
1 鳥山啓の影響
2 自作の教科書「動物学」
3 「動物学」の四つの稿の比較
4 動物の分類法に関して
5 「動物学」における博物誌的記述について
6 和歌山中学卒業から東京遊学へ
Ⅲ 進化論と同時代の国際情勢
1 東京での生活
2 東京大学予備門での学修
3 進化論への傾倒
4 モースの跡を追って
5 東アジア情勢を見る目
6 『佳人之奇遇』に受けた影響
7 予備門の退学と和歌山での静養
8 アメリカ行きの決断
Ⅳ アメリカにおける一東洋人として
1 サンフランシスコ到着とビジネス・カレッジ入学
2 日本人福音会
3 ランシングでの農学校時代
4 「人種」に対する視線
5 「予はのち日本の民たるの意なし」
6 アナーバーでの学問生活
7 ミシガン大学博物館とスティア
8 アマチュア博物学者カルキンスとの交流
9 ジャクソンヴィルの中国人社会とのつきあい
10 フロリダ南部・キューバへの旅
11 江聖聡との友情
12 その後の江聖聡
Ⅴ ハーバート・スペンサーと若き日の学問構想
1 アメリカ時代の進化論受容
2 ウォレスをめぐる議論
3 ハーバート・スペンサーの影響
4 日本におけるスペンサー受容と熊楠
5 トーテミズムに関する書き込み
6 『社会学研究』への書き込み
7 『社会学原理』の読解と英文論考への応用
8 記述社会学から「ロンドン抜書」へ
9 『第一原理』とその問題点
10 熊楠によるスペンサー批判の変遷
Ⅵ 「東洋の星座」と英文論考の発表
1 ロンドンでの生活環境
2 一八九三年秋の二つの出会い
3 「東洋の星座」の執筆過程
4 中国・インドの星座比較
5 「東洋の星座」の立論の甘さとその自覚
6 「東洋の星座」の可能性
7 「東洋の星座」の反響
8 『マンチェスター・タイムズ』での熊楠紹介
9 「拇印考」とその反響
10 熊楠の英文執筆とアーサー・モリスン
Ⅶ 「ロンドン抜書」の世界
1 大英博物館図書室での抜書開始
2 「ロンドン抜書」の体裁
3 筆写文献の言語別・内容別分類
4 「ロンドン抜書」見返しに見られる文献の分類
5 「ロンドン抜書」における人類学構想
6 ムーラ『カンボジア王国』の筆写
7 ヨーロッパと日本の文化衝突・交流
8 航海・旅行記集成の活用
9 ハクルート叢書
10 ユールの東西交渉史研究
11 時間的・空間的に拡がる旅行記の採取
12 「異文化接触」と旅行記
13 「セクソロジー」への傾倒
14 ヴィクトリア時代の社会と性に対する規制
15 「ロンドン抜書」と「ロンドン私記」
Ⅷ フォークロア研究における伝播説と独立発生説
1 「マンドレイク」と「さまよえるユダヤ人」
2 大英博物館での文献収集による増補
3 ヨーロッパにおける伝播説の台頭
4 熊楠による比較説話研究の展開
5 マンドレイクと商陸の類似についての結論
6 「さまよえるユダヤ人」に関する熊楠自身の評価の揺れ
7 帰国後の伝播説に関する論文
8 「燕石考」における共感理論
Ⅸ 「南方マンダラ」の形成
1 書簡による土宜法龍との対話
2 シカゴにおける万国宗教会議
3 因果律の説明としての「事の学」
4 科学から真言密教へ
5 曼陀羅に関する法龍からの教示
6 華厳経の影響
7 粘菌とマンダラ
8 因果の交錯としての宇宙
9 「やりあて」と異常心理
10 マンダラからエコロジーへ
Ⅹ 「十二支考」の誕生
1 帰国後の研究環境
2 ディキンズとの共同作業による日本文学の翻訳
3 『ノーツ・アンド・クエリーズ』への投稿
4 「ロンドン抜書」調査の再開
5 柳田国男との協力
6 熊楠的文体の誕生
7 「十二支考」虎の回における方法論
8 高木敏雄宛書簡と「十二支考」への助走
9 「腹稿」による論理の組み立て
10 「十二支考」と熊楠の学問世界
終 章 複眼の学問構想
1 従来の学問分野と南方熊楠
2 「萃点」へと迫る複眼思考
3 南方熊楠の学問構想がもたらすもの
あとがき
初出一覧
注
参考文献
南方熊楠顕彰館蔵書中のハーバート・スペンサー著作への書き込み
「ロンドン抜書」目録
欧文人名索引
人名・事項索引