未遂犯と実行の着手
価格:7,150円 (消費税:650円)
ISBN978-4-7664-2379-2 C3032
奥付の初版発行年月:2016年10月 / 発売日:2016年10月下旬
▼刑法理論の根幹にかかわる問題に真正面から挑む。
未遂犯の処罰根拠論および実行の着手論に関する日本・ドイツの議論を比較して、我が国解釈論の深化を試みる。未遂犯の主たる処罰根拠を行為の規範違反性に求めつつ、客観的危険性の観点からその処罰範囲を制約する方向での理論構成を探る、気鋭かつ精緻な理論研究!
佐藤 拓磨(サトウ タクマ)
1977年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。専攻は、刑法。
慶應義塾大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科前期博士課程修了、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。
本書収録の論文のほか、「早すぎた構成要件実現について」法学政治学論究63号、「量的過剰について」法学研究84巻9号、「詐欺罪における占有」井田良ほか編『川端博先生古稀記念論文集 下巻』(成文堂、2014年)、「ドイツにおける自殺関与の一部可罰化をめぐる議論の動向」慶應法学31号など。
目次
はじめに
序 章 未遂犯と具体的危険犯
第1節 「未遂犯=具体的危険犯」モデルの問題点
第2節 ドイツの状況
第1款 未遂犯の処罰根拠をめぐる議論
(1) 現行法の未遂に関する規定の内容
(2) 現行法下における未遂犯の処罰根拠論
(3) 現行規定の成立に至るまでの経緯
(4) 小 括
第2款 具体的危険犯における危険概念をめぐる議論
第3款 小 括
第3節 本書の構想
第1款 未遂犯の本質としての規範違反
第2款 客観的基準による処罰範囲の制約の必要性
(1) 歴史的事情
(2) 不能未遂に関する減免規定の不存在
(3) 結 論
第2章 不能犯論
第1節 はじめに
第2節 具体的危険説の検討
第1款 具体的危機説の内容および論拠
第2款 具体的危機説に対する批判
第3款 検 討
(1) 危険判断の資料について
(2) 危険判断の基準について
第4款 小 括
第3節 客観的危険説の検討
第1款 絶対的不能・相対的不能説とその問題点
第2款 客観的危険説の諸相
(1) 事実の抽象化を行わない見解
(2) 事実の抽象化を行う見解
(3) 修正された客観的危険説
第3款 小 括
第4節 私 見
第1款 起点としての規範違反行為
第2款 未遂犯における「結果」の意義
第3款 危険判断の方法
第4款 判例の事案へのあてはめ
(1) 客体の不能の例
(2) 方法の不能の例
第5節 結びにかえて
第3章 実行の着手と行為者主観
第1節 問題の位置づけ
第2節 故意をめぐる問題
第1款 問題状況の整理
第2款 行為の危険性と故意
第3款 故意を考慮する見解の再検討
第3節 計画をめぐる問題
第4節 結びにかえて
第4章 実行の着手の判断基準
第1節 はじめに
第2節 我が国の状況
第1款 学 説
第2款 判 例
(1) 放火罪
(2) 強姦罪
(3) 殺人罪
(4) 窃盗罪
(5) 詐欺罪
(6) その他の刑法典上の犯罪
(7) 特別法上の輸入罪等
第3款 小 括
第3節 ドイツの状況
第1款 現行の未遂の概念規定
第2款 1969年改正前の判例
(1) ライヒ裁判所の判例
(2) 連邦通常裁判所の判例
(3) 小 括
第3款 現行法下での判例
(1) 総 説
(2) 個別の犯罪における未遂の成立時期
第4節 日独の比較
第5節 実行の着手の基準
第1款 構成要件的制約の要否
第2款 直前性(密接性)の判断基準の整理
第3款 検 討
(1) 必要不可欠性の基準
(2) 被害者領域への介入の基準
(3) 時間的場所的近接性と中間行為の不存在性の関係
(4) 中間行為の不存在性を判断する際に考慮すべき事情
第4款 まとめ
第6節 結 語
第5章 間接正犯の実行の着手
第1節 我が国の議論状況
第2節 ドイツの議論状況
第1款 学 説
(1) 概 観
(2) 個別解決説
(3) 全体解決説その1 ―― 行為帰属論
(4) 行為帰属論の問題点
(5) 全体解決説その2 ―― 未遂犯固有の議論から基準を導く
見解
(6) 中間説
第2款 判 例
第3款 ドイツの議論状況のまとめ
第3節 検討
第4節 私見に対する批判
第5節 結 語
おわりに
文献一覧
初出一覧
あとがき
判例索引