幕府海軍の興亡 幕末期における日本の海軍建設
価格:7,150円 (消費税:650円)
ISBN978-4-7664-2421-8 C3021
奥付の初版発行年月:2017年05月 / 発売日:2017年05月下旬
▼近代海軍の端緒、その13年の航跡を辿る!
軍事組織としての活動実態を、実証的に明らかにする力作。
本書は、幕末期に江戸幕府が創設した近代海軍、いわゆる幕府海軍の実態を解明するものである。
明治期以降に偏重していたこれまでの海軍研究とは一線を画し、本書では幕末期の海軍建設と、明治海軍との連続性、非連続性に焦点を当てる。
伊勢の豪商竹川竹斎、幕臣勝麟太郎(海舟)ら近世日本人の海軍認識、咸臨丸米国派遣の成果と課題、艦船運用や経費執行の状況、人事システムの構築、第二次幕長戦争における戦闘の様相、明治政府への移管など、幕府海軍の軍事組織としての活動実態を、広範な史料を駆使して明らかにする。
金澤 裕之(カナザワ ヒロユキ)
1977年東京都生まれ。防衛省防衛研究所戦史研究センター所員。
防衛大学校総合安全保障学研究科後期課程修了。博士(安全保障学)。
慶應義塾大学文学部、同大学院文学研究科で日本史を専攻した後、海上自衛隊に入隊。
機動施設隊施設隊長、海上幕僚監部施設課員などを経て、現職。
本書所収外の論文に「海軍史料の保存と管理」(『波涛』213号、2011年3月)など。
目次
序 章 近世日本の海軍力に関する諸問題
はじめに
1 海軍と水軍
2 研究史における問題点
3 本書の構成と各章の課題
4 史 料
第一章 近世日本人の海軍認識――竹川竹斎「護国論」を中心に――
はじめに
1 竹川竹斎について
2 「護国論」における洋式軍艦導入の主張
3 海運への視点と海軍建設の方法
4 「護国後論」と「老翁ノ勇言」
5 竹斎の海軍論の特徴
おわりに
第二章 幕臣勝麟太郎の海軍論――嘉永六年海防建白書を中心に――
はじめに
1 勝の血縁と周辺
2 蘭学者としての経歴
(1) 洋学修行と洋式砲術への志向
(2) 豪商層との交際
3 海防建白書と幕吏登用
(1) 嘉永六年の海防建白書
(2) 摂海・伊勢警衛論
4 長崎海軍伝習
おわりに
第三章 安政期の海軍建設と咸臨丸米国派遣
――訓練から実働への転換――
はじめに
1 軍艦操練所の創設
2 派遣の経緯
3 太平洋横断
4 長崎海軍伝習の実態
5 米海軍の見聞とその後の影響
おわりに
第四章 万延・文久期の海軍建設――艦船・人事・経費――
はじめに
1 艦船の運用状況
(1) 警備・警察
(2) 輸 送
(3) その他
2 士官・吏員の任用状況
3 要員確保の試みと文久の改革
(1) 要員確保の試み
(2) 文久の改革における人事施策
4 経 費
おわりに
第五章 文久期の海軍運用構想
はじめに
1 江戸内海防備体制と海上軍事力
2 文久の改革における海軍建設計画
3 海軍士官による海防計画の策定
(1) 小野友五郎の「江都海防真論」
(2) 勝麟太郎の摂海防備論と「一大共有之海局」構想
4 海軍運用能力の実態
5 政治・外交部門の海軍力利用への志向
おわりに
第六章 元治・慶応期の海軍建設と第二次幕長戦争
はじめに
1 文久三年九月以降の軍艦方人事
2 勝麟太郎主導下の海軍行政
(1) 艦船取得
(2) 給炭機能の確保
(3) 神戸海軍操練所
3 第二次幕長戦争への投入
(1) 大島口の戦い
(2) 小倉口の戦い
おわりに
第七章 慶応の改革と幕府海軍の解体
はじめに
1 慶応の改革における海軍建設
2 鳥羽・伏見の戦い
3 幕府海軍の解体
(1) 鳥羽・伏見の戦い後の人事と海軍方の分裂
(2) 新政府への移管
おわりに
終 章
付録1 幕府海軍の艦船所有状況
付録2 幕府海軍人事の推移
付録3 幕府海軍関係年表
参考文献リスト
あとがき
索 引