総合研究 現代日本経済分析 第Ⅱ期
歴史としての大衆消費社会 高度成長とは何だったのか?
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2447-8 C3333
奥付の初版発行年月:2017年08月 / 発売日:2017年08月中旬
▼戦後70年、高度成長の「呪縛」を乗り越え、日本再構築に向けた針路を示す!
敗戦の瓦礫のなか、日本は生活文化の全面的な西洋化・アメリカ化を「さしあたって」決意した。大衆消費社会、分厚い中間層と高度成長はそこから生まれ、その後の経済停滞はこうした歴史理解の取り違えから生じた。
そして現在、われわれの生活文化感覚は着実に伝統回帰しつつある。21世紀日本のあり方を考えるには、鎌倉時代に始まり江戸時代に完成した日本伝統の資本主義が育んだ文化と精神を再評価し、1000年の歴史のなかで戦後70年の意味を問い直さなければならない。
寺西 重郎(テラニシ ジュウロウ)
一橋大学名誉教授
1965年一橋大学経済学部卒業、70年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、83年経済学博士(一橋大学)。1970年一橋大学経済研究所専任講師、73年助教授を経て84年教授、2004年名誉教授。この間、1976~78年イェール大学客員教授、85~86年オーストラリア国立大学客員教授。2006年より日本大学大学院商学研究科教授などを経て、2015年より一橋大学経済研究所非常勤研究員。
主著に、『経済行動と宗教――日本経済システムの誕生』(勁草書房、2014年)、『戦前期日本の金融システム』(岩波書店、2011年)、Evolution of the Economic System in Japan(Edward Elgar, 2005)、『日本の経済システム』(岩波書店、2003年)、『経済開発と途上国債務』(東京大学出版会、1995年)、『工業化と金融システム』(東洋経済新報社、1991年)、『日本の経済発展と金融』(岩波書店、1982年)、などがある。
目次
第1章 本書の目的
通説への懐疑と対立仮説/二つの消費社会/二段階の近代化/限定合
理性/分厚い中間層と大衆/その後の消費社会
第2章 消費の社会的枠組み
1 生活様式としての消費
2 消費の社会的枠組みの形成過程
2.1 第一段階:自己保存と承認をめぐる闘争
2.2 第二段階:宗教の変化と他者関係
2.3 第三段階:市場の拡大
3 日本の経済行動における儒教の影響
3.1 近世の通俗道徳
3.2 経済行動における仏教的要素と儒教的要素
4 限定合理性
第3章 二つの消費経済社会
1 近代以降の二つの消費経済社会
2 消費行動の不変性
3 近代化と生活様式の変化
3.1 和魂洋才と生活様式
3.2 近代化と生活様式の不変性
3.3 生活様式の根源性
第4章 近代化戦略における戦前・戦後
1 二段階の近代化
2 戦前の近代化
2.1 在来産業と発展戦略
2.2 戦前における中流階級・新中間層および大衆
2.3 供給サイド:在来生産における質変動への対応
2.4 消費需要における新しい価値の発見
2.5 戦前的戦略の欠陥
3 戦争と敗戦から戦後へ
3.1 近代的耐久消費財生産の1955年以降の急増
3.2 国体論における顕教・密教説
3.3 近代化環境への適応としての消費パターンの変化
4 日本の経済システムの捉え方
第5章 大衆消費社会の出現と衰亡
1 大衆の出現とその特質
1.1 中流意識の生成
1.2 中間層の大衆性
2 所得分配の平等化と身分格差
2.1 高度成長期経済システムの3側面
2.2 ブルーカラーのホワイトカラー化
3 所得分配、身分の平等化と大衆の出現
4 高度成長とは何であったか
4.1 高度成長のメカニズム
4.2 準拠軸の喪失と若者たち
4.3 日本型経済システム論の隆盛
4.4 管理社会化
4.5 株主vs 銀行 vs 経営者
4.6 日本と欧米の戦後における所得分配
第6章 消費社会の今後
1 1980年代以降の消費社会の伝統回帰
1.1 ポスト・モダン消費文化論
1.2 消費財の需給構造の変化
1.3 他者関係の伝統回帰
1.4 伝統回帰の持続可能性
2 消費不況と日本経済
第7章 結語 高度成長の呪縛を越えて
自己実現志向的な個人からなる社会/身近なグローバリズム/消費者の
視点からのものづくり
あとがき
参考文献
索 引