バルトーク 音楽のプリミティヴィズム
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2472-0 C3073
奥付の初版発行年月:2017年09月 / 発売日:2017年09月中旬
農民音楽からモダニズムへ
▼西洋音楽に多大な影響を与えた作曲家バルトーク・ベーラ(1881—1945)は、ハンガリーでは、自国の民謡を採集・研究した「文化英雄」とされている。
▼本書では、バルトークの創作における、モダニスト作曲家としての一面と、文化ナショナリズムの一面とが、どのような関わりをもっていたのかを分析し、バルトークの作品様式にも同じ二面性があらわれていることを論証する。
そして彼が、民俗音楽の「プリミティヴィズム」を取り込むことで、自らの芸術性を拡大していったさまを、豊富な譜例をもとに明らかにしていく。
太田 峰夫(オオタ ミネオ)
1969年生まれ。1996年に東京大学大学院人文科学研究科修士課程を修了後、ハンガリー政府奨学生としてブダペストに留学。2009年に東京大学大学院人文社会研究科博士課程を修了。博士(文学)。2013年より宮城学院女子大学音楽科准教授。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 論
Ⅰ
第一章 民俗音楽の「精神」を求めて――バルトークの文化ナショナリズムとモダニズム
一 バルトークと民俗音楽の「精神」
二 ハンガリーの文化ナショナリズムと「民俗藝術」の流行
三 チャートの音楽批評と「民謡の精神」
四 アディによるハンガリーの文化アイデンティティの捉え返し
五 新しい「ハンガリーの音楽」のナショナリズム
第二章 音楽のナショナリズムからプリミティヴィズムへ――バルトークと一九一〇年前後のフランス音楽
一 バルトークにおける「プリミティヴ」なるものの位置づけ
二 ハンガリーの文化ナショナリズム運動と「原初的なもの」
三 プリミティヴな民俗音楽への関心の高まり
四 一九一〇年代初頭のパリにおけるバルトークの音楽の受容
五 比較項としてのストラヴィンスキーの役割
II
第三章 イデオロギーとしての「農民音楽」――バルトークの民謡研究と近代的な藝術観
一 一九一〇年代のハンガリーの藝術批評における「農民(paraszt)」の位置づけ
二 バルトークの民謡研究の方法論
三 民謡研究と近代的な藝術観とのかかわり
四 バルトークの民謡研究の問題点
五 「変形」説の同時代における受容
第四章 音楽史の中の「農民音楽」――ストラテジーの複合性
一 バルトークの「国民楽派」批判
二 理想像としてのバッハとウィーン古典派
三 バルトークと一九世紀ドイツ音楽との間の距離
四 ナショナリズムとインターナショナリズムのはざまで
第五章 クライマックスのストラテジー――バルトークの器楽曲をめぐって
一 同時代の批評家たちからみたバルトークの音楽様式
二 バルトークの音楽の様式的特徴と「ハンガリー的な頂点」のストラ
テジー
三 「ハンガリー的な頂点」の音楽史的背景
四 クライマックスのストラテジーと音楽のプリミティヴィズム
III
第六章 民謡研究者バルトークの用語法――音楽構造の解釈の歴史性
一 バルトークにおける「ペリオーデ」の概念とその起源
二 「ペリオーデ」概念に対するバルトークの態度の変化
三 用語法の変化と比較音楽学の影響
四 用語法の変化と創作活動との関係
第七章 プリミティヴィズムの新たな展開――ストラヴィンスキーの新古典主義と一九二六年のバルトーク
一 ストラヴィンスキーの新古典主義に対する当初の反応
二 トートとモルナールのストラヴィンスキー批判
三 ストラヴィンスキー批判としての《ピアノ協奏曲第一番》
四 ストラヴィンスキーの新古典主義に対する評価の変遷
五 「感傷性のなさ」にむかって
結 語
あとがき
註
参考文献一覧
索引