源氏物語の政治と人間
価格:9,350円 (消費税:850円)
ISBN978-4-7664-2473-7 C3095
奥付の初版発行年月:2017年09月 / 発売日:2017年09月下旬
▼世界文学『源氏物語』。
古代から現代に到るまで、無数の人々を惹きつけてきたこの物語を四つの視角から読み解き、緻密極まりないその構造を明らかにする。
『源氏物語』研究における〈政治の季節〉を牽引してきた著者の、物語読解へのあらたな挑戦を集成する、待望久しい論文集。
田坂 憲二(タサカ ケンジ)
昭和27年生まれ。九州大学文学部卒業、同大学院修了。博士(文学)。
現在、慶應義塾大学文学部教授。国文学専攻。
主な著書に、『源氏物語の人物と構想』(和泉書院、平成5年)、『大学図書館の挑戦』(和泉書院、平成18年)、『文学全集の黄金時代-河出書房の1960年代-』(和泉書院、平成19年)、『源氏物語享受史論考』(風間書房、平成21年)、『源氏物語古注集成 18 紫明抄』(おうふう、平成26年)、『名書旧蹟』(日本古書通信社、平成27年)、などがある。
目次
序に代えて
政治の季節のその後
一 冷泉朝下の光源氏
――太政大臣と後宮の問題をめぐって――
はじめに
一 『源氏物語』の太政大臣
二 歴史上の太政大臣
三 太政大臣の就任と退任
四 王朝の強化と後宮の役割
五 光源氏と道長に共通するもの
おわりに
二 冷泉朝の始発をめぐって
――貞観八年の影――
はじめに
一 六十三歳の摂政――貞観八年の影――
二 藤原基経と頭中将――貞観八年のもう一つの影――
三 藤原時平と柏木――三代にわたる重層構造――
四 源融と光源氏――皇位継承の可能性――
五 忠仁公の影の払拭――上塗りされた藤原頼忠像――
おわりに
三 女三宮と柏木
――造型・主題・史的背景
はじめに
一 女三宮の降嫁が招来するもの
二 女三宮の人物像と主題との関係
三 柏木と紅海――第一部から第二部へ――
四 柏木の恋と太政大臣家の立場
五 太政大臣となり隠棲すること――解釈の異見――
六 柏木と夕霧――六条院体制の侵犯者――
七 史実の藤原摂関家と致仕太政大臣家
おわりに
四 『源氏物語』における摂政・関白と大臣
はじめに
一 太政大臣について
二 左大臣・右大臣について
三 内大臣について
四 摂政・関白について
おわりに
編年体と列伝体
五 『源氏物語』の編年体的考察
――光源氏誕生前後――
はじめに
一 記述の方針と歴代王朝の概観
二 前四〇年代・前三〇年代
三 前二〇年まで
四 前一〇年まで
五 光源氏誕生前年まで
六 光源氏誕生以後
おわりに
六 『源氏物語』の列伝体的考察
――頭中将の前半生――
はじめに
一 三条左大臣の誕生から結婚まで
二 頭中将・葵の上の誕生の頃
三 二条右大臣家の状況
四 頭中将の結婚とその前後
五 青年期の頭中将の官職
六 二条右大臣家と頭中将
おわりに
七 『源氏物語』前史
――登場人物年齢一覧作成の可能性――
はじめに
一 登場人物年齢一覧表に向けて
二 有史以前の大臣たち
三 天皇家をめぐる状況
四 両統迭立の問題
おわりに
年齢一覧表
作品を形成するもの
八 大宰府への道のり
――『源氏物語』と『高遠集』から――
はじめに
一 大宰府への陸路
二 『源氏物語』の大宰の大弐
三 『源氏物語』の大島は筑前か
四 『大弐高遠集』に見る大宰府往還時の地名
おわりに
九 竹河巻紫式部自作説存疑
はじめに
一 竹河巻別筆説の終息
二 今井竹河論の重要性
三 竹河巻所収歌と『紫式部集』歌
四 左大臣をめぐる問題
五 太政大臣にて位を極むべし
六 尚侍という呼称
おわりに
十 『蒙求和歌』と『源氏物語』
はじめに
一 「董永自売」と帚木
二 「西施捧心」と夕顔
三 「蔣詡三径」「原憲桑枢」と蓬生
四 「樊会排闥」「漂母進食」と花散里
おわりに
近代における享受と研究
十一 桐壺院の年齢
――与謝野晶子の「二十歳」「三十歳」説をめぐって――
はじめに
一 与謝野晶子の桐壺院の年齢推定
二 一院・先帝・桐壺院
三 「二十歳」か「三十歳」か
おわりに
十二 『校異源氏物語』成立前後のこと
はじめに
一 『校異源氏物語』底本の変更
二 松屋百貨店の展示
三 谷崎源氏の成功
四 谷崎源氏の月報と校異源氏の予告
五 『校異源氏物語』の刊行
おわりに
十三 『源氏物語』と『日本文学全集』
――戦後『源氏物語』享受史一面――
はじめに
一 谷崎源氏・舟橋源氏など
二 『日本国民文学全集』の主張
三 古典から近代までの『日本文学全集』
四 『国民の文学』の変質
五 与謝野源氏の決定版――豪華版『日本文学全集』――
六 最後の光芒――カラー版『日本文学全集』――
七 古典の消滅――グリーン版『日本文学全集』――
おわりに
初出一覧
あとがき
索引