失踪の社会学 親密性と責任をめぐる試論
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-7664-2481-2 C3036
奥付の初版発行年月:2017年10月 / 発売日:2017年10月中旬
日本社会病理学会学術奨励賞(出版奨励賞)を受賞しました。
日本社会学会第17回奨励賞を受賞しました。
▼あなたは、
なぜ、
そこにいるのか
失踪とは何か。
その不条理さ、不可解さ、やりきれなさは、何に由来するのか。
現在でも日本国内で年間に数千件規模のペースで生じている
隠れた社会問題、失踪――。
失踪が惹起する実存的な問いを突きつめ、
あなたや私がそこにいる、という
一見自明の事態を根底から見つめなおす、気鋭の力作。
中森 弘樹(ナカモリ ヒロキ)
1985年生まれ。2015年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(人間・環境学)。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)、京都大学・立命館大学・京都造形芸術大学非常勤講師。著作に、「網野善彦――『無縁』の否定を超えて」(大澤真幸編『3・11後の思想家25 別冊大澤真幸 THINKING「O」』左右社、2012年)、「失踪者家族の悲嘆」(髙木慶子・山本佳世子編『悲嘆の中にある人に心を寄せて――人は悲しみとどう向かい合っていくのか』上智大学出版、2014年)などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
I いま、失踪を問う意味
第1章 なぜ私たちは「親密な関係」から離脱しないのか
1 自殺について
2 「無縁」のイメージの変容
3 「純粋な関係」の出現と、親密性の変容
4 「親密な関係」からの離脱に対する抵抗感の根拠(リスク・愛・外
的基準)
5 失踪の社会学へ
第2章 失踪の実態はどこまで把握可能か
1 諸概念の整理(失踪・家出・蒸発・行方不明)
2 失踪の件数と内訳
3 失踪発生後の一般的な流れ
4 「現代的な問題」としての失踪?
Ⅱ 失踪の言説史
第3章 失踪言説の歴史社会学――戦後から現在までの雑誌記事分析
1 失踪言説の分析は何を語るのか
2 失踪言説の戦後史――「家出娘」と「蒸発妻」
3 失踪言説の背後にあるもの①――家族の戦後体制
4 失踪言説の現代史
5 失踪言説の背後にあるもの②――個人化
6 雑誌記事における失踪批判の論点
Ⅲ 当事者の語る失踪
第4章 失踪者の家族社会学
1 失踪の当事者の研究へ
2 「社会的死」と「曖昧な喪失」
3 研究の方法――失踪者の家族へのインタビュー
4 さまざまな失踪のかたち
5 失踪者の家族たちの特殊な経験
6 失踪者はなぜ失踪してはいけなかったのか
第5章 失踪者の家族をいかにして支援すべきか――MPSの取り組みから
1 「曖昧な喪失」理論の問題点
2 研究の方法――支援団体に対するケーススタディ
3 MPSのプロフィール
4 情報提供者としてのMPSスタッフの語り
5 情報提供者がなしうるケアとは何か
6 共に物語を作るという可能性
7 失踪に対する筆者の立場
第6章 失踪者のライフストーリー
1 失踪者本人への問い
2 先行研究の検討(家出・蒸発・runaway・ホームレス)
3 研究の方法――失踪者のライフストーリーを聞く
4 〈失踪〉経験者のライフストーリー①――家族からの離脱と応答の
拒否
5 〈失踪〉経験者のライフストーリー②――自殺未遂から失踪へ
補論 〈失踪〉経験者のライフストーリー③――職場からの〈失踪〉
Ⅳ 「親密な関係」に繋ぎとめるもの
第7章 親密なる者への責任
1 責任という問いへ
2 本書における責任の定義
3 責任の「行為-因果モデル」
4 責任の「傷つきやすさを避けるモデル」
5 「親密な関係」と責任の倫理
第8章 現代社会と責任の倫理
1 「親密なる者への責任」の重要性の高まり
2 「神隠し」と〈逃がし〉の論理
3 自己責任論と親密圏の過負荷
終 章 行為としての〈失踪〉の可能性
1 〈失踪〉を実行させたもの
2 〈失踪〉は自殺の代わりになるのか
3 第三者からの承認であることの効用
註
参考文献
あとがき
初出一覧
索引