仮釈放の理論 ――矯正・保護の連携と再犯防止
価格:5,720円 (消費税:520円)
ISBN978-4-7664-2485-0 C3032
奥付の初版発行年月:2017年12月 / 発売日:2017年12月中旬
仮釈放から自由刑のあり方を考える。
仮釈放の原理や正当化根拠に立ち返り,仮釈放や保護観察の制度を理論的に考察。
科学的検証のない政策に十分な効果は期待できないが,原理原則のない政策は無軌道となる。
将来に亘って妥当性を有する仮釈放制度の理論的支柱を構築する。
太田 達也(オオタ タツヤ)
1964 年生まれ。慶應義塾大学法学部教授。博士(法学)。
日本被害者学会理事長,日本更生保護学会理事,最高検察庁刑事政策専門委員会参与,法務省矯正局矯正に関する政策研究会委員,法務省法務総合研究所研究評価検討委員会委員,同犯罪白書研究会委員,一般財団法人日本刑事政策研究会理事,更生保護法人日本更生保護協会評議員,公益財団法人アジア刑政財団理事,公益社団法人被害者支援都民センター理事などを務める。
編著書として,『Victims and Criminal Justice: Asian Perspective(被害者と刑事司法―アジアの展望)』(編著,慶應義塾大学法学研究会,2003),『高齢犯罪者の特性と犯罪要因に関する調査』(共著,警察庁警察政策研究センター,2013),『いま死刑制度を考える』(共編著,慶應義塾大学出版会,2014),『刑の一部執行猶予―犯罪者の改善更生と再犯防止』(慶應義塾大学出版会,2014),『リーディングス刑事政策』(共編著,法律文化社,2016)ほか。
目次
はしがき
第1編 仮釈放の基本理念と法的性質
第1章 仮釈放理論の系譜と再構築
Ⅰ 仮釈放制度の歴史的展開
Ⅱ 仮釈放理論再構築の重要性
第2章 刑事政策の目的と仮釈放の本質
Ⅰ 刑事政策の目的
Ⅱ 仮釈放の目的
Ⅲ 仮釈放とリスク管理
Ⅳ 仮釈放の法的性質
第2編 仮釈放要件論
第1章 仮釈放の法定期間と正当化根拠
Ⅰ 法定期間再考の必要性
Ⅱ 法定期間の正当化根拠
Ⅲ 法定期間の再検討
Ⅳ 本質論と実証研究の調和
第2章 無期刑の本質と仮釈放の法定期間
Ⅰ 無期刑の法定期間を論ずる意味
Ⅱ 無期刑の本質
Ⅲ 無期刑と法定期間の正当化根拠
Ⅳ 無期刑と法定期間の基準
Ⅴ 「特別無期刑」論との相違
Ⅵ 法定期間の機能
Ⅶ 付随的課題
第3章 仮釈放の実質的要件と許可基準の再検討
――「改悛の状」の判断基準と構造――
Ⅰ 仮釈放実質的要件論の意義
Ⅱ 刑法改正作業と仮釈放の実質的要件
Ⅲ 「改悛の状」の判断基準――仮釈放許可基準の変遷
Ⅳ 仮釈放許可基準の再検討
Ⅴ 仮釈放の実質的要件――試論
Ⅵ 効果検証の必要性
第3編 仮釈放と保護観察
第1章 仮釈放と保護観察期間
――残刑期間主義の見直しと考試期間主義の再評価――
Ⅰ 仮釈放後の再犯と残刑期間主義の限界
Ⅱ 代替策の検討――仮釈放の早期化
Ⅲ 考試期間主義の概念
Ⅳ 考試期間主義と責任主義
Ⅴ 「仮釈放のジレンマ」問題
Ⅵ 仮釈放審理・決定機関
Ⅶ 仮釈放期間――保護観察期間
Ⅷ 消極的考試期間主義の是非
Ⅸ 無期受刑者の仮釈放期間
Ⅹ 保護観察と仮釈放の取消し
Ⅺ 考試期間主義と刑の一部執行猶予
Ⅻ 保護観察の充実
第2章 必要的仮釈放制度に対する批判的検討
Ⅰ 必要的仮釈放を巡る議論の経緯
Ⅱ 必要的仮釈放の概念
Ⅲ 必要的仮釈放の意義とその批判的考察
Ⅳ 必要的仮釈放の問題と限界
Ⅴ 必要的仮釈放と社会内処遇付自由刑の相違
Ⅵ 釈放に続く社会内処遇確保の重要性
第3章 矯正と保護を貫く段階的処遇
――開放的処遇と中間処遇の再編成並びに遵守事項の改正――
Ⅰ 段階的処遇の必要性
Ⅱ 段階的処遇の概念
Ⅲ 中間処遇制度の概要と課題
Ⅳ 段階的処遇制度の構想
第4編 仮釈放と被害者の法的地位
第1章 更生保護と被害者支援
Ⅰ 更生保護における被害者支援の展開
Ⅱ 更生保護における被害者支援の理念
Ⅲ 海外における更生保護と被害者支援
第2章 仮釈放と被害者意見聴取制度
Ⅰ 制度の二面性
Ⅱ 被害者等調査制度の概要と問題点
Ⅲ 被害者意見聴取制度の意義と問題点
Ⅳ 新制度の提案――自由刑の執行過程における意見聴取制度
Ⅴ 多機関連携の必要性
第3章 保護観察と被害者心情伝達制度
Ⅰ 制度の背景と法整備
Ⅱ 被害者心情伝達制度の概要
Ⅲ 制度の利用状況
Ⅳ 今後の課題
第5編 仮釈放手続論
第1章 仮釈放申請権と仮釈放手続
Ⅰ 仮釈放手続論の必要性
Ⅱ 概念整理
Ⅲ 仮釈放申請権の制度化を巡る動き
Ⅳ 仮釈放申請権の正当化根拠
Ⅴ 仮釈放手続の改革
第2章 検察官に対する求意見と判断基準
Ⅰ 仮釈放手続における検察官への求意見の位置付け
Ⅱ 検察官に対する求意見の実情
Ⅲ 求意見の基本的視座と判断基準
Ⅳ 求意見に対する検察官意見の在り方
第3章 仮釈放決定機関の法的性格と構成
――審理主体試論――
Ⅰ 仮釈放改革と仮釈放決定機関の再編成
Ⅱ 地方更生保護委員会委員の多様化
Ⅲ 仮釈放決定機関の構成
Ⅳ 特別遵守事項の設定
第6編 仮釈放を巡る各論的問題
第1章 外国人受刑者の仮釈放と出入国管理
Ⅰ 外国人受刑者の処遇に関する基本的視座
Ⅱ F指標の属性を巡る問題
Ⅲ 外国人受刑者の仮釈放
Ⅳ 外国人受刑者の保護観察
Ⅴ 外国人受刑者の再犯と出入国管理
Ⅵ 国際受刑者移送の積極化と適正化
Ⅶ 外国人犯罪者の更生と多文化共生
第2章 精神障害受刑者の釈放と26条通報
Ⅰ 刑事施設からの釈放と治療継続の必要性
Ⅱ 26条通報の運用状況
Ⅲ 26条通報の対象者像と再犯
Ⅳ 26条通報を巡る運用上の問題
Ⅴ 26条通報の構造的限界
Ⅵ 精神障害受刑者の釈放と社会内処遇との連携
第3章 性犯罪受刑者の釈放と多機関連携
Ⅰ 性犯罪者の再犯防止と行政の取り組み
Ⅱ 再犯防止措置制度
Ⅲ 大阪府子どもを性犯罪から守る条例
Ⅳ 再犯防止のための重層的セーフティネットの構築
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