インドネシアのイスラーム改革主義運動 アラブ人コミュニティの教育活動と社会統合
価格:7,040円 (消費税:640円)
ISBN978-4-7664-2517-8 C3022
奥付の初版発行年月:2018年05月 / 発売日:2018年05月中旬
▼彼らはいかにして「国民」になったのか?
イスラーム運動と国民国家が交錯する中で揺れ動く、外来系マイノリティのアイデンティティ。その変容の軌跡を描く気鋭の力作。
▼世界最大のムスリム人口を抱え、多民族国家でもあるインドネシアには、アラブ系のマイノリティが暮らしている。彼らは20世紀初めにムスリム社会の改革・近代化を目指す運動の中で活躍したが、国民国家が形成されはじめると帰属意識の選択を迫られることになる。アラブ人の教育活動の変遷から、近代インドネシアにおける社会統合とイスラーム運動との関係を、多彩な史料に基づいて明らかにしていく。
山口 元樹(ヤマグチ モトキ)
1979年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(史学)。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2017年より公益財団法人東洋文庫研究員。主要論文として、「アラウィー・イルシャーディー論争と中東の指導者たち――1930年代前半における東南アジア・ハドラミー移民社会の内紛と仲裁の試み」『オリエント』49/2(2006)、 “Islamic School and Arab Association: Aḥmad Sūrkatī’s Reformist Thought and Its Influence on the Educational Activities of al-Irshād,” Studia Islamika 23/3 (2016)がある。専門はインドネシア近現代史、東南アジア・イスラーム史。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
凡 例
本書対象地域
序 章 問題の所在
――インドネシアのイスラーム改革主義運動とアラブ人の社会統合
Ⅰ. インドネシアのアラブ人
ⅰ. アラブ人とオランダ領東インド
ⅱ. アラブ人とイスラーム改革主義運動
Ⅱ. 先行研究と問題の設定
ⅰ. 先行研究の状況
ⅱ. 問題の設定
Ⅲ. 史料と章構成
ⅰ. アラブ定期刊行物
ⅱ. 章構成
第1章 イスラーム改革主義運動の源流
Ⅰ. 東インドとマッカ
ⅰ. ジャーワの巡礼者
ⅱ. ハラーム・モスク
Ⅱ. マッカの教育改革運動とスールカティ―の経歴
ⅰ. 教育改革運動
ⅱ. スールカティ―の経歴
おわりに
第2章 イスラーム改革主義運動の始まり
Ⅰ. アラブ人の覚醒とその要因
ⅰ. アラブ人コミュニティの社会的状況
ⅱ. ジャムイーヤト・ハイル
ⅲ. 覚醒の要因
Ⅱ. アラウィー・イルシャーディー論争の発端
ⅰ. 婚姻の規制
ⅱ. 手に口づけをする慣習
Ⅲ. 結成時のイルシャードの性格
ⅰ. 学校と協会
ⅱ. 法学派の問題
おわりに
第3章 インドネシア・ナショナリズムの形成
Ⅰ. 公教育の拡充
ⅰ. 東インドの公教育制度
ⅱ. 公教育とアラブ人コミュニティ
Ⅱ. 東インドのイスラーム運動
ⅰ. 成立期のイスラーム同盟
ⅱ. 東インド・イスラーム会議
ⅲ. イスラーム勢力の変容
Ⅲ. 二方向の「巡礼」
ⅰ. 公教育制度への対応
ⅱ. カリフ論における教育機関の構想
おわりに
第4章 アラウィー・イルシャーディー論争の収束
Ⅰ. 東洋連盟の仲介による和解交渉
ⅰ. 争点の変化
ⅱ. 和解条件
Ⅱ. イスラーム改革主義者たちによる仲裁の試み
ⅰ. ラシード・リダー
ⅱ. シャキーブ・アルスラーン
ⅲ. 論争の鎮静化
おわりに
第5章 ハドラマウトかインドネシアか
Ⅰ. 帰属意識の分裂
ⅰ. インドネシア人とハドラミー
ⅱ. インドネシア・アラブ協会
Ⅱ. 二方向の教育活動
ⅰ. 教育活動の停滞
ⅱ. エジプトへの留学生の派遣
ⅲ. 公教育制度の活用
Ⅲ. 「アラブ人協会」から「イスラーム協会」へ
ⅰ. スールカティーの「現地志向」
ⅱ. 1930年代の教育活動
ⅲ. アラブ人性の保持の問題
おわりに
第6章 独立後のインドネシア社会への統合
Ⅰ. アラブ人コミュニティの状況変化
ⅰ. 日本軍政期
ⅱ. 独立革命期から独立直後
Ⅱ. 1950年代のイルシャード
ⅰ. マシュミ党との接近
ⅱ. 教育活動の決定
ⅲ. 現在のイルシャード
おわりに
終 章 インドネシアにおける統合の原理としてのイスラーム
参考文献
あとがき
索 引