世界を読み解く一冊の本
クルアーン 神の言葉を誰が聞くのか
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-7664-2555-0 C0300
奥付の初版発行年月:2018年11月 / 発売日:2018年11月中旬
シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(第1期・全10巻)、第二弾!
生きている聖典にふれる
極めて難解とされるイスラームの聖典『クルアーン』。
ではどう読めばよいのか?
聖典を読む困難と楽しさを、丁寧に解説。
信徒のみならず、人類にとっての「聖典」となる可能性を問う。
大川 玲子(オオカワ レイコ)
明治学院大学国際学部教授。イスラーム思想専攻。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(学術)。
著作に、『イスラーム化する世界』(平凡社新書、2013年)、『イスラームにおける運命と啓示』(晃洋書房、2009年)などがある。
目次
序 この聖典は誰のもの?
生きている書物
誰がクルアーンを読むのか――読者のタイプの六分類
本書の目指すこと
Ⅰ 「作者」は神か人か?
1 「作者」をめぐって――ムスリムと非ムスリムの間
「聖典」としてのクルアーン
ムスリムから見たムハンマドの生涯
神の声を聞く
ヒジュラ(聖遷)――メッカからメディナへ
啓示が下された状況
身の回りの状況の反映
非ムスリムにとってのムハンマド
ムハンマドの同時代人
神の言葉の「創造」という神学問題の難しさ
2 議論を生む書物としての成立と展開
ムスリム伝承の伝える編纂経緯
「ウスマーン版」の誕生
クルアーン編纂の研究史
初期の写本を読み解く
書承媒体の変遷――写本から印刷、そしてデジタルへ
印刷はヨーロッパから
3 異文化との邂逅――翻訳と受容
「翻訳」の是非
西洋諸言語への翻訳
アジア諸言語への翻訳
日本語への翻訳
西洋社会と日本社会での受容
Ⅱ 生の言葉による「説得」
1 生(なま)の言葉が訴えること
構成と文体
クルアーンは退屈か?
言葉の「まとまり」として読む
飲酒は完全に禁止?
クルアーンの章構成
散文と韻文の間
二つの祈禱句の章
メディナ期の文体の特徴
謎の残る分割された文字
頻繁に変化する人称
井筒俊彦のクルアーン研究の意義
ムスリム側からの学問的アプローチ
クルアーンの主要なテーマ
唯一神アッラー
九九の美称をもつ神
天使や悪魔、ジン
ムハンマド以前の預言者たち
預言者たちが遣わされた理由
ムハンマドの周囲の人物たち
2 「神の言葉」が開いたもの
格差社会メッカから平等社会メディナへ
努力としてのジハードと戦闘の容認
ユダヤ教徒・キリスト教徒をどう認めるか
アラビア語とクルアーンの相関関係
クルアーンから展開する諸思想潮流
イスラーム神学――神をどう把握するか
イスラーム法――神にしたがって生きる
イスラーム神秘主義――神を心の内面で体得する
Ⅲ 「説得」から「共有」へ――二元論を超えて
1 「説得」のための時間軸
警告と吉報
アッラーによる天地創造
来世のための現世――人はどう生きるべきか
男女の関係性
飲食などの禁止規定
戦闘とジハード
終末から来世へ
2 今なお解釈される書物として
前近代のクルアーン解釈(タフスィール)
伝承によるクルアーン解釈
シーア派のクルアーン解釈
個人見解によるクルアーン解釈
スーフィー的クルアーン解釈
近代以降のタフスィール――科学的思考とイスラーム主義
英国支配下のエジプトとインド
科学的クルアーン解釈
文学的クルアーン解釈
イスラーム主義的クルアーン解釈
現代のクルアーン解釈――西洋文明の影響下で
3 見るクルアーン、聞くクルアーン
日々のなかのクルアーン
芸術作品のなかで
注
参考文献