世界を読み解く一冊の本
オーウェル『一九八四年』 ディストピアを生き抜くために
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-7664-2557-4 C0300
奥付の初版発行年月:2022年04月 / 発売日:2022年04月中旬
▼希望はある、愛と大地と人びとのなかに
全体主義国家によって分割統治された近未来世界を描く、
世界的ベストセラー『一九八四年』。
ビッグ・ブラザーが支配する徹底した監視・管理社会で、
独り闘争をしかける、
我らが主人公、ウィンストン・スミス。
「ポスト真実」の時代を先取りしたディストピアに、
希望はあるのか。
川端 康雄(カワバタ ヤスオ)
日本女子大学文学部教授。英文学専攻。明治大学大学院文学研究科博士後期課程退学。主な著書に『増補 オーウェルのマザー・グース――歌の力、語りの力』(岩波現代文庫、2021年)、『ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌』(岩波新書、2020年)、『葉蘭をめぐる冒険――イギリス文化・文学論』(みすず書房、2013年)、『ジョージ・ベストがいた――マンチェスター・ユナイテッドの伝説』(平凡社新書、2010年)、主な訳書に、オーウェル『動物農場――おとぎばなし』(岩波文庫、2009年)、『オーウェル評論集』(編、共訳、平凡社ライブラリー)などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序
Ⅰ 『一九八四年』はどのようにして書かれたのか
1 ジュラ島のオーウェル
2 『ヨーロッパで最後の人間」(仮題)の構想と執筆
BBC勤務
『動物農場』執筆と『トリビューン』紙の編集
創作ノート「ヨーロッパで最後の人間」
『一九八四年』の執筆と病気
3 『一九八四年』の刊行と出版直後の評価
米国版の修正要求への拒否
出版直後の評価――冷戦初期の受容
日本における『一九八四年』の初期の受容
Ⅱ 何を書いたのか
1 「窮乏の時代」とオセアニア国の表象
「近接性」――「しょぼい」ロンドン
「異質性」――時計の「一三時」と「一メートル」のポスター
パブで「半リットル」のビール
「アメリカ化」したロンドン
三つの超大国
オセアニア国の「階層」
ウィンストン・スミスのロンドン彷徨
「汚れた風景」にそびえる巨大ピラミッド
2 「ライター」、そして「X」と「Y」――ウィンストンとジュリア
の愛、同志オブライエンの奇妙な愛情
オセアニア国で「愛する」ということ――ジュリアの場合
オブライエンとの「親密」な関係
女性の表象、セクシュアリティの問題
3 春と独裁
「ゆるい」エッセイ群
ウィンストン・スミスの春
〈黄金郷〉
「愛にふさわしい場所」
隠れ家とガラスのぺーパーウェイト
4 「ニュースピーク」の効用
新聞記事の改竄・捏造
「ニュースピークの諸原理」
「ニュースピーク」と「ベイシック英語」
「政治と英語」(一九四六年)
5 ユダヤ人表象の問題
「英国における反ユダヤ主義」(一九四五年)
難民船の原像
難民船のユダヤ人母子
愛情省と絶滅収容所
水底の母子
6 プロールに希望はあるか
プロールは蔑称か
プロールの「意識のなさ」
レイモンド・ウィリアムズのオーウェル批判
プロールへの希望
Ⅲ 人の生をいかに捉えたのか
1 「権力の司祭」の信仰
オブライエンの「疲労」
「ナショナリズム覚え書き」(一九四五年)
「個人の不滅への信仰」の衰退
〈党〉への没入と自己滅却
2 「人間らしさ」と「人間性」(そして「動物性」)
「人間」の種族の絶滅
動物の比喩形象
人権擁護の国際連携の試み
「人間性」のあやうさ、そして「人間らしさ」への信
3 「嘘」の暴露と美的経験
コロナ禍のなかの「オーウェル」
「オーウェル」の汎用性の問題
「政治的著作」と「芸術」の融合
一九三六年の植樹
注
あとがき