国家公務員の中途採用 日英韓の人的資源管理システム
価格:7,150円 (消費税:650円)
ISBN978-4-7664-2632-8 C3031
奥付の初版発行年月:2019年10月 / 発売日:2019年10月中旬
▼中途採用制度の運用実態を解明する
独自に収集した海外の職歴データを基に、キャリアパスの実態や組織業績への影響を分析。民間任用者の有効活用策を国際比較から探り、「働き方改革」時代の公務員の人材登用に示唆を与える。
内部育成か、中途採用か――。
日本を含め、各国で導入が進んでいる民間出身者の中途採用。
では、彼らはどのような仕事を、どのポストで行っているのだろうか。組織の業績を高めているのだろうか。
職務基準による採用・育成の問題点を指摘し、「成功する民間登用」へのカギを探る。
小田 勇樹(オダ ユウキ)
1983年生まれ。2006年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、㈱豊田自動織機入社。L&Fカンパニー生産管理部日程グループ配属。生産ラインにて部品の納入管理を担当。2008年、同社を退職し慶應義塾大学大学院法学研究科入学。2013年、同研究科後期博士課程単位取得退学。博士(法学)。日本学術振興会特別研究員(DC2)、慶應義塾大学大学院法学研究科助教(有期・研究奨励)、同研究科研究員を経て、現在、大阪成蹊大学マネジメント学部講師。専門は行政学、政治学、公共政策。近著として、「国家公務員制度の現在地と働き方改革―最大動員システムの持続可能性―」『法学研究』第92巻5号(2019年)など。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 謎に包まれた中途採用
1 開放型任用制は「開放的」なのか?
2 問題設定と本書の構成
3 本書の特色
第1章 公務員制度のモデルと課題
1 公共部門の人的資源管理モデル
(1) NPM以前の公務員制度モデル
(2) NPM以後の公務員制度モデル
(3) 行政改革研究からの視座
(4) 公務員制度のモデルに関する議論の変遷
2 民間部門の人的資源管理モデル
3 先行研究の課題
(1) 開放/閉鎖二項対立モデルの構成原理と運用の乖離
(2) 公務員制度と組織の業績に関する研究蓄積の不足
(3) ポジションシステムの不透明な運用実態
4 本書のアプローチ
第2章 知識・技能と中途採用の運用パターン
1 公務員の知識・技能
(1) 政治学・行政学における公務員の専門性概念
(2) 労働経済学・経営学における知識・技能概念
2 ポジションシステムにおける任用の類型
3 ポジションシステムの下位類型
第3章 韓国のポジションシステム
1 改革以前の韓国の公務員制度
2 開放型職位制度の概要
(1) 対象職位の指定
(2) 職務遂行要件
(3) 任用の手続き
(4) 給与と評価
3 運用実態の分析
(1) 職歴の調査方法
(2) 運用の実態
4 開放型職位制度と組織の業績
5 韓国の事例分析からの知見
第4章 イギリスのポジションシステム
1 イギリスの公務員制度の変遷
2 イギリスの公務員制度
3 運用実態の分析
(1) 政府公表資料の分析
(2) 職歴調査の結果
(3) イギリスの制度運用の特徴
4 職員のキャリアパスと業績
5 イギリスと韓国の比較
第5章 民間部門からの中途採用事例
1 中途採用までの職歴
2 貿易産業省の政策目標
3 任用当時のイノベーション政策を取り巻く状況
4 デイビッド・ヒューズ任用後のイノベーション政策
5 デイビッド・ヒューズの退職とその後
6 政策変化とヒューズの中途採用
第6章 公共部門からの中途採用事例
1 マッカーシーの中途採用までの職歴
2 副首相府の政策目標
3 イギリスの住宅政策の歴史と住宅協会の役割
4 任用当時の住宅政策を取り巻く状況
5 リチャード・マッカーシー任用後の住宅政策
6 政権交代による予算削減と住宅政策の変化
7 リチャード・マッカーシーの退職
8 政策変化とマッカーシーの中途採用
9 2つの事例からわかる中途採用の実像
第7章 局長・課長の職歴と省の業績
1 先行研究における公務員制度の計量分析の課題
(1) 公務員制度指標の問題点
(2) 公務員制度と組織の業績に関する先行研究
2 Public Service Agreementsの分析
(1) 各省の業績を表す指標(従属変数)
(2) 局長・課長の職歴を表す指標(独立変数)
(3) 目標の難易度に影響を与えるその他の要因(コントロール変数)
(4) データの構造と分析手法
3 上級公務員の職歴と業績の関係
4 政策形成の職位において有用な職歴は何か
第8章 執行エージェンシー長官の職歴と組織の業績
1 執行エージェンシーの業績の分析
(1) エージェンシーの業績を表す指標(従属変数)
(2) 長官の職歴を表す指標(独立変数)
(3) 目標の難易度に影響を与えるその他の要因(コントロール変数)
(4) データの構造と分析手法
2 エージェンシー長官の職歴と業績の関係
3 ポジションシステムの運営類型と業績の関係
第9章 日本の国家公務員制度の変化と働き方改革の動向
1 日本の国家公務員制度に対する分析視角
2 中途採用経路の増加
(1) 人事院規則1-24に基づく中途採用
(2) 任期付職員法に基づく中途採用
(3) 任期付研究員法による採用
(4) 経験者採用試験
(5) 官民人事交流
(6) イギリスにおける中途採用との比較
3 昇進管理の変化
4 給与システムの変化
5 職務区分のあり方
6 近年の公務員制度改革の影響
7 日本型雇用と働き方改革
8 働き方改革の方向性
9 霞が関における働き方改革
10 働き方改革と最大動員システムの行く末
終 章 明らかになった中途採用の実像
1 本書の分析結果
2 韓国・イギリスと日本の比較
3 ポジションシステムの理論的精緻化
4 本書の分析の限界と課題
5 公務員の中途採用に関する政策的示唆
補 論 公務員制度のモデルに関する先行研究の議論
1 西尾の開放型・閉鎖型任用制
2 Silbermanの専門・組織志向の官僚制
3 Auer et al.(1996)の研究背景
4 OECDの公務員制度モデルの概要と変遷
5 OECDによる公務員制度モデルの指標化
初出一覧
参考文献一覧
あとがき
索 引