悲しい曲の何が悲しいのか 音楽美学と心の哲学
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-7664-2634-2 C3010
奥付の初版発行年月:2019年10月 / 発売日:2019年10月中旬
悲しい曲で人は悲しくはならない――
心の哲学を利用した美学の観点から、「音」とは何か、「聴取」とは何なのかを考察する。
美しい音楽を聴いたとき人は感動を覚える。このような美的経験は日常にあふれているが、美しい/美しくないという判断にはどのような基準があるのだろうか。そしてどれほどの客観性があるのだろうか。
本書では、美に関する経験や判断の問題を扱う美学に、心の哲学を利用してアプローチする。とりわけ「音楽聴取」に焦点をあわせ、美的判断の客観主義を擁護する立場をとりつつ、音とは何か、なぜ人は悲しい音楽を聴くのか、音楽と情動はどのように結びついているのか、などさまざまなトピックについて論じていく。
源河 亨(ゲンカ トオル)
2016年、慶應義塾大学大学院にて博士(哲学)を取得。現在は、慶應義塾大学文学部・日本大学芸術学部・立正大学文学部にて非常勤講師。専門は、心の哲学、美学。
著作に、『知覚と判断の境界線――「知覚の哲学」基本と応用』(慶應義塾大学出版会、2017年)。訳書に、セオドア・グレイシック『音楽の哲学入門』(慶應義塾大学出版会、2019年、共訳:木下頌子)、ジェシー・プリンツ『はらわたが煮えくりかえる――情動の身体知覚説』(勁草書房、2016年、単訳)、ウィリアム・フィッシュ『知覚の哲学入門』(勁草書房、2014年、監訳:山田圭一、共訳:國領佳樹・新川拓哉)、など。
目次
はじめに
第1章 音楽美学と心の哲学
1 聴取経験の分析
問題となる聴取経験/情動とのアナロジー/概念分析と心の分析
2 音楽美学の自然化
哲学的自然主義/反自然主義に関して
第2章 「美しい音楽」は人それぞれ?
1 基本概念の整理
判断と経験/美的判断と美的経験/美的性質と非美的性質
2 実存性と客観性を分ける
客観主義と主観主義/色をめぐる議論
第3章 「美しい音楽」の客観性
1 正しい美的経験の条件
ゼマッハ/ウォルトン
2 なぜ評価が重要なのか
ゴールドマン/レヴィンソン/ベンダー/評価と行為
第4章 心が動く鑑賞
1 情動とは何か
身体反応の感じ/感情価/評価
2 情動なしに「鑑賞」できない
感受性の学習
第5章 心が動けば聴こえが変わる
1 知覚と情動は独立か?
認知的侵入可能性/知覚と情動の複合体
2 考えることと感じること
情動以外の評価的状態/美的判断の個別主義
第6章 音を見る、音に触れる
1 音はどこにあるのか
出来事としての音/誰もいない森で木が倒れたら音はするのか
2 現象学と知覚システム
音が定位する場所/環境を聴く/知覚のマルチモダリティ
第7章 環境音から音楽知覚へ
1 音楽とは何か
芸術としての音楽/合目的性の鑑賞
2 音楽を見る、音楽に触れる
音楽パフォーマンス/マルチモーダルな音楽鑑賞
第8章 聴こえる情動、感じる情動
1 音楽の悲しみと聴き手の悲しみ
表出的性質/問題点の整理/問題となる事例
表出的性質に関する四つの理論
2 表出説と喚起説
作者の情動と表出的性質/聴き手の情動と表出的性質
第9章 なぜ悲しい曲を聴くのか
1 二つの問題と音楽情動
負の情動のパラドックス/対象の欠如/キヴィーの音楽情動
2 悲しむべきことがあるのか
情動と気分の違い/自分の情動を間違える
第10章 悲しい曲の何が悲しいのか
1 類似説とペルソナ説
類似性と擬人化傾向/想像と物語的解釈
2 二つは本当に対立しているのか
表面上の対立点/擬人化と想像の違い/高次情動の表出性
結論 美学の自然化
あとがき
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