小児失語症の言語回復 ランドー・クレフナー症候群と自閉症の比較から
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-7664-2639-7 C3080
奥付の初版発行年月:2019年11月 / 発売日:2019年11月中旬
ヒトは言語をどのように獲得し、発達していくのか。
生物言語学の見地から、
言語理解と発話のメカニズムを解明し、
言語回復への道筋を探る。
小児期に発症するてんかん性失語症であるランドー・クレフナー症候群(LKS)に着目し、
自閉症との比較とともに、LKS児の発話を促すための医療的介入法を提案する。
星 浩司(ホシ コウジ)
慶應義塾大学経済学部教授、慶應義塾大学言語文化研究所兼担所員。
博士(言語学)。専門は生物言語学。
1965年生まれ。1988年獨協大学外国語学部卒業、1990年獨協大学大学院外国語学研究科英語学専攻修士課程修了、1995年ロチェスター大学大学院言語学科博士課程修了、博士号取得。マサチューセッツ工科大学客員研究員、慶應義塾大学経済学部准教授を経て、2006年より慶應義塾大学経済学部教授。
著書『言語学への扉』(慶應義塾大学出版会、2006年)。
主要論文 Merge and Labeling as Descent with Modification of Categorization: A Neo-Lennebergian Approach. Biolinguistics 12, 39-54, 2018. Lenneberg’s contributions to the biology of language and child aphasiology: Resonation and brain rhythmicity as key mechanisms. Biolinguistics 11. SI, 83-113, 2017.
宮里 恭子(ミヤザト キョウコ)
白鷗大学教育学部教授。博士(教育学)。専門は社会言語学。
1965年生まれ。1988年慶應義塾大学商学部卒業、1989年ボストン大学大学院教育学部修士課程修了、2006年テンプル大学大学院博士課程修了、博士号取得。慶應義塾大学商学部非常勤講師、白鷗大学法学部准教授を経て、2010年より白鷗大学教育学部教授。
著書『Beyond Your Own Culture――自文化再発見』(共著、英宝社、2003年)。
主要論文 Architecture of human language from the perspective of a case of childhood aphasia: Landau-Kleffner syndrome. Biolinguistics 10, 136-196, 2016(with Koji Hoshi). Power sharing between NS and NNS teachers: Linguistically powerful AETs vs. culturally powerful JTEs. JALT Journal 31, 35-62, 2009.
目次
序 論
第1章 小児失語症としてのランドー・クレフナー症候群
1. ランドー・クレフナー症候群(LKS)とは
(1) 医学・臨床的特徴――CSWSを伴う脳波異常
(2) 行動・発達上の特徴――自閉症に類似した行動と発達
(3) 言語的特徴――言語音聴覚失認と発話喪失
2. 脳損傷を伴う小児失語症との相違点(発症年齢と予後の相関関係)
3. 脳波異常を伴う他の小児脳疾患との比較(LKSとBECTS・CSWS)
4. 自閉症との比較(LKSとARのリスクマーカー)
第2章 人間の言語の仕組み――レネバーグとチョムスキ―の視点から
1. 言語学を理解するためのキーワード
(1) 言語の考え方に関する事項
(2) 個々の概念
(3) 言語学の中の音に関する分野
(4) 言語学の中の構造を扱う分野
(5) 言語学の中の意味を扱う分野
2. 内在化された言語:レネバーグの潜在(的言語)構造と実現構造/
チョムスキーの普遍文法とI言語
3. レネバーグの母語獲得モデルと臨界期仮説
(1) 母語獲得モデル
(2) 臨界期仮説
4. レネバーグの共鳴理論と脳波律動
(1) 共鳴理論(Resonance Theory)
(2) 脳波律動
5. モジュール性
(1) 心のモジュール性
(2) 言語のモジュール性
第3章 言語理解と発話のメカニズム
1. 言語の理解と発話の脳内メカニズム
――Hickok & Poeppel (2007)の発話処理モデルから
2. LKSに見られる言語障害の発生メカニズム
――Hickok & Poeppel (2007)のモデルに基づく提案
(1) LKSにおける言語音聴覚失認障害と発話障害のメカニズム
――内言語が影響されない言語学的背景
(2) LKSにおける言語障害の発症のメカニズム
――Hickok & Poeppel(2007)の理論に基づく提案
3. レネバーグの失語症理論とLKSへの応用
第4章 LKSからの言語回復と発話促進への治療法
1.tDCS(経頭蓋直流電流刺激) ――LKSへの適用の可能性
2.tDCSを用いた言語回復への仮説
――8つの回復パターンに対する部位の特定
3. レネバーグの脳波律動に関する仮説からの提言
第5章 言語進化
1. 言語進化(生物進化vs.文化進化)
2. レネバーグの言語の生物学的鋳型(=「潜在[的言語]構造」)と
言語機能
3. 生物進化から文化進化への移行
4. 言語進化から言語障害の医学的治療への貢献の可能性
第6章 今後の展望に向けて
1.自閉症とLKS――誤診防止へのリスクマーカーと早期治療
2.心の理論と周囲の関わり方
3.LKS児の言語獲得のための教育的示唆
(1) 言語獲得過程の特徴――語彙(名詞)獲得の困難と言語学的
ビッグ・バン
(2) 望まれる療育・教育体制
結 論(本書のまとめと提言)
コラム
① ランド―・クレフナー症候群(LKS)
② 自閉症の発見から現在まで
③ 統語論と語彙項目
④ 臨界期を証明する事例(ジニー、チェルシー)
⑤ 心のモジュール性を証明する事例(ローラ、ウィリアムズ症候
群、特異性言語発達障害、サヴァン症候群)
⑥ ネオ・レネバーグ的生物進化理論
あとがき
引用・参考文献
索引