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近代産業に息づく民俗的想像力養蚕と蚕神

養蚕と蚕神 近代産業に息づく民俗的想像力

A5判 332ページ 上製
価格:6,160円 (消費税:560円)
ISBN978-4-7664-2644-1 C3021
奥付の初版発行年月:2020年02月 / 発売日:2020年02月上旬

内容紹介

蚕を育てる女性たち、
その身体技術と近代科学の融合

科学知と在来知、国家イデオロギーと民俗的想像力――。
国家政策と女性たちの感情・感覚のせめぎ合いから、
近代養蚕業の新たな姿を紡ぎ出す。

なにごとも 蚕が思うままにして
さからわぬこそ 蚕のみち

繊細を極め、人の手を借りなければ生きられない〈お蚕さま〉。
その飼育を担ったのは近代的な大工場ではなく、
農村の女性たちの熟練した身体的技術と、連綿と受け継がれてきた民俗的想像力だった。
近代産業のもう一つの側面を鮮やかに織り上げる、気鋭の力作。

著者プロフィール

沢辺 満智子(サワベ マチコ)

1987年生まれ。2017年、一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻博士課程修了。博士(社会学)。学習院大学客員研究員、多摩美術大学非常勤講師。主な論文に「育てる身体と感覚――『養蚕秘録』に見る人間と蚕の関係」(足羽與志子・中野聡・吉田裕編『平和と和解――思想・経験・方法』旬報社、2015年)、共著書に『VIVID銘仙――煌めきの着物たち』(青幻舎、2016年)等。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 養蚕と蚕神
1 養蚕と近代日本
2 近代産業化と民俗的想像力
3 女性たちの身体感覚・民俗信仰
4 本書の構成
5 蚕の生態
6 日本養蚕史概観――十九世紀の開国以前まで

  Ⅰ部 養蚕の国策近代産業化――蚕を巡る制度・科学・イデオロギー

 第一章 在来知から科学知へ――蚕種生産を巡る知の体系
1 養蚕業の国策化における蚕種の重要性
2 蚕種の科学化—蚕病予防から蚕種統一への転換
3 優性の法則と蚕
4 蚕と国民身体――国家が管理する命

 第二章 育てる技術の標準化と限界
1 蚕書に見る養蚕技術の再編――標準への志向性
2 養蚕技術の近代化――「養蚕標準表」の成立
3 留保される標準化――高山社の指導法にみる身体

 第三章 近代養蚕農家への再編――製糸会社の台頭
1 蚕種生産と中心の移動――農村・政府・製糸会社
2 組織化と養蚕の実践――養蚕組合と特約取引 
3 鐘紡の養蚕工場構想とその限界 
4 近代養蚕農家と女性

 第四章 宮中養蚕にみる国家イデオロギーと蚕
1 明治政府による宮中養蚕の開始
2 再編される宮中養蚕――皇室と科学知との接近
3 育てる国母と殖産興業――養蚕と良妻賢母像
4 昭和戦時体制と宮中養蚕

  Ⅱ部 金色姫物語の近代――養蚕における民俗的想像力の諸相

 第五章 蚕影信仰と金色姫
1 近代化政策における民俗領域
2 養蚕の神々
3 養蚕信仰の中心・蚕影神社――縁起・信仰圏・金色姫物語
4 民俗神としての蚕神・金色姫
5 金色姫の社会的地位
6 民俗的想像力と金色姫の親和性

 第六章 金色姫物語と女性たち
1 女性たちの金色姫
2 女性の身体守護としての金色姫
3 蚕母――接近する女性の身体と蚕
4 女性救済の金色姫――富士講・蚕和讃に見る女性の身体

 第七章 蚕を育てる感覚と想像力
1 蚕を育てる人間の身体
2 感情を持つ蚕――信仰の起点
3 育てる身体と金色姫物語――蚕の命と金色姫の命
4 蚕の変態、そして生と死

 第八章 金色姫と皇后――女性たちの金色姫から、国民の金色姫へ
1 動員される神々――国策産業と金色姫
2 養蚕組合と金色姫信仰
3 富国強兵開祖神――皇后と金色姫

 終 章 近代産業化と民俗的想像力
1 国家の虫・蚕への道程
2 技術に残り続けた感覚と民俗
3 民俗的世界を強化した国家政策
4 近代化の再検討に向けて


あとがき
初出一覧
参考文献
索 引


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