民事訴訟における当事者の主張規律
価格:7,150円 (消費税:650円)
ISBN978-4-7664-2667-0 C3032
奥付の初版発行年月:2020年03月 / 発売日:2020年03月下旬
▼主張過程固有の規律とは何か。
▼その実効化を解明する。
現在、当事者の主張過程には固有の規律が模索されている。
実効的な主張規律が存在するアメリカ法を比較法的対象とし、わが国に適した規律、そして実務における当事者および訴訟代理人の主張活動を効果的に律することのできる規準として主張規律を考察する気鋭の研究。
金 美紗(キム ミサ)
1986年生まれ。慶應義塾大学法学部専任講師(民事訴訟法)。慶應義塾大学法学部政治学科飛び級退学、慶應義塾大学大学院法務研究科修了、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。LL.M.(ニューヨーク大学)。博士(法学)(慶應義塾大学)。
司法修習生、慶應義塾大学法学部助教、コンスタンツ大学訪問研究員を経て、2019年より現職。
目次
はしがき
序 章 本研究の目的
第1節 はじめに
第2節 主張規律研究の目的
1 主張責任論の機能と限界
(1) 主張責任論の機能
(2) 主張責任論の射程
(3) 主張責任論に対する批判
2 主張規律論の機能
(1) 主張責任論との棲み分け
(2) 主張規律論の射程
(3) 主張規律論の役割
第3節 主張規律研究の課題
1 主張規律の実効化
(1) 先行研究の問題点
(2) 実効化の必要性
(3) 実効化を論ずるうえでの留意点
2 アメリカ法との比較の意義
(1) 豊富な議論の存在
(2) 時間軸を意識した主張規律の存在
第4節 本書の構成
第1章 アメリカ法における主張の意義
第1節 はじめに
1 問題の所在
2 考察の視座
第2節 アメリカにおける民事訴訟手続の沿革
1 コモンロー
(1) コモンローにおける民事訴訟手続の特徴
(2) コモンローにおける争点整理手続
2 フィールドコード
(1) フィールドコードとは
(2) フィールドコードにおける争点整理手続
第3節 連邦民訴規則における主張の意義
1 プリトライアル手続の拡充
2 連邦民事訴訟における主張の意義
(1) 争点整理の進捗状況に応じた主張
(2) 主張書面の種類
第4節 おわりに
第2章 虚偽陳述の規制
第1節 はじめに
1 本章の目的
2 考察対象の限定
第2節 真実宣誓制度
1 真実宣誓制度の系譜
(1) 真実宣誓制度とは
(2) 真実宣誓制度に対する批判の高まり
(3) 真実宣誓制度の衰退
2 真実宣誓制度の今日的意義
(1) 現行連邦民訴規則における取扱い
(2) 現行ニューヨーク州民事訴訟法における取扱い
(3) 小括
第3節 1938年型の確証制度
1 1938年型確証制度の内容
(1) 1938年型確証制度の特徴
(2) 1938年型確証制度の立法趣旨
2 実効性の欠如とその要因
(1) 規定上の不備
(2) 制裁の発動に消極的な裁判所の姿勢
3 1938年型確証制度の衰退
(1) 1938年型確証制度に対する評価
(2) 実効化の要請をもたらした背景
(3) 83年改正型確証制度への移行
(4) 総括
第4節 日本法への示唆
第3章 主張の裏づけ義務
第1節 はじめに
1 本章の目的
2 本章の構成
第2節 93年型確証制度の概観
1 93年改正型確証制度の内容
(1) 適用対象となる主張書面
(2) 行為規範
(3) 制裁規定
2 日本法との比較に際しての留意点
第3節 裏づけ義務の導入
1 83年改正型確証制度における裏づけ義務
(1) 83年改正による調査義務の新設
(2) 調査義務の新設がもたらした変化――裏づけ義務の導入
(3) 裏づけ義務の性質・目的
2 93年改正型確証制度における裏づけ義務
(1) 93年改正の趣旨
(2) 裏づけ義務の継受
第4節 裏づけ義務に関する解釈論
1 裏づけ義務の内容
(1) 調査義務
(2) 合理的心証形成義務
2 裏づけ義務違反の判断枠組み
3 撤回義務
(1) 問題の所在
(2) 全面的撤回義務
(3) 制限的撤回義務
(4) 93年改正と制限的撤回義務の明文化
第5節 日本法への示唆
第4章 原告主張の不備に基づく請求棄却の法理
第1節 問題の所在
第2節 連邦民訴規則におけるプリーディングの規律の概観
1 シンプルかつスピーディーな手続構想
2 原告主張の不備に基づく請求棄却の法理
第3節 伝統的な理論枠組み
――ノーティス・プリーディング
1 原告主張の不備についての判断基準
(1) 学説における見解の対立
(2) ノーティス・プリーディングの確立
2 ノーティス・プリーディングの下での主張規律
(1) 実体的請求権の内容に関する規律――法的充足性
(2) 主張の形式面に関する規律――簡潔性・明瞭性
3 下級審裁判例にみられるジレンマ
――ノーティス・プリーディングからの離反
(1) 主張の特定性を要求した裁判例
(2) 特定性を要求した趣旨
第4節 新たな理論枠組み
――プローザビリティ・プリーディング
1 連邦最高裁における新たな動向
2 Twonbly判決
(1) 説得性基準の内容
(2) 説得性基準の必要性・正当性
3 Iqbal判決
(1) 事実関係
(2) 2段階審査テストの構築
4 両判決の評価
(1) 説得性基準についての理解
(2) 説得性基準に対する評価
(3) 説得性基準に代わる手段の模索
第5節 日本法への示唆
第5章 否認および不知陳述の規制
第1節 はじめに
1 本章の目的
2 前提概念の整理
第2節 否認および不知陳述の方法
1 プリーディングにおける応答の構造
(1) 応答書面の種類
(2) 応答態度の種類
(3) 応答態度の効果
(4) 積極防御(affirmative defenses)
2 否認陳述の態様
(1) 連邦民訴規則8条(b)(3)
(2) 連邦民訴規則8条(b)(4)
(3) 連邦民訴規則9条
3 不知陳述の態様
第3節 否認陳述の規制
1 一括否認の原則禁止
(1) 行為規範
(2) 違反に対する効果
2 趣旨不明瞭な陳述態様による否認の禁止
(1) 否認の明確性原則
(2) 規則に定めのない態様による応答的陳述
(3) 留保付否認
3 否認対象をごまかすような方法による否認の禁止
(1) 規範の内容
(2) 裁判例
第4節 不知陳述の規制
1 不知陳述の許容性
(1) 沿革
(2) 推測に基づく否認
(3) 連邦民訴規則における不知陳述の位置づけ
2 誠実性原則
(1) 不誠実な不知陳述の原則禁止
(2) 違反の効果
第5節 日本法への示唆
第6章 日本法における解釈論と運用上の課題
第1節 はじめに
1 本章の目的および考察対象
2 比較法的考察の意義
(1) 問題意識の共通性
(2) 主張規律の実効化
3 比較法的考察に際しての留意点
第2節 主張の裏づけ義務
1 問題の所在
2 真実義務論
(1) ドイツ法における議論
(2) 日本法下における議論
3 真実義務論の問題点
(1) 実効化の必要性
(2) 消極的真実義務論における実効性の欠如
(3) 小括
4 裏づけ義務論
(1) 趣旨および目的
(2) 義務主体の範囲
(3) 行為規範
(4) 評価規範
(5) 裏づけ義務と消極的真実義務の相違点
5 日本法における裏づけ義務の導入
――消極的真実義務の再構成
(1) 行為規範
(2) 評価規範
6 まとめ
(1) 運用上の留意点
(2) 真実義務論における今後の検討課題
第3節 主張自体失当の法理
――「原告主張の不備を理由とする請求棄却の法理」との対比から
1 問題の所在
2 主張自体失当の法理
(1) 主張の有理性
(2) 裁判例の検討
(3) 小括
3 アメリカにおける「原告主張の不備に基づく請求棄却の法理」
(1) 主張の法的充足性
(2) 「主張の特定性」および「主張の説得性」
(3) 日米の議論の対比
4 日本法における主張自体失当についての解釈論
(1) 基本的な視座
(2) 類型ごとの考察
第4節 否認陳述の規制
1 問題の所在
2 従来の学説における議論
(1) ドイツ法における理由づけ責任
(2) 日本法における議論
3 アメリカにおける否認陳述の規制
(1) 一括否認の原則禁止
(2) 趣旨不明瞭な陳述態様による否認の禁止
(3) 否認対象をごまかすような否認の禁止
(4) 日米の議論の比較
4 日本法における対象特定の要請
(1) 一括否認の原則禁止
(2) 趣旨不明瞭な陳述態様による否認の禁止
(3) 否認対象をごまかすような否認の禁止
第5節 不知陳述の規制
1 はじめに
2 アメリカにおける不知陳述の規制
(1) 誠実性原則
(2) 行為規範
(3) 評価規範
3 日本法における不知陳述の規制
(1) 通説および実務
(2) 有力説とその評価
(3) 私見
第6節 総括
事項索引
判例索引