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――〈恐怖〉を読み解くリテラシーテロリズムとは何か

テロリズムとは何か ――〈恐怖〉を読み解くリテラシー

四六判 352ページ 上製
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-7664-2680-9 C0031
奥付の初版発行年月:2020年06月 / 発売日:2020年06月中旬

内容紹介

▼「テロ」。その政治的暴力の真実を探る。

「テロ」とは果たして何なのか。
終わることのないテロの問題は、我々にも決して無関係ではありえない。
理論と実際の両面からテロ問題の全体像の素描を試みる。

著者プロフィール

小林 良樹(コバヤシ ヨシキ)

明治大学公共政策大学院(専門職大学院)ガバナンス研究科 特任教授。
早稲田大学博士(学術)、ジョージワシントン大学修士(MIPP)。香港大学修士(MIPA)。トロント大学修士(MBA)。
1964年東京都生まれ。1987年、東京大学法学部卒業後に警察庁入庁。警察庁警備局外事第一課課長補佐、在香港日本国総領事館領事、在米国日本国大使館参事官、警察庁国際組織犯罪対策官、慶應義塾大学総合政策学部教授、高知県警本部長等を歴任。2016年3月からは内閣情報調査室の内閣情報分析官(国際テロ担当)として、テロ情勢分析に従事2019年3月、内閣官房審議官(内閣情報調査室・内閣情報分析官)を最後に退官。同年4月より現職。
専門はインテリジェンス、テロリズム、社会安全政策等。
主要著書に『インテリジェンスの基礎理論(第2 版)』(立花書房、2014)、“Assessing Reform of the Japanese Intelligence Community,” International Journal of Intelligence and Counterintelligence, 28(4), August 2015, pp. 717-733、『犯罪学入門―ガバナンス・社会安全政策のアプローチ』(慶應義塾大学出版会、2019)等多数。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき
凡  例

 第Ⅰ部 リテラシーを得る――テロに関する学術理論は何を語るのか?

第1章 「テロリズム」とは何なのか
 1 テロの定義の様々な例
  (1) 日本、米国における主な法令上のテロの定義
  (2) 学説上の主な定義
 2 テロの基本的な要素――最低限のコンセンサス
  (1) コンセンサス
  (2) テロと一般犯罪の違い
 3 定義の困難性と必要性
  (1) なぜ定義が困難なのか
  (2) なぜ定義が必要なのか
 4 論争のある点――「国家テロ」という概念を認めるか?
  Column 「テロリズム」と「過激主義」 
  Column 「テロリズム」と「ゲリラ」「インサージェンシー」
  Column 「国家テロ」と「国家支援テロ」 

第2章 テロの歴史――新しいもの、古いもの? 普遍のもの、変化するもの?
 1 近現代以前
 2 近現代(19世紀以降)――「4つの波(Four Waves)」
 3 第1の波――「無政府主義者の波」 
  (1) 概要
  (2) 手法、特徴
  (3) 主な事例
 4 第2の波――「反植民地主義の波」
  (1) 概要
  (2) 手法、特徴
  (3) 主な事例
 5 第3の波――「新左翼の波」
  (1) 概要
  (2) 手法、特徴
  (3) 主な事例
 6 第4の波――「宗教の波」
  (1) 概要
  (2) 手法、特徴
  (3) 主な事例
 7 結 論 
  Column 過去約100年間の世界の主要テロ事案

第3章 テロの特徴(その1)――非対称性
 1 総 論 ―テロに関する非対称性とは
 2 テロ組織等の有する優位性
  (1) 情報の非対称性
  (2) 財政的コストの非対称性
  (3) 政治的コストの非対称性
 3 他の論点との関係 
  (1) テロの未然防止策との関係
  (2) テロの定義をめぐる議論との関係

第4章 テロの特徴(その2)――資金、攻撃手法、形態等
 1 テロ組織等の資金
  (1) 資金の規模
  (2) テロの未然防止策との関係
  (3) テロの資金源
 2 テロの攻撃手法
  (1) 概観
  (2) 自殺テロ
 3 テロの形態――「自立型」攻撃の広がり
  (1) 総論
  (2) 経緯・背景事情
  (3) テロ組織中枢との関係性―様々な形態
  (4) ホームグローン」と「ローンウルフ」
  Column テロとメディア

第5章 テロ発生のメカニズム――テロはなぜ発生するのか?
 1 分析の基本枠組み ―原因と機会
 2 攻撃を実行する側に関する要因
  (1) 攻撃実行の能力
  (2) 攻撃実行の意図
 3 攻撃実行の機会に関する要因
  Column 貧困とテロの関係
  Column 精神障害とテロの関係

第6章 テロの発生を未然防止するための諸施策
 1 攻撃を実行する側に関する要因に着目――原因論的アプローチ
  (1) 「攻撃実行の能力」に対する施策
  (2) 「攻撃実行の意図」に対する施策
 2 攻撃実行の機会(標的及び環境・現場空間)に関する要因に着目
 ――機会論的アプローチ

 第Ⅱ部 現実と理論の対話――テロに関する学術理論は現実の理解に役
 立つのか?

第7章 近年のテロ情勢の概観
 1 事案数、死者数の時系列的な推移――テロの事案数や死者数は増え
 ているのか?
 2 テロの発生地 ―テロはどこで発生しているのか?
  (1) 地域別の状況
  (2) 国別の状況
 3 テロ組織――最も多くの犠牲者を出しているテロ組織はどこか?
 4 その他の地域
  (1) アジア・大洋州(主に東南アジア)
  (2) 西欧及び北米
  【引用、参照した統計、資料等】 
  Column フィリピン南部におけるイスラム過激派勢力の動向
  Column テロと統計データ

第8章 アルカイダとISIS
 1 思 想
 2 アルカイダ
  (1) 略史
  (2) 911事件、アルカイダの変容
  (3) アルカイダの現在の脅威
 3 ISIS
  (1) 略史
  (2) ISISの変容
  (3) ISISの現在の脅威
  (4) ISISの急激な伸張、衰退の背景
 4 アルカイダとISISの類似点、相違点
 5 理論的なインプリケーション
  (1) テロの発生のメカニズムに関連するもの
  (2) 諸対策の効果に関連するもの

第9章 米国の国内テロをめぐる情勢――国際テロより深刻かもしれない?
 1 概念整理
  (1) 「国際テロ」と「国内テロ」
  (2) 「極右テロ」と「極左テロ」
 2 極左テロ
  (1) 略史
  (2) アンティーファ
 3 極右テロ
  (1) 概念整理
  (2) 極右テロ略史
  (3) 極右テロの特徴
  (4) その他
  Column ヘイトクライムと極右テロ

第10章 日本のテロ情勢の歴史
 1 「4つの波」以前
 2 「無政府主義者の波」――1880年代~1920年代
 3 「反植民地主義の波」――1920年代~1960年代
  (1) 反植民地主義の事例
  (2) その他の事例――右翼関連のテロ
 4 「新左翼の波」――1960年代~1990年代
  (1) 概観
  (2) 日本国内でのテロ
  (3) 日本国外でのテロ
 5 「宗教の波」 ――1980年代~現在
  (1) 概観
  (2) イスラム過激派関連以外――オウム真理教のテロ
  (3) イスラム過激派関連
 6 日本の情勢を分析する上で、理論は有用か?
  Column 戦後の右翼テロ等

第11章 日本におけるテロの発生を未然防止するための諸施策
 1 政府の施策、体制
  (1) 包括的な政策文書
  (2) 統括組織
 2 攻撃を実行する側に関する要因に着目した施策①――「攻撃実行の
 能力」に関する施策
  (1) 武力的な施策
  (2) 非武力的な施策
 3 攻撃を実行する側に関する要因に着目した施策② ―「攻撃実行の
 意図」に関する施策
  (1) 社会レベルの問題に着目した施策
  (2) 個人レベルの問題に着目した施策
 4 攻撃実行の機会(標的及び環境・現場空間)に関する要因に着目し
 た施策

 第Ⅲ部 総 括――テロに関する学術理論は将来をどのように見るの
 か?

第12章 テロ研究とテロ対策の将来
 1 テロに関する学術研究の主要論点
  (1) ジャクソン等の見方
  (2) シュミッド、フォレスト等の見方
  (3) 通底する課題
 2 ホームグローンとローンウルフの時代のテロの未然防止――「安全
 と権利自由の両立」は可能か?
  (1) 欧米諸国における近年のテロの脅威
  (2) 問題の所在―「両立」の実現の困難さ
  (3) 治安機関に対する民主的統制制度の充実
 3 そもそも「テロ対策」の目的とは何なのか?――テロに対する社会
 の心理的強靭性(レジリエンス)の強化
  (1) テロリストの真の目的は何か?
  (2) 「テロ対策」の真の目的とは何か?
  (3) テロに対する社会の心理的強靭性(レジリエンス)の強化
 4 終わりに


 本書注/引用文献一覧/写真出典/初出

 あとがき 
 索  引


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