国際刑法における上官責任とその国内法化
価格:6,050円 (消費税:550円)
ISBN978-4-7664-2737-0 C3032
奥付の初版発行年月:2021年03月 / 発売日:2021年03月中旬
▼中核犯罪は日本刑法で処罰可能なのか?
組織上位者の刑事責任を問うことに特化した理論的枠組の1つ「上官責任」。
この概念の形成過程と成立要件を精緻に分析し、比較法的検討を通じて、我が国における上官責任の立法のあり方について、具体的な提言を行う気鋭の研究。
横濱 和弥(ヨコハマ カズヤ)
信州大学経法学部講師。
1986年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)(2019年、慶應義塾大学)。日本学術振興会特別研究員PD(京都大学)を経て、2020年より現職。
専門:刑法、国際刑事法。
著作に、「インターネット上の抽象的危険犯と犯罪地―ドイツにおける近時の動向を参考に」法学政治学論究111号(2016年)、「オーストリアにおける中核犯罪の国内法化」法学研究90巻2号(共著、2017年)、「ドイツ刑法における供用客体の没収―日本刑法上の供用物件・供用準備物件の没収との対比を念頭に」法学研究92巻11号(2019年)、「特殊詐欺における没収・追徴と被害回復」法律時報92巻12号(2020年)ほか。
目次
はしがき
序論 本書の検討課題
第1節 国際刑事裁判と「指導者」処罰
第2節 ICC規程上の締約国の義務と日本の立法
第3節 本書の課題
第1部 国際刑法上の上官責任の形成史
第1章 上官責任の歴史的展開
第1節 はじめに
第2節 山下裁判
第3節 他の戦犯裁判
第4節 第一追加議定書
第5節 まとめ
第2章 アド・ホック法廷における上官責任
第1節 はじめに
第2節 総説
第3節 上官・部下関係
第4節 主観的要素
第5節 上官の不作為
第6節 上官責任の性質および他の関与形式との関係
第7節 まとめ
第2部 国際刑事裁判所における上官責任
第1章 序論――第2部の検討課題
第1節 はじめに
第2節 総説
第3節 上官責任の主体要件
第4節 不作為要件
第5節 主観的要件
第6節 関与形式体系中における上官責任の位置づけ
第2章 主体要件Ⅰ――軍の指揮官と文民の上官の区別
第1節 はじめに
第2節 アド・ホック法廷における文民の上官
第3節 ICCにおける「軍の指揮官」と「文民の上官」の区別基準
第4節 まとめ
第3章 主体要件Ⅱ――実質的管理
第1節 はじめに
第2節 「実質的管理」の内実
第3節 上官の作為義務と実質的管理
第4節 まとめ
第4章 不作為要件と上官責任の性質
第1節 はじめに
第2節 上官責任の条文上の位置づけと性質をめぐる議論
第3節 二分説
第4節 単一説
第5節 まとめ
第5章 主観的要件
第1節 はじめに
第2節 「知っていた」基準
第3節 「知っているべきであった」基準と「情報を意識的に無視し
た」基準
第4節 部下による犯罪の認識の時点
第5節 まとめ
第6章 ICCの関与形式体系における上官責任の位置づけ
第1節 はじめに:前章までの小括
第2節 ICCの関与形式
第3節 上官責任の性質と他の関与形式との関係
第4節 まとめ
第3部 国内刑法と上官責任
第1章 日本刑法と上官責任
第1節 はじめに
第2節 日本のICC加盟と国内立法
第3節 上官責任該当行為は日本刑法上処罰可能か?
第4節 日本刑法上不可罰となる領域を国内法化によって埋める必要は
あるか?
第5節 まとめ
第2章 ドイツ語圏諸国における上官責任関連規定
第1節 はじめに
第2節 ドイツ
第3節 スイス
第4節 オーストリア
第5節 比較法検討からの示唆
第6節 まとめ
結論
資料
1 参考条文
2 ICTYにおける上官責任の起訴・有罪一覧
3 ICTRにおける上官責任の起訴・有罪一覧
4 国際法廷の判決・決定一覧
5 文献一覧
初出一覧
索引