ハンス・ヨナス 未来への責任 やがて来たる子どもたちのための倫理学
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-7664-2755-4 C0010
奥付の初版発行年月:2021年07月 / 発売日:2021年07月中旬
▼科学技術文明において、現在世代は未来世代を滅ぼすことができる。
アウシュヴィッツの惨禍を生きた哲学者が描く、テクノロジー時代の新たな倫理学
▼気候変動、ゲノム編集、放射性廃棄物――
テクノロジーは、遠い未来にまで影響を及ぼす。
したがって私たちは、まだ生まれていない未来世代に対し、責任を負わなければならない。直感的にはそう思える。
しかし、存在していない者とは合意形成ができず、またそこに人権を認めることもできない。
ここに、ハンス・ヨナスの提唱した、まったく新しい未来倫理学の考え方が呼び出される。
ユダヤ人として二〇世紀を生き、自ら戦場に立った彼は、なぜ「未来への責任」を見出し、そしてどのような思索を重ねたのか。
気鋭の若手による、ヨナス研究の新たな地平。
戸谷 洋志(トヤ ヒロシ)
1988 年生まれ。哲学専攻。関西外国語大学・准教授。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。単著に『Jポップで考える哲学――自分を問い直すための15曲』(講談社、2016年)、『ハンス・ヨナスを読む』(堀之内出版、2018年)、『原子力の哲学』(集英社、2020年)、共著に『棋士と哲学者――僕らの哲学的対話』(イーストプレス、2018年)、『漂泊のアーレント 戦場のヨナス――ふたりの二〇世紀 二つの旅路』(慶應義塾大学出版会、2020年)がある。第31回暁烏敏賞(2015年)、第41回エネルギーフォーラム賞優秀賞(2021年)受賞。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
テクノロジーと未来/「本当に人間らしい生き方の永続」
先行研究の概観/本書の構成
第1章 人間と想像力――哲学的人間学Ⅰ
1 動物と人間の境界
宇宙人の思考実験/想像力とは何か
2 反転する想像力
無限の反省/人間像の形成
3 墓と形而上学
なぜ人は墓を建てるのか/形而上学の起源
第2章 歴史をめぐる問い――哲学的人間学Ⅱ
1 歴史とは何か
終わりなき歴史の運動/「自由の場は歴史である」
2 ユートピアに抗して
ユートピア主義の論理/凌駕されえない過去
「未来は未来それ自身である」
3 歴史の予測不可能性
歴史が予測される条件/新しい眼で世界を眺めること
第3章 死の存在論とニヒリズム――哲学的生命論Ⅰ
1 「死の存在論」の誕生
原始の生命観/魂と自然の分離/死の存在論
2 亡霊と化す精神
随伴現象説/シミュレーションされる思考
3 人間と世界の断絶
死の存在論の矛盾/ニヒリズムへの没落
第4章 テクノロジーの脅威――技術論
1 テクノロジーとはなにか?
無限の円環/終わりなき進歩
2 テクノロジーの脅威
予測不能・対処不能・回収不能/剣と鋤
3 テクノロジーと倫理
新しい倫理学の必要性/存在と当為の切断
形而上学的真理の否定/一つの突破口
第5章 生命とは何か――哲学的生命論Ⅱ
1 新たな生命論を目指して
アメーバが自由であるとしたら/哲学的生命論の方法
2 生命と自由
窮乏する自由/生命の空間性/生命の時間性
3 傷つきやすさと実存
生命の傷つきやすさ/死と実存
第6章 傷つきやすさへの責任――未来倫理学Ⅰ
1 責任とは何か
二つの責任概念/他者への気遣いとしての責任
2 責任の対象
生命の「呼び声」/乳飲み子への責任/子どもの他者性
3 責任の主体
責任と自由/「呼び声」を聴くこと
第7章 未来世代への責任――未来倫理学Ⅱ
1 未来世代への責任の基礎づけ
すべてに先行する責任/「未来の人間は存在するべきである」
2 開かれた歴史への責任
形而上学の開放性/その時々に、別々の仕方で
3 未来の予見
不吉な予言/恐怖に基づく発見術
第8章 アウシュヴィッツ以降の神――神学
1 なぜ神話を語るのか
「神は沈黙した」/仮説としての神話
2 無力な神の神話
無力な神/宇宙創成の物語/行為の不死性
3 神と記憶
記憶する神/責任と記憶
おわりに――やがて来る子どもたちのために
註
あとがき
参考文献
索 引