秘密の戦争 共産主義と東欧の20世紀
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2770-7 C3022
奥付の初版発行年月:2021年11月 / 発売日:2021年11月中旬
▼ソ連なき東欧を夢見て
第一次世界大戦によってヨーロッパの旧秩序が崩壊し、
スターリンとヒトラーが台頭する戦間期の東欧。
二強国の思惑に蹂躙されたポーランドで共産主義と民族主義に抗い、
秘かな戦いをくり広げた一人の男の数奇な生涯を通して
20世紀東欧史の最深部を描き出すティモシー・スナイダーの出世作。
ある時はモダニズムの画家、ある時はポーランド政府の高官、そして
スパイにして反ボリシェヴィキの闘士でもあったヘンリク・ユゼフスキ――。
第一次世界大戦によってヨーロッパの旧秩序が崩壊し、
スターリンとヒトラーが台頭する戦間期の東欧は、動乱の時代を迎えた。
ポーランドの東方政策の野望、ウクライナの国家建設の欲望、
そしてスターリンのソ連、それぞれの思惑が交錯する境界地帯で、
共産主義と民族主義に抗いつづけたヘンリク・ユゼフスキの数奇な生涯を通して
20世紀東欧史の最深部を描き出すティモシー・スナイダーの出世作。
ティモシー・スナイダー(ティモシー スナイダー)
1969年オハイオ州生まれ。イェール大学歴史学部教授。オクスフォード大学でPh.D.を取得。専攻は中東欧史、ホロコースト史、近代ナショナリズム研究。邦訳されている著書として『赤い大公――ハプスブルク家と東欧の20世紀』『ブラックアース――ホロコーストの歴史と教訓』『暴政――20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』『自由なき世界――フェイクデモクラシーと新たなファシズム』『アメリカの病――パンデミックが暴く自由と連帯の危機』(いずれも慶應義塾大学出版会、2014年、2016年、2017年、2020年、2021年)、『ブラッドランド』(2015年)、インタビュアーを務めたトニー・ジャットの遺著『20世紀を考える』(2015年)がある。2017年1月に初来日し、慶應義塾大学、東京大学などで講演を行った。ソ連崩壊を学部生として経験し、英独仏語だけでなく、スラブ諸語の一次資料をも自在に活用する学風は、ホロコースト論でも新境地を開いたと高く評価されている。ハンナ・アーレント賞をはじめ多彩な受賞歴を誇る。また、ウクライナ情勢の信頼できる解析者であるだけでなく、世界に蔓延するフェイクデモクラシーへの批判をさまざまなメディアを通じて発信しており、アメリカでもきわめて大きな影響力を持つオピニオンリーダーの一人と目されている。
松井 貴子(マツイ タカコ)
翻訳家。訳書に、ドメニコ・ロレンツァ他『ダ・ヴィンチ 天才の仕事』(二見書房、2007年)、ベンジャミン・リフキン他『人体解剖図』(二見書房、2007年)、マイケル・カーロヴィッツ『月の歩きかた』(二見書房、2008年)、エレン・フォンタナ『オードリー物語』(二見書房、2011年)、ウィリアム・ジャマーノ『ジャマーノ編集長 学術論文出版のすすめ』など。
梶 さやか(カジ サヤカ)
岩手大学人文社会科学部人間文化課程准教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。
主な著書に、『ポーランド国歌と近代史――ドンブロフスキのマズレク』(群像社、2016年)、『せめぎあう中東欧・ロシアの歴史認識問題――ナチズムと社会主義の過去をめぐる葛藤』(ミネルヴァ書房、2017年、共著)、『ロシア帝国の民族知識人――大学・学知・ネットワーク』(昭和堂、2014年、共著)などがある。
目次
プロローグ 尋問
隠滅
史料
環境
本書の構成
はじめに キュビスムと密謀
ポーランド軍事組織(POW)
キエフ進軍
冬の行軍
リガ条約
エルシノア城
Ⅰ 巧妙な上昇
第1章 信頼
ポーランドの共産主義勢力
「揺さぶり」作戦
文芸論争
シュムスキー事件
矛盾
第2章 プロメテウス運動のウクライナ
反共主義と反ユダヤ主義
諜報基地〈ヘトマン〉
GPU
見せしめ裁判
辻褄
第3章 政治という劇場
近代性
新伝統主義
ヴォウィン実験
共産主義勢力
民族主義勢力
プロメテウス運動
真相
第4章 冬のスパイたち
キエフのスパイたち
ルヴフ地区司令班
農業集団化政策
Ⅱ 政治の下降
第5章 スターリンの飢饉
ワルシャワの選択
大飢饉
スターリン主義
第6章 ポーランド人へのテロル
追放、民族浄化、テロル
ポーランドのスパイ活動
政治的判断
捏造されたポーランド軍事組織
第7章 革命の準備
内側からの革命
情報の国境線
革命の準備
期待
第8章 奪回作戦
ヴォウィンの正教会
思惑と結果
挙国一致
解任
奪回作戦
Ⅲ 局地戦としての世界戦争
第9章 ガラスの家
一九三九年夏
革命
ホロコースト
文化の担い手
ウクライナ人民共和国
ヴォウィンの革命
敵
第10章 ナチの占領
勝利に身を捧ぐ使徒
国内軍
一九四三年
自由と独立(WIN)
共産主義
第11章 女性たちの密謀
罠
作戦室
「国際主義」と「海から海へ」構想
第三課
秘密の生活
第12章 共産主義政権下の監獄
尋問
判決
エピローグ 再現
希望のあと
釈放のあと
スティル・ライフ
謝辞
解説 梶さやか
訳者あとがき
原註
公文書館
略表記
表記について
索引