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おいしいメニューでたどる20世紀食文化史食卓の上の韓国史

食卓の上の韓国史 おいしいメニューでたどる20世紀食文化史

周 永河:著, 丁田 隆:訳
A5判 464ページ 並製
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-7664-2784-4 C0022
奥付の初版発行年月:2021年12月 / 発売日:2021年12月中旬

内容紹介

キムチ、クッパ、ビビンバ、ソルロン湯、冷麺、チャプチェ、スンデ、チャヂャン麺、マッコリ、キンパ……
どのようにつくられて、食べられてきたの?

うまくて、深い、韓国料理の歴史100年!

「韓国の人びとは何をどのように食べてきたのだろうか?」

1876年の開港以降、朝鮮半島には多くの外国人が流入し、西洋・中国・日本の食が朝鮮の料理を大きく変化させた。近代化とともに多数の飲食店が誕生し、熱々のクッパやビビンバが人びとの腹を満たしていた――。日本の植民地支配、解放、朝鮮戦争、都市化、グローバル化を経て、韓国の食はどんな道をたどったのか。「食べること」をとおして韓国の歴史と社会をダイナミックに描く「食の人文学」!

●本書に登場する料理の一部
チャングッパ、ソルロンタン、鰍魚湯(チュオタン)、ユッケヂャン、ユッケビビンバ、冷麺、マンドゥ、蔘鶏湯、キムチ、神仙炉、九折坂(クジョルパン)、蕩平菜(タンピョンチェ)、全鰒炒(チョンボクチョ)、片肉(ピョニュク)、魚膾(オフェ)、薬酒、明卵、チャプチェ、マッコリ、タッペギグク、カルビ焼き、ピンデトク、スンデ、ポゴックク、ソガリメウン湯、クァメギ、オムク、キンパ、チャヂャン麺、ソジュ、ビールとチキン

著者プロフィール

周 永河(チュ ヨンハ)

1962年、慶尚南道・馬山市生まれ。韓国学中央研究院韓国学大学院教授。専門は東アジア食の人類学・民俗学。1998年、中国中央民族大学社会学及人類学学院にて民族学博士号を取得。2001年より現職。著書に、『料理戦争 文化戦争』(2000)、『中国、中国人、中国料理』(2000)、『絵のなかの料理、料理のなかの絵』(2005)、『チャポン、ちゃんぽん、チャンポン―東アジア食文化の歴史と現在』(2009)、『飲食人文学―食からみた韓国の歴史と文化』(2011)、『食卓の上の韓国史―メニューでみる20世紀韓国食文化史』(2013)、『食卓を調える―韓半島食文化史』(2013)、『長寿な英祖の食生活』(2014)、『韓国人はなぜこのように食べるか―食事スタイルからみる韓国食文化史』(2018)、『朝鮮の美食家たち』(2019)、『百年食史―大韓帝国の西洋式晩餐からKフードまで』(2020)、『KOREAN CUISINE: The History of Exchange and Hybridization』(2020)(以上、単著)、『韓国人、何を食べて生きたか―韓国現代食生活史』(2017)、『朝鮮知識人の読んだ料理本―居家必用事類全集の流入と歴史』(2018)、『飲食口述史―現代韓食の変化とともにあった5人の話』(2019)(以上、責任編集・共著)がある。

丁田 隆(マチダ タカシ)

1972年、福岡県北九州市生まれ。昌原大学校日語日文学科客員教授。専門は民俗学・韓国学。2011年より韓国政府招請奨学生として韓国学中央研究院韓国学大学院に在籍。2017年、同大学院にて文学博士号を取得(学位論文「〈民俗〉と〈弊習〉のあいだ―済州島弊習論への通時的アプローチ」)。論文に、「朝鮮時代済州島風俗をめぐる理念と政策」(2018)、「弊習・民俗・文化財―済州島在来文化をめぐる相克」(2019)等。共訳書に『済州島ノ概勢』(2019)。2015年より現職。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

日本の読者へ 
発刊によせて──食の人文学者がつむぐ、食卓の上の二〇世紀韓国史
 
プロローグ──韓国の食の歴史をどのように時代区分するか?

第一部 開港期、外国の食の到来

  済物浦の大仏ホテルと中華楼 
  西洋人、ソウルで食事 
  貞洞花夫人ソンタクとソンタクホテル
  日本人の移住と食品工業の流入 

第二部 クッパ屋

0 最古の外食店、クッパ屋
  たくさん召し上がれ! 
  一杯のキニ食、チャングッパ

1 庶民のキニ、ソルロン湯(タン)
  ソルロン湯の由来 
  ソウルの名物となる 
  本来の味を失ったソルロン湯 

2 秋の食客をとりこにした鰍魚湯(チュオタン)
  鰍魚湯屋の風景 
  鰍魚湯のレシピ
  年じゅう食べられるのは養殖ドジョウだけ 

3 ケヂャンの変移、ユッケヂャン
  ケヂャンをめぐる古い論争 
  ケヂャンから肉(ユッ)ケヂャンへ 

4 ユッケビビンバ誕生の秘密
  ビビンバの本来の姿 
  ユッケビビンバの誕生 
  ビビンバのヤンニョムに固定されたコチュヂャン 

5 麺屋(ミョノク)の看板メニュー、冷麺(ネンミョン)とマンドゥ
  冷麺、冬の味覚から夏の味覚へ 
  冷麺+味の素=美味 
  開城を代表する味覚、ピョンス
  粉モノの新しいかたち、マンドゥの大衆化

6 近代の生んだ料理、蔘鶏湯(サムゲタン)
  鶏肉消費の拡大と鶏料理 
  鶏肉より人蔘をフィーチャーした蔘鶏湯 

[外伝] キムチ、朝鮮白菜から胡白菜へ
  テーブルいっぱいのごちそうも、キムチがなけりゃ…… 
  朝鮮白菜から胡白菜へ 

第三部 朝鮮料理屋

0 高級飲食店、朝鮮料理屋の誕生
  元祖朝鮮料理屋のストーリー
  いざ、明月館へ! 

1 神仙炉(シンソンロ)、朝鮮料理屋のシンボルとなる
  料理店メニューの頂点、神仙炉 
  神仙炉は料理ではなく器の名称 
  心までほかほかになる神仙炉

2 九折坂(クジョルパン)は宮廷料理か
  レアな食器、九折坂 
  九折坂の主役は小麦煎餠

3 韓定食の定番メニュー、蕩平菜(タンピョンチェ)
  英祖の蕩平策に由来? 
  蕩平菜は淡泊さが持ち味 

4 全鰒炒(チョンボクチョ)が料理屋の食卓にあがるまで
  宮中の宴から明月館の食卓にのぼった全鰒炒 
  干しアワビから缶詰まで
  大量採取が全滅させた天然アワビ

5 牛片肉(ピョニュク)、高級料亭の至高のメニュー
  ヤンジモリ片肉・オプチン片肉・チュユク片肉・セモリ片肉 
  政策的に誘導された豚肉料理の流行
 
6 韓国の魚膾(オフェ)から日本の刺身へ
  魚膾と刺身の違い
  植民地期の魚膾料理法

7 日本酒に追いやられた薬酒(ヤクチュ)
  両班家で愛された高級酒、薬酒 
  朝鮮半島に進出した日本の清酒、正宗(チョンジョン)
  いまや知る人もない薬酒

8 明卵(ミョンラン)が博多へ渡ったいきさつ
  冬に食べた明卵ジョッ
  帝国へと渡った明卵

[外伝] 日・中・韓三国の合作、春雨チャプチェ
  在来支那製唐麺 
  醸造醤油で味を調えた春雨チャプチェ

[外伝] 料理屋の人びと、妓生(キーセン)とボーイ
  朝鮮料理屋の花、妓生 
  ボーイの重労働

第四部 テポ屋

0 疲れた庶民の安息の場、テポ屋
  テポ屋の前身、立ち飲み屋 
  立ち飲み屋からテポ屋へ 

1 テポ屋の「キニ酒」、マッコリ
  農民と労働者の酒 
  政府、マッコリに介入 

2 酒湯の頂点、全州タッペギグク
  全州名物、タッペギグク
  しんなりとゆがいた豆もやしに、塩をふってすする…… 
  金を払って食べるのが本流

3 カルビ焼きの元祖はテポ屋のメニュー
  脂がジュワっと、やわらかい肉のうまみ 
  カルビ焼き食堂街の登場 
  分裂する消費者層 

4 露店ではじまった安価な酒の友、ピンデトク
  貧者のトク、ピンデトク 
  ピンデトクの思想 
  解放後に最も発展した食べ物

5 1960年代になって酒の肴となった豚スンデ
  牛、豚、犬、魚など、スンデのいろいろ 
  安価な春雨豚肉スンデの流行 

6 ポゴッククが市民権を得るまで
  ソンビたちが命がけで食べたフグ 
  日本人の食べ残しのフグを食って死んだ話
  ついに市民権を得たポゴックク

7 滋養食から酒飲みの珍味となったソガリメウン湯(タン)
  滋養食材、鱖魚、錦鱗魚
  ソガリチヂミからソガリメウン湯へ
  天然から養殖へ

[外伝] 植民地期の朝鮮人醸造業者、張寅永(チャンイニョン)と天一醸造場
[外伝] ニシンのクァメギとサンマのクァメギ

第五部 解放後、食のハイブリッド化とグローバル化

0 飲食店とメニューのたゆみなき進化

1 韓国料理に定着した日本食
  カマボコ・オムク・オデン──植民統治が残したもの
  日本食から生まれたキンパ

2 粉モノ飲食店の急成長──パン、チャヂャン麺、インスタントラーメン
  植民地期に出発した近代製粉業
  パンの行商からフランチャイズ・ベーカリーまで
  解放後に大衆料理となったチャヂャン麺
  韓国チャヂャン麺の誕生
  小麦の無償供給と混粉食奨励運動
  粉モノ料理の新たな進化
 
3 食品工業成長の光と影
  工場製醤油の変貌
  希釈式焼酎の全盛時代
  大型食品会社の登場と市場の独占・寡占

4 韓国飲食店のマクドナルド化
  ホップ屋から「チメク」まで
  韓国飲食店のフランチャイズ化

エピローグ――批判的な食の研究、韓国社会を読み解く新たな視座

訳者あとがき
原注
索引


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