韓国「建国」の起源を探る 三・一独立運動とナショナリズムの変遷
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-7664-2785-1 C3022
奥付の初版発行年月:2021年12月 / 発売日:2021年12月上旬
「民主主義国家・韓国」は、三・一独立運動からはじまったのか?
日本・中国・米欧・ロシアを含めたグローバルな視点から独立運動の歴史的過程を丹念に描き、文在寅政権の掲げる「建国」神話を問い直す
三・一独立運動とは、1919年3月1日に日本の植民地支配からの「解放」を目指した朝鮮人らが起こした示威運動である。現在の文在寅政権は、この運動の歴史的評価をさらに高め、1919年を「民主主義国家・韓国」の「建国」年と位置づける言説を浸透させようとしている。
右派左派の衝突が激化し、歴史解釈自体が政治化するなかで、本書はあらためて三・一独立運動を中心とする独立運動史を、世界史の視点から復元する。
「建国」問題の核心・大韓民国臨時政府の樹立、第一次世界大戦において提唱された「民族自決」の影響、日本・中国・米欧・ロシアを舞台にグローバル化していく過程、北朝鮮を生み出した社会主義の可能性と南北分断に着目しつつ、独立運動をダイナミックに描くことで、分裂する歴史認識の溝を埋め、未来への新たな展望を拓こうとする。
小野 容照(オノ ヤステル)
1982年横浜市生まれ。九州大学大学院人文科学研究院准教授。専門は朝鮮近代史。2012年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員、京都大学人文科学研究所助教を経て2017年より現職。
著書に『朝鮮独立運動と東アジア 1910-1925』(思文閣出版、2013年)、『帝国日本と朝鮮野球――憧憬とナショナリズムの隘路』(中央公論新社、2017年)、共著書に『「甲子園」の眺め方――歴史としての高校野球』(小さ子社、2018年)などがある。
目次
はじめに
序 章 三・一革命――独立運動と変容する韓国ナショナリズム
1 大韓民国憲法・前文
2 ニューライトと建国節
3 変容する大韓民国臨時政府の歴史的位置づけ
4 「三・一革命」論の台頭とその論理
5 「三・一革命」を乗り越える
第一章 第一次世界大戦――共和制か帝政か
1 朝鮮半島から海外へ――韓国併合と武断政治
2 敵の敵は味方――ロシアとの提携と第一次世界大戦の勃発
3 対華二十一ヵ条要求――革命派中国人との提携の模索
4 幻の中国・ドイツ連合軍――手段としての帝政復活
第二章 民族自決――戦略としての民主主義
1 ロシア二月革命の衝撃――大韓民国臨時政府の起源
2 吉野作造とロシア革命――翻訳語「民族自決」の誕生①
3 アメリカの参戦と在米朝鮮人
4 ウィルソンの「民族」と「自決」概念――翻訳語「民族自決」の誕
生②
5 終 戦――アメリカと上海における独立請願
6 二・八独立宣言
7 ロシア内戦――朝鮮独立運動の新展開
第三章 三・一独立運動――支配者、協力者、そして情報源としての日本
1 万歳デモの展開
2 三・一独立運動の準備過程――「自決」とパリ講和会議の情報源
3 新宿中村屋と崔南善――ウィルソンと日本政府宛の請願書の国際発
信
4 三・一独立運動と日本社会
5 尹致昊の三・一独立運動批判
第四章 朝鮮ナショナリズム――三・一後の独立運動の行方
1 大韓民国臨時政府というアピール
2 共産主義運動の台頭――臨時政府と二つの高麗共産党
3 朝鮮半島における独立運動の展開と分裂
終 章 韓国「建国」の起源
注
あとがき
図版出典一覧
索引(人名・事項)