国家・メディア・コミュニティ
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-7664-2787-5 C3031
奥付の初版発行年月:2022年02月 / 発売日:2022年01月下旬
▼近代国家の成立にマスメディアはどのように寄与したのか?
▼マス・コミュニケーション研究第一人者の集大成となる1冊!
近代国民国家の成立と維持にとって、マス・コミュニケーションの普及と発達が与えた影響を、国家・メディア・コミュニティの三者の連関から読み解く。
また、書籍や沖縄地方紙等を対象に、戦後日本社会における歴史認識問題についての考察を進めていく。
大石 裕(オオイシ ユタカ)
慶應義塾大学名誉教授、十文字学園女子大学特別招聘教授、東海大学文化社会学部客員教授。博士(法学)。
1956年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学。(財)電気通信政策総合研究所研究員、関西大学社会学部助教授、東京大学社会情報研究所客員助教授、慶應義塾大学法学部政治学科助教授、同教授、ウエストミンスター大学メディア学部訪問教授、エセックス大学政治学部訪問研究員などを経て現職。
【主要著作】
・『地域情報化―理論と政策』世界思想社、1992年(テレコム社会科学賞)。
・『政治コミュニケーション―理論と分析』勁草書房、1998年(櫻田会奨励賞)。
・『ジャーナリズムとメディア言説』勁草書房、2005年(慶應義塾賞)。
・『メディアの中の政治』勁草書房、2014年。
・『批判する/批判されるジャーナリズム』慶應義塾大学出版会、2017年。
・『コミュニケーション研究―社会の中のメディア(第5版)』慶應義塾大学出版会、2022年。
【主要訳書】
・M. マコームズ他『ニュースメディアと世論』関西大学出版部、1994年。
・D. マクウェール『マス・コミュニケーション研究』(監訳)慶應義塾大学出版会、2010年。
目次
はじめに
第一章 マス・コミュニケーションと近代国民国家
一 国家と国民的アイデンティティ
二 マス・コミュニケーションの発展と国民国家の形成
1 「権威主義」体制の時代
2 「国民」と「市民」、そして「公共圏」
3 マス・メディアの国民化と自由主義理論の変化
4 「社会帝国主義」とマルクス・レーニン主義
5 政治多元主義と国民国家のナショナリズム
三 大衆国家と宣伝・キャンペーン
1 大衆社会、そして大衆国家
2 戦争報道と動員されるメディア
3 ラジオの普及と制度化
4 大衆国家によるマス・メディアの活用
四 テレビ時代における国家観の多様化と変容
1 テレビ時代の始まりと放送制度
2 「コミュニケーション発展(Communication and
Development)」モデル
3 国家論の「復権」とマス・コミュニケーション
五 結び――グローバリゼーションとメディア変容――
第二章 情報社会論再考――グローバリゼーションとの関連を中心に――
一 はじめに
二 情報社会論の始まりと普及
1 マルクス主義と情報社会論
2 情報社会論の諸相
三 革命、あるいは再生産?
1 情報社会論とそれに対する批判
2 「情報化」の二つのとらえ方
四 情報化の進展とグローバリゼーション、そして「歴史の終わり」
1 グローバリゼーションと情報社会論
2 「歴史の終わり」と新自由主義
3 情報化の進展と新自由主義
4 「第三の道」の提唱
五 デジタル・ディバイド論、そして「帝国」論
六 結 び
第三章 情報化の進展とコミュニティ(論)の変容――国民国家との関連から――
一 はじめに――コミュニティとは何か――
二 コミュニティと国民国家
1 マッキーヴァーのコミュニティ論
2 コミュニティとしての国民国家
三 情報化の進展とコミュニティ論の変容
1 政治発展論と政治多元主義論
2 「コミュニケーション発展モデル」の中のコミュニティ
3 コミュニティ(論)の多様化とオーディエンス(論)の変容
四 「想像のコミュニティ(共同体)」としての国民国家
1 国民的アイデンティティと国民文化
2 国民文化の権力的側面
3 「想像の共同体」論のインパクト
4 メディア・イベントと国民の再生産
五 結 び
第四章 多様化・多層化するコミュニティとコミュニティ・メディア
一 はじめに――情報化とグローバリゼーションの進展
二 対抗文化と地域コミュニティ
三 グローバリゼーションの中のコミュニティ――ディアスポラを中心
に――
四 コミュニティの再形成と「コミュニティの結束」
五 コミュニティ・メディアの変容とヴァーチャル・コミュニティ
六 結 び
第五章 戦後日本社会のメディア・ナショナリズム
一 はじめに――メディア・ナショナリズムとは――
二 メディア・ナショナリズムと「司馬史観」
三 メディア環境の変化とメディア・ナショナリズム
四 戦後日本のナショナリズムの変容
1 ナショナリズムの論じられ方
2 ナショナリズム意識の変容
五 メディアによるナショナリズムの顕在化
六 結び――近年のナショナリズム意識の動向――
第六章 日本のソフト・パワーの「歴史性」と「政治性」
一 日本の「ソフト・パワー=ブランド」戦略
二 日本の自己イメージとソフト・パワー(Ⅰ)――湾岸戦争以前――
三 日本の自己イメージとソフト・パワー(Ⅱ)――一九九〇年代の変
容――
四 日本の自己イメージとソフト・パワー(Ⅲ)――「同時多発テロ」
と小泉「官邸外交」――
五 安倍外交のディレンマとアジア・ゲートウェイ構想
六 結び――連関する「平和国家」と「政治大国」――
第七章 「物語」としての政治と歴史認識
一 はじめに──言説と文脈――
二 集合的記憶とニュースの物語
三 「物語」と構築・構成される「歴史」(一)――歴史教科書問題
――
四 「物語」と構築・構成される「歴史」(二)――歴史小説――
五 「物語」と構築・構成される「歴史」(三)――評論――
六 結 び
第八章 ジャーナリズムと歴史認識
一 はじめに──公共圏としてのメディア――
二 『敗戦後論』の歴史認識
三 『永続敗戦論──戦後日本の核心――』の歴史認識
四 結び――公共圏の中のジャーナリズム――
第九章 沖縄地方紙と沖縄の「地方益」
一 はじめに──「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」(二〇一
三年四月二八日)をめぐって──
二 沖縄地方紙に関する評価
三 沖縄地方紙へのインタビュー結果
1 沖縄地方紙の組織編成とニュースの制作過程
2 社説による社論の提示
3 普天間基地の辺野古移設問題
4 翁長県政と「オール沖縄」
5 「国益」と「地方益」
6 沖縄、沖縄地方紙に対する認識
四 考 察
あとがき
初出一覧
参考文献 巻末4
索 引 巻末1