<サラリーマン>のメディア史
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-7664-2832-2 C0036
奥付の初版発行年月:2022年08月 / 発売日:2022年08月上旬
▼大衆化 と 差異化…。「普通の人々」の昭和・平成を描く。
▼「サラリーマン」という戦後の成人男性の典型的な表象が揺らぎつつある昨今。
昭和・平成の映画、雑誌、ドラマ、漫画など…サラリーマンがサラリーマンをまなざすメディアの分析を通じ、大衆化と差異化という視点から、日本社会を支える〈普通の人々〉の通史を描く。
▼我らしがない「サラリーマン」なのか?
「サラリーマン」という言葉を聞いた時に、皆さんは何をイメージするだろうか。
やや古い響きがあるかもしれない。現在であれば、ビジネスパーソンや会社員と言った方が一般的だろう。
それでも本書は、あえて「サラリーマン」という言葉を使っている。
なぜならば、「サラリーマン」という言葉が、戦後日本社会において典型的な成人男性を表象するイメージとして定着していたからである。
「サラリーマン」という言葉に違和感があるのであれば、適宜、ビジネスパーソンや会社員と読み替えてもらってもかまわない。
本書はスーツを着て職場に毎朝通勤し、仕事をする…このような、日本社会を支える多くの人のメディア史を描くものである。
谷原 吏(タニハラ ツカサ)
1986年生まれ。
神田外語大学外国語学部専任講師、国際大学GLOCOM客員研究員。博士(社会学)。
2018年第6回関西社会学会大会奨励賞。
専門分野:メディア史、メデイア効果論、情報社会論、計量社会学等。
本書にまとめられた研究の他、“The bias of Twitter as an agenda-setter on COVID-19: An empirical research using log data and survey data in Japan”, Communication and the Public 7 (2), 2022、“Effects of corrections on COVID-19-related misinformation: Cross-media empirical analyses in Japan”, International Journal of Web Based Communities 18 (1), 2022ほか。
目次
まえがき
1章 なぜ「『サラリーマン』のメディア史」か
1 「サラリーマン」が「サラリーマン」をまなざす/2 本書の方法
論/3 本書で扱う史資料/4 本書の構成
2章 戦前期における職員層とは何者だったのか――「サラリーマン」のメディア史序論
1 戦前期の「サラリーマン」/2 しがない「サラリーマン」として
の職員層/3 「知識人」としての職員層/4 「消費者」としての職
員層/5 戦前期における職員層の複眼的な理解に向けて
3章 1950年代及び60年代におけるサラリーマンイメージの変容過程――東宝サラリーマン映画を題材として
1 大衆化された「サラリーマン」/2 東宝サラリーマン映画を研究
する/3 『三等重役』及び「社長シリーズ」――〈出世主義〉と〈家
族主義〉/4 『ニッポン無責任時代』及び「日本一シリーズ」――
〈能力主義〉との関連/5 「サラリーマン」の大衆化
4章 「サラリーマン」と雑誌――1980年代における「知」の変容
1 「サラリーマン」と雑誌/2 戦前から高度経済成長期―教養主義
の名残/3 1980年代における知の編成の変容――『BIG tomorro
w』について/4 1980年代のサラリーマンを取り巻く競争環境/
5 1990年代以降の動向/6 「出世」と「処世術」
5章 「サラリーマン」を支えた上昇アスピレーション――1980年代以降のビジネス雑誌
1 立身出世主義は終焉したのか/2 調査対象資料――『BIG tomo
rrow』と『プレジデント』について/3 1980年代――年齢層によっ
て異なる在り様/4 1990年代――方針転換に向けて/5 2000年代
――『BIG tomorrow』の衰退と『プレジデント』の成功/6 修養主
義と心理主義
6章 処世術言説は、誰がどのように読んでいるのか
1 「こんなの、真面目に読んでる人いるの?」に応えるために/
2 誰がどれくらい読んでいるのか/3 どのように読まれている
のか―読みの両義性/4 「肯定的な読み」に関連する要因――自
己確認の参照点としてのアドバイス記事/5 「学習メディア」と
しての処世術言説
7章 メディア史の中の『課長 島耕作』と『半沢直樹』
1 『課長 島耕作』と「サラリーマンの時代」/2 『半沢直樹』に
おけるリアリティの不在
8章 「サラリーマン」のメディア史における「大衆化」と「差異化」の過程
1 本書の結論/2 本書の意義
あとがき/初出一覧/参考文献/索 引