福沢諭吉の初期思想 近代的概念の受容と変容
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2838-4 C3010
奥付の初版発行年月:2022年08月 / 発売日:2022年08月中旬
▼翻訳者としての福沢諭吉は、何を、どのように訳し、何を訳さなかったのか。
幕末~明治初年、福沢諭吉が読み込んだ西洋の書籍と、それを翻訳・翻案して刊行した書籍の文章とを丹念に検討し、そこにあらわれる翻訳思想、西洋の近代的概念の受容・変容過程を読み解く。
※著者名の「テユン」は、「兌玧」です。
姜 テユン(カン テユン)
1987年、韓国蔚山生まれ。
2014年、韓国外国語大学校政治外交学科卒業。
2021年、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了。博士(法学)(慶應義塾大学)。
専門は近代日本政治思想史・政治史、近代朝鮮史。
現在、慶應義塾大学法学部非常勤講師、慶應義塾福澤研究センター調査員。
目次
序
凡例
第1章 人種観――S. A. ミッチェル問題
一 はじめに
二 福沢とミッチェル
(一) School Geography と New School Geography
(二) 初期福沢の問題意識とミッチェル
(三) ミッチェルの人間観
1 宗教
2 人種観
(四) 福沢の初期著作にあらわれるミッチェルの影響
三 福沢の継承と削除
(一) 継承
(二) 削除
四 おわりに
第2章 人間観――権利、義務、労働
一 はじめに
二 『西洋事情』外編
(一) 『西洋事情』外編と『政治経済学』
(二) 政治的人間観と経済的人間観
(三) 権利と義務
1 権利、そして文明社会の尺度としての自由
2 義務としての経済的独立と遵法
3 社会の領域に編入した経済領域:私有
(四) まとめ
三 『西洋事情』二編「巻之一」
(一) 『イギリス法釈義』における権利と義務
1 「人間の通義」
2 権利と義務の相互性
(二) 「収税論」
(三) まとめ
四 労働問題:学問と労働
(一) 『政治経済学』と『学問のすゝめ』においての労働
1 労働認識
2 単純労働と知的労働
3 スキル獲得
(二) まとめ
五 おわりに
第3章 中産層育成構想
一 はじめに
二 福沢の中産層育成構想
三 中産層への着目過程
(一) 『西洋事情』にあらわれる「中人」、「中等」
(二) 自身の経験
四 福沢の中産層構想の特徴
(一) 中産層と「学者」
(二) 「富」と「学問」と「慶応義塾」
(三) 中産層育成活動
五 おわりに
第4章 民権認識と初期思想――『学者安心論』を中心に
一 はじめに
二 福沢の自由民権運動評価
(一) 賛成と反対
(二) 『学者安心論』
1 福沢の民権論と「政」
2 民権論者への批判
3 政治的意味としての民権意識
(三) 福沢の立場
三 初期思想との関係
(一) 内在的改革意識
(二) 漸進的秩序維持
(三) 幕臣活動
四 おわりに
第5章 自然権主義と経験主義の受容――「公理」と「功利」問題
一 はじめに
二 自然権主義の「公理」と経験主義の「功利」
(一) 「公理」と「功利」
(二) ブラックストンとベンサムの論争
三 福沢の自然権主義受容
(一) 天賦人権
(二) 社会契約論
(三) 天賦人権と民権
四 自然権思想の功利的受容の背景
(一) 目的性を持った学者認識
(二) キリスト教的絶対性に対する認識
(三) 『西洋事情』の外編と原書との関係
五 おわりに
第6章 西洋思想受容の方法論――「分限」
一 はじめに
二 方法論としての「分限」
(一) 翻訳語「分限」
(二) 「分限」概念の展開
(三) 「分限」の方法論:事例
1 自由
2 礼儀
3 人間の性質――貪吝、奢侈、誹謗
4 文明段階論
5 親孝行
(四) 「分限」の方法論
三 思想としての「分限」
(一) 「分限」と明治維新
(二) 「分限」のオリジナリティ
四 おわりに
あとがき
参考文献一覧
索引