高齢者向け民間住宅の論点と解釈 有料老人ホーム・サ高住入居契約の法的分析
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-7664-2839-1 C3032
奥付の初版発行年月:2022年08月 / 発売日:2022年08月中旬
▼「終の棲家」の契約は、どうあるべきか?
▼超高齢化が進む現代社会。「高齢者福祉」の理念を実現するための契約、法律構成はどうあるべきなのか?
▼「有料老人ホーム」、「サービス付高齢者住宅(サ高住)」、「シニア向け分譲マンション」契約を徹底的に分析する!
「有料老人ホーム」、「サービス付高齢者住宅(サ高住)」、「シニア向け分譲マンション」。これらは同じようにみえるかもしれないが、同じ契約ではない。
前2者は、老人福祉法、高齢者すまい法により行政規制がなされているが、シニア向け分譲マンションについては、特別法はなく法の欠缺領域である。そして、いずれの契約関係についてもこの分野についての民事特別法はない。
「高齢者福祉」の理念を実現するための契約、法律構成はどうあるべきなのか?
超高齢化が進む現代社会における、介護等の福祉サービスが付いた高齢者向けの民間住居(居住施設)を中心に、その私法上の問題点を鋭く検討する!
平野 裕之(ヒラノ ヒロユキ)
慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)教授。早稲田大学法学部非常勤講師、日本大学大学院法務研究科(法科大学院)非常勤講師。
1981年司法試験合格、1982年明治大学法学部卒業、1984年明治大学大学院法学研究科博士前期課程修了、1984年明治大学法学部助手、1987年明治大学法学部専任講師、1990年明治大学法学部助教授、1995年明治大学法学部教授を経て現職。
著書に、『製造物責任法の論点と解釈』(慶應義塾大学出版会、2021年)、『新債権法の論点と解釈[第2版]』(慶應義塾大学出版会、2021年)、『新・考える民法I―民法総則』『新・考える民法II―物権・担保物権』『新・考える民法III―債権総論』『新・考える民法IV―債権各論』(慶應義塾大学出版会、2018-2020年)、『民法総則』『物権法』『担保物権法』『債権総論』『債権各論I 契約法』『債権各論II 事務管理・不当利得・不法行為』(日本評論社、2016-2019年)、『コア・テキスト民法I民法総則〔第2版〕』『同II物権法〔第2版〕』『同III担保物権法』『同IV債権総論〔第2版〕』『同V契約法〔第2版〕』『同VI事務管理・不当利得・不法行為〔第2版〕』(新世社、2017-2019年)、『民法総合3担保物権法〔第2版〕』『同5契約法』『同6不法行為法〔第3版〕』(信山社、2008-2013年)、『製造物責任の理論と法解釈』(信山社、1990年)、『保証人保護の判例総合解説〔第2版〕』(信山社、2005年)、『間接被害者の判例総合解説』(信山社、2005年)ほか多数。
目次
はしがき/参考文献/略語表/有料老人ホーム・サ高住関連年表
序 章
(1) 高齢者の特性
(2) 能力の衰えが不可避な高齢者の生活拠点――高齢者の特性にあわ
せた居住の要請
(3) 現行法の状況と本書の対象及び構成
第1編 総論 1――老人福祉法関連
第1章 有料老人ホーム総論――有料老人ホームの意義と法規制
1 有料老人ホームの歴史及び老人福祉法の定義規定
(1) 有料老人ホームの法規制の歴史
(2) 有料老人ホームとは――老人福祉法上の定義
2 有料老人ホームの要件の分析
(1) 積極的要件
(2) 老人福祉施設等ではないこと(消極的要件)
3 有料老人ホームについての法規制
(1) 老人福祉法の目的――老人居宅生活支援事業
(2) 老人福祉法における有料老人ホームの規制
(3) 老人福祉法改正による適用範囲の拡大
第2章 有料老人ホーム入居契約の法的分析1――月払い方式の場合
1 有料老人ホーム入居契約におけるホーム設置者の給付内容
(1) 入居させ介護等のサービスの提供が必要
(2) ホーム設置者の基本的給付義務
2 入居部分の対価の支払方式――前払い方式を除く
(1) 月払い賃料方式
(2) 月払い賃料・前払金併用方式
第3章 有料老人ホーム入居契約の法的分析2――前払金方式
1 前払金方式の入居契約の特殊性
(1) 前払金の支払により終身居住ができる
(2) 前払金による終身利用は射倖契約である
2 前払金方式の終身賃貸借契約の法的分析
(1) 賃料の前払いの合意も可能
(2) 不確定期間たる終身の賃貸借も有効
3 前払金の規制の歴史――2011年老人福祉法改正に至るまで
(1) あり方検討会報告書の提言(1998年)
(2) 国民生活センター「有料老人ホームをめぐる消費者問題に関する
調査研究」(2006年)
(3) 内閣府消費者委員会「有料老人ホームの前払金に係る契約の問題
に関する建議」(2010年)
4 2011年改正老人福祉法
(1) 改正前に前払金につき指摘された問題点のまとめ
(2) 前払金の定義と敷金と対価以外の金品受領禁止
5 老人福祉法改正後の日弁連意見書(2012年)と現状
(1) 日弁連意見書(2012年)
(2) 前払金による入居契約をめぐる現状と解釈
6 前払金による入居契約をめぐる判例――不返還条項の有効性
(1) 二段階の前払金の区別をしない判例――終身利用の対価とする判
例
(2) 二段階の前払金を区別し射倖的性格を容認する判例
(3) 想定居住期間前後を区別し相互扶助的性格を認める判例
7 本書の立場――利用部分は二段階の混合契約
(1) 居住を目的とする2 つの異質な契約による二段階構成
(2) 「対価」性及び現行法での許容性、更に立法論へ
8 前払金方式による入居契約をめぐる関連問題
(1) 修繕義務及び賃料減額
(2) 債務不履行解除と損害賠償
(3) 借地借家法の適用
第2編 総論 2――高齢者住まい法関連
第4章 高齢者住まい法によるサ高住制度の導入
1 高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)の制定
(1) 法律の目的とサ高住への一本化
(2) サービス付き高齢者向け住宅事業の登録制度
2 サ高住事業者の登録制度による規制
(1) 登録制度と登録の受理要件
(2) サ高住事業者の業務規制
第5章 終身建物賃貸借――福祉サービスのない住宅も可能
1 終身建物賃貸借の意義と事業の認可
(1) 終身建物賃貸借とは
(2) 終身建物賃貸借借事業を認可制とした
(3) 期間付死亡時終了建物賃貸借
2 終身建物賃貸借の契約関係
(1) 終身建物賃貸借の解約申入れ
(2) 賃借人死亡後の同居者の保護
(3) その他の問題点
第3編 有料老人ホーム及びサ高住の入居契約 各論 1――契約締結など
第6章 契約の締結関係
1 契約締結前の交渉段階
(1) 広告表示──不当表示の禁止
(2) 体験入居──有料老人ホーム
2 契約締結前における書面による重要事項説明義務、契約書作成義務
(1) サ高住における重要事項説明義務──高齢者住まい法
(2) 有料老人ホームにおける重要事項説明義務──指導指針
3 契約締結の自由
(1) 契約締結の自由とその例外立法
(2) 例外立法がなくても全く自由ではない
4 入居契約の契約締結――当事者及び代理人による締結
(1) 入居契約の締結当事者
(2) 代理人による契約の締結及び第三者のためにする契約
5 入居契約とサービス提供契約との関係――不可分一体の混合契約
(1) 総論――複数の給付が一体的になっている場合と契約の個数
(2) 入居とサービス提供という複数の給付を目的とした契約
6 定型約款規制
(1) 定型約款の意義と契約内容になるための要件
(2) 定型約款中の不当条項の規制
第7章 入居契約の無効・取消し等
1 意思表示の効力発生時期
(1) 到達主義の採用・意思表示の方式は自由
(2) 特約による修正
2 民法上の取消権
(1) 詐欺または強迫による意思表示の取消し
(2) 錯誤取消し
3 消費者取消権
(1) 重要事項不実告知及び断定的判断の提供
(2) 重要事項利益不実告知・不利益不告知
4 入居後3か月間の即時解除権留保条項の設定義務
(1) 平成22年消費者委員会建議による問題提起
(2) 入居者の解除権を認める契約締結義務(老福法29条10項)
第4編 有料老人ホーム及びサ高住の入居契約 各論 2――契約当事者の
権利義務
第8章 ホーム設置者等の契約上の義務
1 居室の専用利用・共用施設の共同利用+介護等サービス提供
2 居室部分の専用利用+共用部分の共同利用
(1) 居室部分は賃貸借契約――前払金方式の場合に想定居住期間経過
後の部分は射倖契約
(2) 賃貸借の規定の適用
3 食事提供、介護サービス等の福祉サービスの提供
第9章 ホーム設置者等の損害賠償責任等
1 債務不履行による損害賠償責任等――安全配慮義務以外の債務不履
行
(1) 債務の履行不能以外
(2) 債務の履行不能
(3) ホーム設置者等による施設の譲渡
2 入居者の安全に対するホーム設置者等の義務――介護事故
(1) 指導指針において求められている措置
(2) 判例に現れたホーム設置者等の安全配慮義務等
3 ホーム設置者等の不法行為による損害賠償義務――債務不履行との
関係
(1) 入居者に対する責任
(2) 入居者の行為についてのホーム設置者等の第三者に対する責任
4 ホーム設置者等の倒産について
(1) ホーム設置者等の倒産についての取締役の責任
(2) 前払金返還の保全措置
5 従業員に対するホーム設置者等の責任――安全配慮義務
第10章 入居者の義務
1 権利金その他の金品の引渡し――ホーム設置者等による受領禁止
2 入居者の給付義務
(1) 前払金(入居一時金)及び月払い賃料その他
(2) 前払金(入居一時金)について――指導指針「11 利用料
等」(2)
3 入居者の付随的注意義務等
(1) 施設の秩序を乱さない義務
(2) 善管注意義務その他の付随的義務
第5編 有料老人ホーム及びサ高住の入居契約 各論 3――担保、契約の
終了など
第11章 入居契約における債権担保等
1 法定担保――不動産賃貸の先取特権等
2 約定担保
(1) 敷金など
(2) 根保証及び身元引受
第12章 入居契約の終了
1 契約期間の満了による契約の終了
2 履行不能による契約の終了
3 債務不履行解除及び任意解除
(1) 債務不履行解除
(2) 入居者死亡による前払金返還金の受領権者
(3) 入居者の原状回復義務
4 居室の明渡義務の債務引受(身元引受)
(1) 身元引受人による債務引受
(2) 自力救済条項
5 入居契約の相続性
第13章 有料老人ホーム及びサ高住についての関連法規
1 個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)
(1) 個人情報保護法の制定(2003年)
(2) 個人情報の侵害に対する保護
2 高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支
援等に関する法律)
3 暴排条項
第6編 補論――有料老人ホーム及びサ高住以外の福祉サービス付き高
齢者向け住宅
第14章 福祉サービス付き高齢者向け分譲マンション(シニア向け分譲マンション)
1 所有権方式といわれる高齢者向け分譲マンション
(1) 高齢者に特化した福祉サービス付住宅の第3の選択肢
(2) 規制法令はなく法の欠缺領域
2 建物区分所有権の購入後は区分所有者になる
(1) 購入資格
(2) 購入後の法律関係
3 福祉サービス(生活支援サービス)にかかる契約
(1) 事業者と買主(区分所有者)との契約による場合
(2) 管理組合方式による場合
結 章
(1) 高齢者法の理念と高齢者の居住
(2) 高齢者向け福祉サービス付き住宅法の理念――障害法と共通する
ものの特殊性あり
(3) 高齢者向け福祉サービス付き住宅法の将来
事項索引/判例索引/条文索引