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内陸アラスカのマルチスピーシーズ民族誌犬に話しかけてはいけない

犬に話しかけてはいけない 内陸アラスカのマルチスピーシーズ民族誌

四六判 240ページ 並製
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-7664-2845-2 C0039
奥付の初版発行年月:2022年10月 / 発売日:2022年10月中旬

内容紹介

カリブー、ワタリガラス、クマ、ビーバー、ギンザケ、オーロラ ……

多種とともに生きのびる知恵を知る
人類学の冒険がはじまる

内陸アラスカではかつて「犬に話しかけてはいけない」という禁忌があった――。

本書は、マルチスピーシーズ民族誌と環境人文学の視点から、フィールドワークを通してアラスカ先住民の人々と「自然環境」との関わりを描く。
内陸アラスカ先住民の人々は、動植物や精霊、土地との関係性のなかで息をひそめながら暮らしてきた。「人間」が問い直されている今、彼らの「交感しすぎない」という知恵から「自然との共生」を再考する。

著者プロフィール

近藤 祉秋(コンドウ シアキ)

専門:文化人類学、アラスカ先住民研究。博士(文学)。
共編著に『食う、食われる、食いあう――マルチスピーシーズ民族誌の思考』(青土社、2021年)、論文に「危機の「予言」が生み出す異種集合体――内陸アラスカ先住民の過去回帰言説を事例として」『文化人類学』86巻3号、「内陸アラスカ先住民の世界と「刹那的な絡まりあい」――人新世における自然=文化批評としてのマルチスピーシーズ民族誌」『文化人類学』86巻1号などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに――ある日の野帳から

第1章 マルチスピーシーズ民族誌へようこそ
 現代人類学への道
 マルチスピーシーズ民族誌の誕生
 人新世と環境人文学――マルチスピーシーズ民族誌との関連から

第2章 ニコライ村への道のり
 ニコライ村
 フィールドワークの始まり
 本書のおもな登場人物
 個人主義的な人々?
 徒弟的なフィールドワーク
 フィールドワークの身体性

第3章 ワタリガラスのいかもの食い──ある神話モチーフを考える
 トリックスターとしてのワタリガラス
 神話は子育てによく効く?
 犬の屠畜とワタリガラス神話
 犬屠畜モチーフが他地域からもたらされた可能性はあるか? 
 〈ワタリガラス〉の犬肉食は、動物行動学で説明できるか?
 〈ワタリガラス〉の犬肉嗜好モチーフは修辞戦略としてみなしうるか? 
 多種の因縁を語る神話

第4章 犬に話しかけてはいけない──禁忌から考える人間と動物の距離
 ある禁忌の語りから 
 運搬・護衛・狩猟
 犬ぞりの受容と二〇世紀初頭の変化 
 犬ぞりの現在 
 犬―人間のハビトゥス

第5章 ビーバーとともに川をつくる──「多種を真剣に受け取ること」を目指して
 ビーバー論争 
 生態学・生物学と対話するマルチスピーシーズ民族誌
 ビーバーとディチナニクの人々の関わり
 ビーバーダムとギンザケ
 ビーバー擁護派と反対派の二項対立を超えて
 キーストーン種とともに考える
 マルチスピーシーズ民族誌が目指すこと

第6章 「残り鳥」とともに生きる──ドムス・シェアリングとドメスティケーション
 ドメスティケーションの周辺から考える
 野鳥の餌づけ・保護・飼育
 「残り鳥」と住まう
 野鳥とのドムス・シェアリング
 ドムス・シェアリングとドメスティケーション

第7章 カリブーの毛には青い炎がある──デネの共異身体をめぐって
 北方アサバスカンの身体
 共異体と社会身体
 サイボーグ・インディアン
 カリブーの民とオーロラ
 巨大動物と超自我
 ぬくもりの共異身体

第8章 コウモリの身内──環境文学と人類学から「交感」を考える
 悪魔からロールモデルへ
 目的としての「交感」と実用的な「交感」
 生きものとの会話と非会話
 「交感しすぎない」という知恵 

おわりに――内陸アラスカ先住民の知恵とは何か?
 マルチスピーシーズ民族誌の射程
 各章の概要
 アラスカ先住民の知恵
 第三の道を探る

あとがき

初出一覧
図版一覧
動物の名称一覧  
参考文献一覧
索引


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