中世の美学 トマス・アクィナスの美の思想
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-7664-2846-9 C3010
奥付の初版発行年月:2022年11月 / 発売日:2022年10月下旬
▼エーコの原点、待望の翻訳。
▼「暗黒の中世」像を打ち崩す、「美」にあふれた世界――。
1956年当時、ベネデット・クローチェら美学の大家らによって「中世に美学はない、一貫した美への関心はない」と言われていた。
そんななかウンベルト・エーコは研究者としてとりわけ思い入れの深い中世の思想家トマス・アクィナスの著作に向き合い、トマスのみならず中世思想の根柢には、一貫した「美の思想」が流れていることを明らかにする。
これまでの中世観を変容させ、『薔薇の名前』につながるエーコの躍進の契機となった待望の名著。
ウンベルト・エーコ(ウンベルトエーコ)
1932年イタリア・アレッサンドリアに生れる。小説家・記号論者。
トリノ大学で中世美学を専攻、1956年に本書の基となる『聖トマスにおける美学問題』を刊行。1962年に発表した前衛芸術論『開かれた作品』で一躍欧米の注目を集める。1980年、中世の修道院を舞台にした小説第一作『薔薇の名前』により世界的大ベストセラー作家となる。以降も多数の小説や評論を発表。2016年2月没。
和田 忠彦(ワダ タダヒコ)
東京外国語大学名誉教授。専門はイタリア近現代文学、文化・芸術論。主な著書に『遠まわりして聴く』(書肆山田)『タブッキをめぐる九つの断章』(共和国)など。『小説の森散策』(岩波文庫)、『永遠のファシズム』(岩波現代文庫)、『文体練習 完全版』(河出文庫)などエーコの訳書も多数ある。
石田 隆太(イシダ リュウタ)
筑波大学にて博士(文学)を取得後、慶應義塾大学やフリブール大学(スイス)でのポスドクを経て、現在は同志社大学文学部助教。専門は西洋中世哲学。主な著作に「天使学の共時的構造化――井筒、コルバン、アクィナス」(『理想』706号)、『デカルト全書簡集 第四巻』(共訳、知泉書館)など。
石井 沙和(イシイ サワ)
東京外国語大学にて博士(学術)を取得後、主に大学で非常勤講師を務める。
2016年にはNHK「旅するイタリア語」監修。専門はイタロ・ズヴェーヴォをはじめ、トリエステを中心としたイタリア近現代文学。
山本 芳久(ヤマモト ヨシヒサ)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)、キリスト教学。
主な著作に『トマス・アクィナス――理性と神秘』(岩波新書、サントリー学芸賞)、『トマス・アクィナス 肯定の哲学』(慶應義塾大学出版会)など。
目次
凡 例
主要引用文献
第二版(1970年)への序文
第一章 中世文化における美学の問題
一 歴史叙述
二 中世の美的感性
三 トマス・アクィナス
四 美的な快の可能性
五 本書の概要
第二章 超越概念としての美
一 問題の定立
二 事物に対する美的な視覚
三 トマス・アクィナスの原典
四 現代的な解釈
五 13世紀の哲学的な伝統における超越概念としての美
六 結論
第三章 美的な「視覚」の機能と本性
一 問題の定立
二 中世の原典
三 トマスの原文
四 美的な「視覚」
五 トマスにおける知性的直観
第四章 美の形相的な基準
一 トマスの文章
二 形相概念の厳密化
三 「釣り合い」――歴史的な事柄
四 トマス・アクィナスにおける「釣り合い」
五 「まとまり」
六 「明るさ」――歴史的な事柄
七 トマス・アクィナスにおける「明るさ」
八 結論
第五章 具体的な問題と原理の応用
一 御子(みこ)の美しさ
二 人間の美しさ
三 音楽の美しさ
四 遊びと道化詩
五 象徴の視覚
六 聖書や詩の作品に見られる比喩と寓意
七 教育のための寓話の手法
八 トマスの詩学
第六章 芸術の理論
一 芸術の発明
二 芸術的な形相の存在論的な実質
三 芸術的な形相の美的な特殊性
四 美術が自律する可能性について
五 芸術の自律性がもつ多義性
六 結論
第七章 美的な「視覚」と判断
一 美的な「視覚」の機能
二 美的な「視覚」の本性
第八章 結論(1970年)
一 トマス美学の中心にある難問
二 トマス以後のスコラ学における形相概念の崩壊
三 美のカテゴリーと中世社会
四 トマスの方法論と構造主義の方法論
解説 「美」の宝庫としての中世哲学 山本芳久
物語作者エーコの原点を知るために
――訳者あとがきにかえて
注
人名・事項索引