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処罰の早期化・犯罪収益規制とイギリス比較法国際組織犯罪対策における刑事規制

国際組織犯罪対策における刑事規制 処罰の早期化・犯罪収益規制とイギリス比較法

A5判 312ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-7664-2848-3 C3032
奥付の初版発行年月:2022年11月 / 発売日:2022年10月下旬

内容紹介

▼イギリスと日本の刑事法、その根源的な接点を問う!

一見すると、大胆ともいえる制度を導入・運用しているようにみえるイギリス。しかし、根底にある基本的考え方にまでさかのぼると、日本においても将来的に予想される立法論的議論との関係では特に示唆に富む。処罰の早期化と犯罪収益規制の領域において新たな基礎研究を提起する注目の研究。

コモン・ロー上の独立教唆罪・共謀罪を包括的に紹介・検討する唯一の研究。制定法上の共謀罪をめぐる議論の紹介・検討を詳細に行い、またイギリスにおける犯罪収益規制については、現行の犯罪収益はく奪の制度を紹介し、共謀罪と犯罪収益規制の関係についても検討を行う。

テロ対策については、具体的問題を素材に検討を行いテロ等準備罪新設による処罰の早期化について検討し、また犯罪収益規制と組織的犯罪処罰法2017年改正についても、改正による変更点と国際組織犯罪防止条約上の義務との関係や、既存の犯罪収益規制との関係で有する意義等について詳細に検討する意欲作。

著者プロフィール

橋本 広大(ハシモト コウダイ)

南山大学法学部准教授。
1991年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業、同大学大学院法学研究科公法学専攻後期博士課程所定単位取得退学。博士(法学・慶應義塾大学)。
慶應義塾大学大学院法学研究科助教(有期・研究奨励)、同大学大学院法務研究科グローバル法研究所客員所員、外務省総合外交政策局国際安全・治安対策協力室テロ対策専門員等を経て、現職。
著作に、「国連制裁の履行と課題―テロリストの資金移転にかかる対策等」CISTECジャーナル193号(2021年)、「国連安保理決議に基づくテロリスト等に対する資産凍結措置」CISTECジャーナル 187号(2020年)、「ストーカー行為の刑事規制について―GPS機器を用いた位置情報取得行為に関する事例を素材に」小山剛=新井誠=横大道聡編『日常のなかの〈自由と安全〉―生活安全をめぐる法・政策・実務』(弘文堂、2020年)、「翻訳 スイスの刑事制裁制度」慶應法学36号(共訳、2016年)、「翻訳 ドイツにおける刑事制裁―経験的視点を交えた概観」慶應法学34号(共訳、2016年)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき

序章 本書の検討課題
 一 はじめに
  (一) 国際組織犯罪対策における刑事規制
  (二) 本書の検討課題
  (三) イギリスを比較法の対象とする意義
 二 本書の概要と位置づけ
  (一) 本書の概要
  (二) 本書と先行研究との関係

 第Ⅰ部 処罰の早期化
第1章 イギリスにおける未完成犯罪の概観
 一 総説
 二 共謀罪
 三 未遂罪
  (一) 概説
  (二) 要件
  (三) 処罰
  (四) 議論状況
 四 2007年重大犯罪法の定める幇助および奨励の罪
  (一) 概説
  (二) 要件
  (三) 処罰
  (四) 議論状況
 五 コモン・ロー上の独立教唆罪
  (一) 概説
  (二) 要件
  (三) 処罰
  (四) 議論状況
 六 本章のまとめ

第2章 イギリスにおけるコモン・ロー上の独立教唆罪の検討
 一 はじめに
 二 コモン・ロー上の独立教唆罪
  (一) 総説
  (二) 客観的要件(actus reus)
  (三) 主観的要件(mens rea)
  (四) 1989 年刑法典草案
 三 検討
  (一) 法律委員会第300 号報告書による指摘
  (二) コモン・ロー上の独立教唆罪と他の未完成犯罪の類型との関
   係
  (三) 小括
 四 本章のまとめ

第3章 イギリスにおける制定法上の共謀罪の検討
 一 はじめに
 二 イギリスにおける制定法上の共謀罪
  (一) 総説
  (二) 1977年刑事法律法制定以前の共謀罪
  (三) 1977 年刑事法律法制定以後の共謀罪
 三 1977 年刑事法律法の制定過程
  (一) 総説
  (二) 法律委員会第76 号報告書の概要
  (三) 学説による批判
  (四) 小括
 四 検討
  (一) 制定法上の共謀罪と他の未完成犯罪の類型との関係
  (二) 共謀罪の処罰根拠
  (三) 共謀罪とテロ対策
  (四) 合意段階で共謀罪が成立することの意義と処罰の実態
  (五) 共謀罪と実体犯罪の関係
  (六) 合意後の離脱と共謀罪の成否
 五 本章のまとめ

第4章 イギリスにおけるコモン・ロー上の共謀罪の検討
 一 はじめに
  (一) イギリスにおけるコモン・ロー上の共謀罪を論じる意義
  (二) 検討の手順
 二 コモン・ロー上の共謀罪をめぐる議論状況
  (一) 概説
  (二) 1977 年刑事法律法制定以前の共謀罪
  (三) 法律委員会第76 号報告書における検討
 三 コモン・ロー上の犯罪としての詐欺の共謀罪
  (一) 概説
  (二) 2006年詐欺罪法との関係
  (三) 詐欺の共謀罪の要件
  (四) 詐欺の共謀罪をめぐる議論状況
 四 本章のまとめ

第5章 いわゆる「外国人テロ戦闘員(FTF)」問題の刑事規制の検討――国連安保理決議第2178号の課す犯罪化義務とテロ等準備罪をめぐって
 一 問題の所在
  (一) 外国人テロ戦闘員(FTF)
  (二) 国連安保理決議第2178号
 二 国連安保理決議第2178号の課す犯罪化義務
  (一) 国連安保理決議の法的拘束力
  (二) 犯罪化義務
 三 私戦予備・陰謀罪およびテロ資金提供処罰法上の罪による対応
  (一) 総説――国会における議論
  (二) (a)渡航禁止類型
  (三) (b)渡航資金提供禁止類型
  (四) (c)渡航に対する便宜供与等の禁止類型
  (五) 小括
 四 テロ等準備罪新設以後の刑事規制
  (一) 総説
  (二) テロ等準備罪新設の意義
  (三) 刑事規制の課題
 五 本章のまとめ

第6章 早期処罰に係る日本法の現状と課題
 一 はじめに
 二 日本法の現状
  (一) 独立教唆
  (二) 独立幇助
  (三) 予備
  (四) 陰謀・共謀
  (五) テロ等準備罪
 三 日本法の課題
  (一) イギリス法からみたテロ等準備罪
  (二) 総括


 第Ⅱ部 犯罪収益規制と組織的犯罪処罰法2017年改正
第1章 改正組織的犯罪処罰法における「犯罪収益」概念とその前提犯罪に関する検討
 一 はじめに
 二 問題の所在
 三 組織的犯罪処罰法2017年改正の概要
  (一) 総説
  (二) 組織的犯罪処罰法2条2項1号に係る改正の概要
  (三) 国際組織犯罪防止条約との関係
 四 検討
  (一) 総説
  (二) 組織的犯罪処罰法2条2項1号の要件
  (三) 過失犯と犯罪収益
  (四) 過失犯と「財産上の不正な利益を得る目的」要件との関係
  (五) 小括と若干の検討
 五 本章のまとめ

第2章 組織的犯罪処罰法における「犯罪収益」概念について――テロ等準備罪新設に係る2条2項5号の検討
 一 はじめに
 二 問題の所在
 三 国際組織犯罪防止条約との関係
  (一) 総説
  (二) 2017年改正前の組織的犯罪処罰法における犯罪収益規制
  (三) 国際組織犯罪防止条約の規定する犯罪化義務
  (四) 法制審議会における議論
  (五) 小括
 四 最高裁平成15年判決との関係
  (一) 総説
  (二) 事案の概要
  (三) 裁判所の判断
  (四) 小括
 五 検討
  (一) 組織的犯罪処罰法2条2項1号と同5号の関係
  (二) 5号類型に固有の領域
  (三) 5号類型新設の意義
 六 本章のまとめ

第3章 イギリスにおける刑事没収と共謀罪の関係についての検討
 一 はじめに
  (一) 犯罪収益規制と早期処罰の交錯領域
  (二) 刑罰的性格を有しない犯罪収益はく奪制度
  (三) 問題の所在
 二 イギリスにおける犯罪収益規制と刑事没収
  (一) 総説
  (二) 刑事没収(Criminal Confiscation)と没収(forfeiture)
  (三) 2002 年犯罪収益法制定に至る経緯
 三 2002年犯罪収益法上の刑事没収
  (一) 総説
  (二) 犯罪生活(criminal lifestyle)
  (三) 犯罪行為(criminal conduct)による利益(benefit)
  (四) 回復可能額(recoverable amount)の算定
  (五) 入手可能額(available amount)の算定
  (六) 没収命令(confiscation order)
  (七) 小括
 四 犯罪生活の推定規定
  (一) 刑事没収の趣旨との関係
  (二) 欧州人権保護条約との関係
  (三) 共謀罪との関係
 五 刑事没収をめぐる最近の動向
  (一) 運用面での課題
  (二) 2002 年犯罪収益法改正に向けた検討
 六 本章のまとめ

第4章 イギリスにおける民事回復の検討
 一 はじめに
  (一) 本章の概要
  (二) 有罪判決を前提としない犯罪収益はく奪制度の意義
 二 民事回復(Civil Recovery)制度の概要
  (一) 総説
  (二) 民事回復の対象
  (三) 民事回復手続の流れ
  (四) 回復可能財産の範囲
 三 検討
 四 本章のまとめ

結章
 一 各章の小括
 二 総括

あとがき

文献一覧
初出一覧

判例索引
事項索引


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