吉右衛門 : 「現代」を生きた歌舞伎役者
価格:3,520円 (消費税:320円)
ISBN978-4-7664-2902-2 C0074
奥付の初版発行年月:2023年07月 / 発売日:2023年07月下旬
舞台の景色を描いてその意味を検証する歌舞伎の世界に現代にも通じる「人間」を発見し、先人からの型を身体化すると同時に、現代的な意味を付与した吉右衛門。近代から現代へと歌舞伎の歴史的な転換を体現したその芸を後世に伝える。
目次
吉右衛門の死
一 荒事の美しさ
飛び梅の美しさ――梅王丸『菅原伝授手習鑑』「車引」
魂を生きる――武蔵坊弁慶『勧進帳』
二 歴史の谷間に
「オーイオーイ、オオーイ」――熊谷直実『一谷嫩軍記』「陣門・組討」
「十六年はひと昔、夢だ夢だ」――熊谷直実『一谷嫩軍記』「熊谷陣屋」
二つの正義――武智光秀『絵本太功記』と『時今也桔梗旗揚』
地獄の三悪道――新中納言知盛『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」
その第一声――松王丸『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」
二つの人生――樋口次郎兼光『ひらかな盛衰記』「逆櫓」
独裁政権下で生きる――一條大蔵卿『一條大蔵潭』
野性の迫力――金輪五郎『妹背山婦女庭訓』「御殿」
東北の風が吹く――安倍貞任『奥州安達原』「袖萩祭文」
家族とは何か――俊寛『平家女護島』「俊寛」
逢坂山の雪と桜――関守関兵衛実は大伴黒主『積恋雪関扉』
三 復活狂言三種
悪七兵衛景清『嬢景清八嶋日記』
紀有常『競伊勢物語』
由良兵庫助『神霊矢口渡』
四 実事を生きて
二つの本心――大星由良助『仮名手本忠臣蔵』「七段目」
寺子たちの家――武部源蔵『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」
「思えば佐々木兄弟が」――佐々木盛綱『近江源氏先陣館』「盛綱陣屋」
名剣の神話――梶原平三景時『梶原平三誉石切』
雪の夜に煙草を切る――唐木政右衛門『伊賀越道中双六』「岡崎」
松浦鎮信の笑み――松浦鎮信『松浦の太鼓』
五 世話物の人情
軒端の鶯――毛谷村六助『彦山権現誓助剱』「毛谷村」
仏壇の野菊――呉服屋十兵衛『伊賀越道中双六』「沼津」
「手も二本、指も十本ありながら」――浮世又平『傾城反魂香』
「悪い人でも舅は親」――団七九郎兵衛『夏祭浪花鑑』
淀川の十五夜――濡髪長五郎『双蝶々曲輪日記』「角力場」「引窓」
六 南北三悪人
藤田水右衛門『霊験亀山鉾』
民谷伊右衛門『東海道四谷怪談』
薩摩源五兵衛『盟三五大切』
七 江戸の街角で
俠客を生きる――幡随長兵衛『御存鈴ヶ森』と『湯殿の長兵衛』
「時雨時雨て」江戸の街――河内山宗俊『天衣紛上野初花』「河内山」
「菊見がてらに秋の露」――佐野次郎左衛門『籠釣瓶花街酔醒』
八 人生の終わりに
「桜の林の大島台」――大判事清澄『妹背山婦女庭訓』「山の段」
人間の自由――幸崎伊賀守『新薄雪物語』「三人笑い」
あとがき