輸入ショックの経済学 インクルーシブな貿易に向けて
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-7664-2928-2 C3033
奥付の初版発行年月:2023年10月 / 発売日:2023年10月中旬
輸入は〈脅威〉になりうるか?
中国等からの輸入の影響はどれくらいあるのか。製造業の雇用や賃金へのインパクトを詳細なデータに基づき分析し「負」の影響を緩和する政策を検討する。
かつて日本の製造業は世界的ブランドであったが、いまや見る影もない。とりわけ90 年代以降の中国の経済発展による貿易の影響「チャイナ・ショック」は有名である。その効果は雇用の減少、賃金の低下といった「負の効果」で語られがちだが、本当にそうなのか? 膨大なデータ分析と、負の影響を緩和する「インクルーシブな」輸入政策を模索する。
遠藤正寛(エンドウマサヒロ)
慶應義塾大学商学部教授。1996年慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程単位取得退学。小樽商科大学商学部助教授などを経て、現職。専門は国際経済学。著作に『国際経済学』(共著、有斐閣)、『北海道経済の多面的分析――TPPによる所得増加への道筋』(慶應義塾大学出版会)などがある。論文にThe Impact of Firms’ International Trade on Domestic Suppliers: The Case of Japan, Journal of the Japanese and International Economies, 63, 101-188 2022年03月など多数。日本国際経済学会長。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序章 雇用や賃金にとって輸入は「脅威」か
第1章 「輸入ショック」を知るために――基本データと分析視角
1.製造業における輸入拡大の影響
2.雇用はどう変化してきたか
3.賃金はどう変化してきたか
4.輸入企業の特徴
5.「インクルーシブ」な貿易
6.貿易理論における輸入ショック
補論.計量手法の概要――差の差推定と操作変数法
第2章 チャイナショックは雇用を減らしたか
1.チャイナ・ショックの規模と推移
2.チャイナ・ショックによる雇用総数の変化
3.チャイナ・ショックによる雇用の創出・喪失
第3章 チャイナ・ショックは給与にどう影響を与えたか
1.産業・所得によって異なる従業者と輸入
2.給与と労働時間へのチャイナ・ショックの影響
3.給与格差は拡大したか
第4章 オフショアリングのインパクト
1.オフショアリング企業の基本データ
2.オフショアリングの影響の調整
3.男性従業者の残業時間調整
第5章 国内取引を通じた間接効果はあるか
1.分析する企業をどう選ぶか
2.直接貿易の間接効果
第6章 インクルーシブな輸入のための政策
1.雇用政策の評価軸
2.所得政策の評価軸
3.貿易政策・貿易支援策の評価軸
4.輸入ショックに追加の施策は必要か
5.日本がとるべき施策の検討
終章 経済学者による「輸入ショック」対策を検討する