恥と運命の倫理学
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-7664-2992-3 C3010
奥付の初版発行年月:2024年10月 / 発売日:2024年10月中旬
・20世紀を代表する哲学者、バーナード・ウィリアムズによるカリフォルニア大学の名講義。
・西洋哲学が見落としていた「倫理」をギリシア古典に発見し、近代道徳の呪縛から解放する〈反道徳的な倫理学〉。
・解説=納富信留(東京大学大学院教授)
近代以降の進歩主義的な見方では、古代ギリシア人は未開の心性をもち、より洗練された道徳が人間性を陶冶してきたと捉えられてきた。
ウィリアムズはこのような道徳哲学の提示する人間が、生きられた経験から切り離された、無性格な道徳的自己であるとして批判する。それとは対照的に、具体的な性格と来歴をもつ人々を描く、ホメロスの叙事詩やアイスキュロス、ソポクレスらの悲劇作品を読み解き、そこに流れる豊かな倫理的思考を明らかにする。
道徳哲学やプラトン、アリストテレスらの哲学を批判的に参照しながら、恥と罪、必然性(運命)と義務、運命と自由意思、責任と行為者性といった概念をめぐる議論を通して、古代と現代を通じてこの現実を生きる人間の生の姿を描き出す、カリフォルニア大学の名講義。
バーナード・ウィリアムズ(バーナードウィリアムズ)
20 世紀を代表する英国の哲学者。オックスフォード大学古典学部を最優等で卒業。
オックスフォード大学教授、カリフォルニア大学バークレー校教授などを歴任。功利主義批判、近代道徳批判など、道徳哲学の業績で知られる。2003 年に死去した際、タイムズ誌上で「当世最も傑出した道徳哲学者」と評された。主な著作に、Moral Luck, 1981(『道徳的な運』勁草書房)、Ethics and the Limits of Philosophy, 1985(『生き方について哲学は何が言えるか』ちくま学芸文庫)、Making Sense of Humanity, 1995, Truth and Truthfulness, 2002 などがある。
河田健太郎(カワダケンタロウ)
東京都立大学人文科学研究科博士課程単位取得退学。専攻は英米倫理学。代表著作に、ジョン・マクダウェル『心と世界』(共訳、勁草書房、2012 年)、フィリッパ・フット『人間にとって善とは何か──徳倫理学入門』(共訳、筑摩書房、2014 年)などがある。
杉本英太(スギモトエイタ)
東京大学大学院人文社会系研究科修士課程(文学)修了。現在、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。日本学術振興会特別研究員(DC2)。専攻は、古代ギリシア哲学。論文に、「言葉と無矛盾律──アリストテレス『形而上学』「巻4 章の構造」(東京大学哲学研究室『論集』41号、21-34、2023 年)など、訳書に、ハーマン・カペレン、ジョシュ・ディーバー『バッド・ランゲージ──悪い言葉の哲学入門』(共訳、勁草書房、2022 年)がある。
渡辺一樹(ワタナベカズキ)
エディンバラ大学大学院修士課程(哲学)修了、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程(哲学)修了。現在、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。日本学術振興会特別研究員(DC1)。専攻は、道徳哲学・政治哲学。代表著作に、『バーナード・ウィリアムズの哲学──反道徳の倫理学』(青土社、2024 年)、『思想としてのアナキズム』(共著、以文社、2024 年)などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
二〇〇八年版への序文 A. A. ロング
第一章 古代の解放
第二章 行為者性のいくつかの中心
第三章 責任を認識すること
第四章 恥と自律
第五章 いくつかの必然的なアイデンティティ
第六章 可能性・自由・力
解説 古代ギリシアから私たちが学ぶこと 納富信留
訳者あとがき
古典文献一覧
参考文献一覧
附録1/附録2
注
索引