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ユーラシア草原地帯の青銅器時代

ユーラシア草原地帯の青銅器時代

B5判 368ページ 上製
価格:9,020円 (消費税:820円)
ISBN978-4-7985-0220-5 C3022
奥付の初版発行年月:2018年02月 / 発売日:2018年02月中旬

内容紹介

遠古の東アジアとヨーロッパはどのような関係にあったのだろうか  

両地域をつなぐ位置にあるユーラシア草原地帯では、広範囲にわたる交流や大規模な移動が、歴史上つとに指摘されるところであった。しかしながら、草原地帯において、それぞれの交流がどのような歴史的意義をもっていたかが語られることは稀であった。本書はこの点に注目し、ユーラシア草原地帯の東部を中心とする中国・モンゴル・ロシアの現地(青銅器)資料を世界で初めて統計的に分析。前11世紀頃、スキタイ系文化出現の直前に、交流そのものの性質が大きく変化したことを明らかにした。

草原地帯の青銅器時代は、青銅器が技術的、社会的制約から解放されていく、長いプロセスであった。中国初期青銅器、セイマ・トルビノ青銅器群、カラスク青銅器の拡散、スキタイ系文化の発生。世界の研究者が注目する重要テーマを、青銅器時代の一貫した流れの中で位置づける。これまでの一元/多元論的関係説を超えた、新しい交流論。

著者プロフィール

松本 圭太(マツモト ケイタ)

2006年 九州大学文学部人文学科卒業
2008年 九州大学大学院比較社会文化学府修士課程修了
2013年 同 博士課程修了、博士(比較社会文化、九州大学)
日本学術振興会特別研究員(PD)、九州大学大学院人文科学研究院助教を経て、
現在、同 専門研究員。

主要著作等
「カラスク式短剣の成立と展開」『古代文化』第61巻第1号、古代學協會、2009年
「ユーラシア草原地帯における青銅器様式とその境界」『中国考古学』第15号、日本中国考古学会、2015年
「北方ユーラシア(ロシア東部・モンゴル)」『季刊考古学』第135号、雄山閣、2016年

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 巻頭図版

序 章

第1章 先行研究における課題と本書の目的、方法

 第1節 先行研究の整理
  1.前2千年紀前半に関する議論
   中国初期青銅器とユーラシア草原地帯の青銅器/チェルヌィフの冶金圏/初期青銅器と
   ユーラシア草原地帯の青銅器との対比/セイマ・トルビノ青銅器群の西漸説/セイマ・
   トルビノ青銅器群とその集団/東南ウラル地域における社会像
  2.前2千年紀後半、いわゆるカラスク期に関する議論
   モンゴリアと南シベリアの関係についての諸説/剣とX・Y説/刀子とX・Y説/ユーラ
   シア草原地帯におけるカラスク期の位置づけ/上記以外の青銅器研究/ミヌシンスク盆
   地におけるカラスク文化研究の現状
  3.前1千年紀初頭、「初期遊牧民文化」成立に関する議論
   「初期遊牧民文化」出現期のユーラシア草原地帯/「初期遊牧民文化」の類似性と差異
   性/草原地帯東部における「初期遊牧民文化」の起源/青銅器と鹿石
 第2節 問題の所在
  1.前2千年紀前半の研究における問題
   土器文化の中での青銅器/セイマ・トルビノ青銅器群西漸モデルにおける問題点/青銅
   器分布の背景、社会像に関する問題
  2.前2千年紀後半(カラスク期)の研究における問題
   X・Y説における青銅器の系譜関係抽出とその方法/ X・Y説を含めた考察上の問題/カ
   ラスク文化研究における問題点  青銅器研究との整合性
  3.「初期遊牧民文化」成立についての研究における問題
   「初期遊牧民文化」とそれ以前における「類似性」について/鹿石研究における「初期
   遊牧民文化」の発生
  4.小  結
 第3節 本書における目的、方法、資料
  1.本書の方針
  2.各分析における方法と資料
   第2章/第3章/第4章/第5章

第2章 セイマ・トルビノ青銅器群の検討

 第1節 矛の検討
  1.分  類
   形式分類/型式分類(A類)/型式分類(B類)/セイマ・トルビノ、サムシ・キジロボ
   青銅器群の弁別/型式分類(C類)
  2.編年と各系譜の派生関係
  3.金属成分と型式
  4.分  布
   型式分布/金属成分の分布
  5.小  結
 第2節 有銎斧の検討
  1.分  類
   形式分類(大別形式)/形式分類(有銎斧B類の細分)/型式分類(有銎斧BⅡ類)
  2.編年と各系譜の派生関係
  3.金属成分と型式
  4.分  布
   型式分布/金属成分の分布
  5.小  結
 第3節 ロストフカ墓地の検討
  1.副葬品とその出土状況
  2.墓地における青銅器
  3.墓地における階層性と青銅器

第3章 中国初期青銅器とユーラシア草原地帯の青銅器

 第1節 新疆、長城地帯における初期青銅器の分類
  1.利  器
   有銎闘斧/有銎斧/矛/鏃/刀子/無銎斧/鑿/鏟/鎌/斧状ハンマー/匕/錐
  2.装 身 具
   装飾品/鏡
  3.分類結果
  4.青銅器の状況出土
 第2節 初期青銅器とセイマ・トルビノ青銅器群
  1.初期青銅器の矛Ⅱ類について
  2.初期青銅器矛Ⅱ類とセイマ・トルビノ青銅器群矛Bc類
 第3節 初期青銅器の分布
 第4節 初期青銅器の製作技術
  1.初期青銅器の鋳型
  2.初期青銅器の金属成分

第4章 カラスク期における青銅器様式の展開

 第1節 剣の検討
  1.分  類
   形式分類/型式分類(B1類)/型式分類(B2類)
  2.編年と形式間の関係
   各型式の年代/形式間関係/ phaseの設定
  3.分  布
   phase1(A1,A2類)/ phase2(A1、A2、B1a、B2a類)/phase3(B1b、B2b類)/
   phase4(B1c、B1q、B2c類)
  4.小  結
 第2節 刀子の検討
  1.分  類
   形式分類/型式分類(B類)
  2.編年と形式間関係
   各型式の年代/剣との対比/形式間関係
  3.分  布
   第1期/第2期/第3期
  4.小  結
 第3節 青銅刀子の金属成分に関する検討
  1.本節の検討事項
   解明事項/方法
  2.刀子A、B類と金属成分(解明事項①)
  3.刀子A類およびB類の諸型式と金属成分(解明事項③)
  4.刀子A類の地域性と金属成分(解明事項②)
 第4 節 有銎闘斧の検討
  1.分  類
   Ⅰ類/Ⅱ類/Ⅲ類/ⅢA類/ⅢB類/ⅢC類
  2.編  年
  3.分  布
  4.有銎闘斧の祖形
 第5節 様式の設定
  1.モンゴリア青銅器様式
   一括資料/青銅器様式の広がり/主要器種以外の動向
  2.前期カラスク青銅器様式
  3.後期カラスク青銅器様式の発生
  4.後期カラスク青銅器様式の拡散
   一括資料/青銅器様式の広がり/主要器種以外の動向
  5.ミヌシンスク盆地における編年研究と青銅器様式

第5章 「初期遊牧民文化」出現と動物紋

 第1節 剣の動態
  1.分  類
   形式分類/α群の細分/β群の細分/γ群の細分
  2.編  年
  3.剣の分布と青銅器様式 
 第2節 動物紋の検討
  1.動物紋における諸属性
   表現対象/配置/表現技法/紋様の器物上の箇所/表現頭数
  2.属性の相関と分類、および各群の変異幅
   ①a類/①b類/②a類/②b類
  3.青銅器様式との対応
  4.鹿石の動物表現との対比
   青銅器の動物紋との対比/青銅器様式における鹿石の動物紋

第6章 考  察

 第1節 前2千年紀半ば以前の動態
  1.セイマ・トルビノ青銅器群分布の背景
   西漸説の再検討/セイマ・トルビノ青銅器群とサムシ・キジロボ青銅器群/セイマ・ト
   ルビノ青銅器群の性格
  2.初期青銅器分布の背景
   境界1における青銅器の変化について/境界2における青銅器の変化について/境界3にお
   ける青銅器の変化について
 第2節 前2千年紀後半から前1千年紀初頭における動態
  1.前2千年紀後半における青銅器様式の起源
  2.各青銅器様式の内容
  3.青銅器様式の変化過程
   後期カラスク青銅器様式の発生/モンゴリア青銅器様式から後期カラスク青銅器様式へ
   の変化/ポストカラスク青銅器様式への変化
  4.青銅器様式変化の背景
   モンゴリアにおける各種遺構の動態/モンゴリア青銅器様式出現の背景/後期カラスク
   青銅器様式拡散の背景/ポストカラスク青銅器様式出現の背景とスキタイ系動物紋

終 章 ユーラシア草原地帯の青銅器時代

 図版出典
 参考文献

 英語目次・要旨(Contents・Summary)
 ロシア語要旨(Pусская Aннотация)
 中国語要旨(中文要旨)

 初出一覧

 あとがき

 索  引


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